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璃桜の運転で、三人で海に行く事になった。
車の中で凪との思い出を語りながら笑い、時に涙ぐむ星那の話に耳を傾ける。
あんな見た目で、花が好きだったと言う凪の写真を見せてもらうと、璃桜より明るい髪色に驚いた。
「うわっ、金?銀色も混ざってるみたい」
日に焼けて笑っている。太陽みたいな人だ。
「すごいよね。潮焼けって髪の色素抜けたりするから、透明ぽい所があるんだよ」
「確かに、花が好きって感じに見えませんねって。失礼かな」
「毎週末毎に小さな花束を買ってきてくれたんだ」
「記念日とか関係なくですか?」
「──花を見ると、癒されるだろうって。買ってくるんだ。凪がいなくなってから、僕は一度も花を飾ってなかった。凪から、貰いたくて」
星那の幼少期をすこしだけ聞いてしまったあの日。それを支えていた凪。
「それって、星那さんの為だったのかもしれないですね」
「──うん。今更、気がついたよ。ずっと励ましてくれてたんだよね。これからは、僕が部屋に飾ろうって思ってる」
「星那が前向きになってくれて良かった」
「恥ずかしいけど、まだ涙が止まらなくなる時があるよ」
「そんなの、当たり前です」
「──それでさ、引越しを考えているんだ」
「え?」
「金銭面もそうだけど、姿を探してしまうから……変に囚われて駄目なんだ。そう言う諸々を凪に報告しようと思ってる」
星那が一歩、未来に向けて踏み出した。
璃桜が、柔らかく笑う。
「凪の事を忘れたりはしないけど、再出発をして元気なとこ見せないとね。花もこれからは飾るよ。似合わないけど。その方が凪が喜んでくれそうだから」
時間が過ぎても、この痛みは続くのだ。大切な人を思わない日は、きっと来ない。それでも、心が少しでも軽くなるのならと願わずにはいられない。
「海……まだ冷たいですかね?」
初夏で、暑さが少しづつ強く感じるような季節になっている。
それでも、水温はまだ上がってないはずだ。冷たい水底に思いを馳せる。
「冷たいだろうね……叶うなら、ご両親の元へ帰れたらいいのに」
「きっと会えたと思う」
「ふ、なんか璃桜が言うとさ……本当にそんな気がする。璃桜って不思議な感じがするんだよね」
「──神社の息子なんで」
そうだけど、そうじゃない。璃桜と日向では違う。外見を派手にしてると言う事ではない。星那も感じているのだと寧々子は思った。
「そう言うんじゃないけど、ミステリアス……? あまり、プライベートが分からないから。金髪も意味分からないし」
「お兄さん曰く、遅めの反抗期らしいですよ」
「えっ、マジ? 詳しく教えて」
「黒猫……課題増やすぞ」
家庭教師は、お試しから本採用になった。とにかく教え方が上手い。金額は縁が全く教えてくれないので、いつか出世払いをするつもりだ。
三人とも何となく無言になり、寧々子もしばらく車窓を眺めていた。
ようやく窓から海が見えるようになり、目的地までもう少しとカーナビの音声が聞こえる。
到着して駐車場から潮の香りがする方へと徒歩で進んでいく。
凪いだ海のせいでサーファーらしい人達は、早々に引き上げているようだ。
「凪……来たよ、もう少しで会えるかな」
そんな星那は、白い花束を抱えている。大切に抱え、時折話しかけているようだった。
気丈な星那は、止まる事なく先へ進んでいく。
ふと気がついて寧々子は、璃桜見る。
「璃桜……さん」
「星那には見えてない」
白い猫が、星那の後ろにいる。黒いハートの模様だ。
波がバシャバシャと音を立てている際までたどり着くと、星那が一度振り返った。
───花を海に投げ入れた。
「凪……やっと会いに来たよ」
手を合わせて拝む姿を見て、璃桜と寧々子も手を合わせた。
一度でいいから、夢でもいいから、凪と星那が会えますように。
そう祈る事しか、寧々子には出来ないのだから。
車の中で凪との思い出を語りながら笑い、時に涙ぐむ星那の話に耳を傾ける。
あんな見た目で、花が好きだったと言う凪の写真を見せてもらうと、璃桜より明るい髪色に驚いた。
「うわっ、金?銀色も混ざってるみたい」
日に焼けて笑っている。太陽みたいな人だ。
「すごいよね。潮焼けって髪の色素抜けたりするから、透明ぽい所があるんだよ」
「確かに、花が好きって感じに見えませんねって。失礼かな」
「毎週末毎に小さな花束を買ってきてくれたんだ」
「記念日とか関係なくですか?」
「──花を見ると、癒されるだろうって。買ってくるんだ。凪がいなくなってから、僕は一度も花を飾ってなかった。凪から、貰いたくて」
星那の幼少期をすこしだけ聞いてしまったあの日。それを支えていた凪。
「それって、星那さんの為だったのかもしれないですね」
「──うん。今更、気がついたよ。ずっと励ましてくれてたんだよね。これからは、僕が部屋に飾ろうって思ってる」
「星那が前向きになってくれて良かった」
「恥ずかしいけど、まだ涙が止まらなくなる時があるよ」
「そんなの、当たり前です」
「──それでさ、引越しを考えているんだ」
「え?」
「金銭面もそうだけど、姿を探してしまうから……変に囚われて駄目なんだ。そう言う諸々を凪に報告しようと思ってる」
星那が一歩、未来に向けて踏み出した。
璃桜が、柔らかく笑う。
「凪の事を忘れたりはしないけど、再出発をして元気なとこ見せないとね。花もこれからは飾るよ。似合わないけど。その方が凪が喜んでくれそうだから」
時間が過ぎても、この痛みは続くのだ。大切な人を思わない日は、きっと来ない。それでも、心が少しでも軽くなるのならと願わずにはいられない。
「海……まだ冷たいですかね?」
初夏で、暑さが少しづつ強く感じるような季節になっている。
それでも、水温はまだ上がってないはずだ。冷たい水底に思いを馳せる。
「冷たいだろうね……叶うなら、ご両親の元へ帰れたらいいのに」
「きっと会えたと思う」
「ふ、なんか璃桜が言うとさ……本当にそんな気がする。璃桜って不思議な感じがするんだよね」
「──神社の息子なんで」
そうだけど、そうじゃない。璃桜と日向では違う。外見を派手にしてると言う事ではない。星那も感じているのだと寧々子は思った。
「そう言うんじゃないけど、ミステリアス……? あまり、プライベートが分からないから。金髪も意味分からないし」
「お兄さん曰く、遅めの反抗期らしいですよ」
「えっ、マジ? 詳しく教えて」
「黒猫……課題増やすぞ」
家庭教師は、お試しから本採用になった。とにかく教え方が上手い。金額は縁が全く教えてくれないので、いつか出世払いをするつもりだ。
三人とも何となく無言になり、寧々子もしばらく車窓を眺めていた。
ようやく窓から海が見えるようになり、目的地までもう少しとカーナビの音声が聞こえる。
到着して駐車場から潮の香りがする方へと徒歩で進んでいく。
凪いだ海のせいでサーファーらしい人達は、早々に引き上げているようだ。
「凪……来たよ、もう少しで会えるかな」
そんな星那は、白い花束を抱えている。大切に抱え、時折話しかけているようだった。
気丈な星那は、止まる事なく先へ進んでいく。
ふと気がついて寧々子は、璃桜見る。
「璃桜……さん」
「星那には見えてない」
白い猫が、星那の後ろにいる。黒いハートの模様だ。
波がバシャバシャと音を立てている際までたどり着くと、星那が一度振り返った。
───花を海に投げ入れた。
「凪……やっと会いに来たよ」
手を合わせて拝む姿を見て、璃桜と寧々子も手を合わせた。
一度でいいから、夢でもいいから、凪と星那が会えますように。
そう祈る事しか、寧々子には出来ないのだから。
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