手紙屋 ─ending letter─【完結】

Shizukuru

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消えた君に

7.

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何度も、何度も躊躇いながら……ようやくその手紙に星那が手を伸ばした。




星那へ

誕生日おめでとう。
去年も今年も祝ってあげられなくてごめん。

星那がちゃんと食べているのか?
眠れているのか?

一人あの部屋にいるのかと思うと、そばに行けない事がもどかしい。

色んな事を思い出してる。

走馬灯……のようなものかもしれない。

星那が、子供の頃にネグレストにあっていて一人でいる事が多かったね。

見かねた母親が、星那を家に呼んで夕食だけでもと食事をするようになってからは、一緒にいるのが当たり前だった。

親の再婚を気に、経済的な不安定な状況からは解放はされたけど。

ただ金だけを渡され、一人だけ別扱いにされてた星那をほっとけなかった。

寂しがりの癖に、ほかには見せないように頑張っていたね。

俺が大学に進学する為、ここを離れる時星那が泣いた。

守りたいって思ったんだ。
二人で約束をして、ちゃんと追いかけて来た。

とっくにもう……星那は大切な人だった。

一年前のあの日。本当に一緒にお祝いをしてあげたかった。そして聞いて欲しい事もあったんだ。

同じ大学で、ルームシェアでの生活も本当に一緒居られる事が、幸せだったんだ。

可愛い弟のような存在だと言い聞かせた。

ふざけたふりして、キスをしてしまった。

星那が、怒るどころか、照れるから愛おしくて堪らなくて。

その一方で不安になる。

あの状況で頼るのが、うちの家族だけの星那が……刷り込みのように俺を見ているかもしれない。

気の迷い、擬似的な家族の偏愛だったとしたら?

それでも聞けなかった。
俺と離れるべきじゃないかと、星那は別の道があると思うのに聞けなかった。

だから星那の誕生日のあの日、どうしても海に行きたくなったんだ。

ちょっとした賭けをしたんだ。

願掛けのように波乗りに行った。
馬鹿みたいに波に挑んだ。

リーシュコードは切れてしまったんだ。ボードに傷が入ったみたいで、いつの間にか怪我をしてた。

まともに泳ぐ事も出来なくなっていたよ。

戻る術も、助けを呼ぶ手段も何もなかった。沖へと流されて……その後はもう何も憶えていない。

何もかも分からなくなって、海にいたはずなのに、不思議な場所にいたよ。

もっと、もっと星那と話せば良かった。

本当の気持ちをお互いに話すべきだったね。

星那。

俺は、星那とこの先も一緒に生きて行きたかった。

星那が俺に流されてないか、星那は俺と同じ気持ちか知りたかった。
堂々と一緒にいられる日を願ったんだ。


勇気を出すために、海に行ったのに星那に悲しい思いをさせてごめんな。

この先に、星那が誰を選んだとしても俺は応援したい。

星那の寂しさを受けとめられる人が、きっと現れる。

突然会えなくなるなんて、思わなかったから、悔しくておかしくなりそうだったんだ。
だから、どうしてもこの気持ちを伝えたかった。

星那。

本当は、君に触れたかった。

このままずっと一緒にいれなくて辛い。

それでも、星那にはこれからがある。
きっと、大切な人を見つけられる。

星那の誕生日が、俺の命日になってしまったけど。
酷い奴だけど、俺がいた事だけ覚えててくれたら嬉しい。


どうか、星那が幸せになりますように。
星那が一人寂しく過ごす事がないように。

一番大切な星那へ
誰よりも、君の幸せを願っている。













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