手紙屋 ─ending letter─【完結】

Shizukuru

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消えた君に

6.

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「星那、せめてテーブルの所で話さないか?」

南側の明るい部屋がリビング。
テレビと、ローテーブル。
小さめのソファ。床にクッションが置いてあった。

ローテーブルを前にして、ソファに璃桜と並んで座る。


「ごめん。水しかない」

そう言って、グラスとマグカップが二人の前に置かれた。不揃いの食器が用意されたのは、璃桜と寧々子の分だけ。

「食器、あんまりなくて……」

先輩の使ってたのは、使わせたくないんだ。
ボソリと星那が呟いた。

それから璃桜に促されるように、寧々子は説明する。

「黒須 寧々子です。手紙屋から、円堂 凪えんどう なぎ さんから笹木 星那ささき せなさんへの手紙を届けに来ました」

この手紙を届けると言う事は、亡くなっている事が真実なのだ、と現実を星那に突きつける。

血の繋がった家族なら尚更、認め切れずに待っている者もいるだろう。

それでも、死亡したと言うをする事で、捜索し続けて身も心も壊してしまう家族を守ろうとする人もいるはずだ。
 

その選択が、前を向く為のものでありますようにと、願ってしまう。

星那は身内ではない。
それでも、多分。家族以上の絆があるのではないか?
 
凪が届けたい先は、星那だけなのだから。


突然消えた友人。
受け入れ難い、死亡宣告。
待ち続けた日常から、存在していたはずの部屋の荷物が撤収された。

ここに凪は居ないのだ。

ガランとした部屋を見て、星那は何を考えていただろう。

手紙の事は、簡単に受け入れるのは難しいはずだ。帰って来ないと、二度と会えないと伝えるのだから。



お葬式もすでに終わっていると、璃桜に聞かされている。
死亡日が、星那の誕生日と言う事も。

それでも凪は、星那に届けたいのだ。

寧々子が優先すべきは、凪の思いを伝える事だ。
カバンから、取り出した手紙をテーブルの上に置いた。
星那の表情を確認するのが怖い。

手を膝の上に戻し、こぶしを握った。

その震える手に璃桜の手が重なった。
まるで、震えを止めてくれるかのように。
前を向き、星那を真っ直ぐ見て寧々子は伝える。


「凪さんの気持ちを、知って欲しいのです。受け入れるとか受け入れられないとか……そう言う事は、今すぐじゃなくていいんです。凪さんが、星那さんに伝えたかった事を知ってください」

読んでくれますようにと、祈るような気持ちになる。

「お願いします」
そう言って寧々子は頭を下げた。


きっとこの手紙は、星那を救う為のものだから。



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