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消えた君に

3.

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 璃桜からのLimeが来たのは、次の日の夕方だった。

 鴉:大福がそっちに行ってたよね?
 ねねこ:昨日?すぐ帰りました

 鴉:今、黒猫は家にいる?
 ねねこ:大福じゃなくて?私?
    
    鴉:家?
    ねねこ:いる

    鴉:直接会って話したい

    鴉:?
    鴉:今、家の前にいる
  ねねこ:嘘

 鴉:待ってる

 既読。

 取り敢えずジャージをジーンズに履き替えた。Tシャツはともかく、ジャージは恥ずかしい。
 制服から部屋着に着替えてまったりしてたのだ。

「何なのよ……もう家の前とか。ありえない」

 多分、大福が……手紙の事を璃桜に伝えたのだ。璃桜には、何が見えてるのだろう?
 あの猫は、本当に何なんだろう。神社の……守り神?何かの付喪神? グルグルと考えを巡らせる。

 靴を履いて駐車スペースまで行くと、キックボードの横に立っている璃桜がいた。

「──電動、キックボード?車じゃなくて?」
「車で来るほどの距離じゃないから。割と便利で使ってる……って、興味がある?」

「あ、はい」
「今度乗って見る?」

 待て、と寧々子は冷静になった。

「あ、いいえ。いいです。その、なんの用ですか?」

話を手短に済ませたい。
璃桜に、早くと要件を促した。

「──手紙、来てるよね?」
「鴉……璃桜さんに関係しますか?」

「寧々子」
 名前を呼んだのは、縁。

「縁さん、あの」
「家に上がってもらいなさい。こんなところだと目立つわよ?それとも珈琲ショップとかで二人でゆっくりしてきてもいいけど」

 一旦縁が言葉を止めて、キックボードの方を見た。

「それ、二人乗りは無理よね? なら、やっぱり家へ入ってもらって」

 早く帰って欲しいのに。なんで縁さんは、ここまで気を許すのだろう。不思議でしかない。そんな気持ちが顔に出たのか、縁に真顔で質問された。

「寧々子は嫌なの?」
直球も直球、答え辛い。

「そんなんじゃなくて……」
「助けてもらったのが、恥ずかしかったのかしらね」

「違うって」
「恥ずかしかったんだ?」
「だから、違うってば」

 ただ、パーソナルスペースがあまり広くない。踏み込まれたくない。

「本当に、猫みたいだな」
「そうなのよ」

二対一では、分が悪るすぎる。
さらに、最悪な事に縁がある提案をした。

「晩ご飯も一緒に食べて行って璃桜くん」

「それは、流石に」
「そうだよ。突然そんな事言ったら、鴉間さんの家も困るよ。わ、私も課題あるから、時間あまりないし」

「あら、今晩は地域の寄り合いがあったでしょう? 璃桜くん一人なんじゃない? 課題……ねぇ」

チラリと縁が寧々子に視線を送った。
裏に何かありそうな、笑顔付きで。

「折角だから……璃桜くん、寧々子の勉強見てくれない? 現役大学生なら心強いしね」

「塾に行かないんですか?」
「夜遅くなるからタクシーで送迎がいい思うのだけど。色々気にしちゃって、断固行こうとしないのよ」

「送迎……ああ、どうしても夜は、治安が悪くなりますよね」

「男の子でも、人気の無い所は危ないからね。家庭教師引き受けてくれるなら、車がいいわよ」

「ちょっと、なんでそんな話になってるの?」

「寧々子は、遠慮し過ぎって事よ。ここは、あなたの家なんだから。友達の一人も呼ばない。私、泣くわよ?それとも、こんな紹介したくない?」

「縁さん……そんなんじゃないです」
いや、全然お年寄りではない。寧々子より行動的で、知識も何もかもすごい人だ。
ただ夜の運転は、老眼にドライアイだから視力が落ちてて流石に怖いって言ってた。 だから、頼む事が出来なかったのだ。

「とにかく、家の中でゆっくり話しましょう」
「ええ、ぜひ」
 手紙の事も、大福の事も……璃桜の事も、もう縁に丸投げしようと思う、寧々子だった。






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