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消えた君に

2.

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 手紙が届いた事に気がついた。
 その一通を、縁に確認の為に届けに行く。

「──どう……しょうかな?」
「縁さん?」

「この間、あんなことがあったでしょう?」
「──うん。うまく対応出来なくて、ごめんなさい」

「あ、謝らなくて大丈夫よ。色んな感情を届けるからね……素直に受け取れるかなんて、分からないから」

 ふふふ。優しく微笑んだ縁が、少し考え込んでいる。寧々子も少し迷っている。対処出来ない時があるなんて、思いもしなかったからだ。

(皆喜ぶって思ってた。こう言うの独りよがりって言うのよね)

 寧々子自身は、ずっと待っているからだ。知る事が出来るのなら、両親の手紙が欲しい。

 大切な人との思い出が、あまりにも少ないから、縁のの思い出を聞くのも嬉しい。一つ一つ胸にしまっていく。覚えておきたい。それだけだ。

 窓の方からガタガタと音がする。
寧々子が、縁を見た後に窓の方へと向かう。
一呼吸おいた寧々子が、ゆっくりとレースのカーテンを開いた。

「大福?」
 少しぽっちゃりした白い猫が、猫パンチを窓に向かってしている所だった。

「あらら……本当に、来るのね」
「縁さんも見えますよね?」

「ああ、そうね。見えるわよ、猫」
「窓……開けない方がいいですよね? また、手紙を取られたら大変だし」

縁の顔を見ると、眉間にシワが寄ったのが分かる。

「えっ、お、追い返します?」

手紙取られた話を縁にしてなかった気がする。怒られるかな?と少しドキドキしてしまう。

寧々子が変な疑問形で尋ねると、縁が髪の毛を手ぐしで整えながら、近付いて来た。

「追い返したりしないで。入れてあげて」
「他所の家の猫……ですよ?」

「大福ちゃんでしょ。鴉間神社に居着いてる猫」
「この猫……」

 縁が窓を開けると、堂々と部屋に入ってきて、たたたたたとソファに向かった後に飛び乗った。

「普通の人には見えなくて、必要な人には姿を見せる、化け猫見たいな子」

 大福が少し怒ってる気がする。目を見開いてジーっと見てくる。ちょっと怖い。寧々子は、慌てて訂正を求めた。

「化け猫って言い方……それはちょっとあんまりじゃ」

縁は、ニッと悪戯顏で笑った。

「なんだろうね……守り神なのかしらね。だって、私妖とか見た事ないもの。人の思いとか思い出は、イメージとして。霊感があるとか、祓ったりとか出来ないから、不思議な存在としか思えないもの」

「縁さんは、怖い思いとかした事ないですか?暴走されたり……拒否されたり」

「んー。何だろう。うちの招き猫に守ってもらってる気がするのよ。それで納得してるわ。それと、届けたい知って欲しいって願ってる。上手くいかない時に……鴉間神社には、良く手を合わせに行ってたかな」

「──そうなんですか?」

「先代とかには、助けてもらってたわよ。だから、ね。日向くん、璃桜くんは友達になっておきなさい」

 大福の隣りに縁が座ると、膝の上に乗って丸まった。縁が優しく撫でるとゴロゴロと言って甘えだす。

「今回も、寧々子が行ってくれる? この手紙の届け先……璃桜くんの知り合いみたい」

 ようやく、送迎から解放されたのに。また、関わるのかと寧々子はため息をついた。



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