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消えた君に
1.
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行方不明から七年が経過した日が死亡日となる「普通失踪」と行方不明の日が死亡日になる「特別失踪」がある。
「特別失踪」は、海難事故や戦争の場合による事が多い。
死亡の原因となる危機に遭遇する事。
その危難が去り一年間生死不明の場合に失踪宣告が認められるらしい。
彼の先輩は、朝活のサーフィンを日課にしていた。サーファーは良い波を求める。凪では駄目なのだ。
少し荒れたくらいが調度良い。つまりは、普通なら遊泳が難しいと言う海況を好のんで、チャレンジしてしまう。
「たった一年で、捜索が終わるなんて。どこかで生きてるかも知れないのに」
璃桜と学部が同じ笹木 星那が、苦々しく呟いた。
三日後は、一年前の遭難事故の日だ。
事故の数日後に海岸に流れついたのは、亀裂の入ったサーフボードだけ。サーファーの足とボードを繋ぐリーシュコードが、途中から千切れていた。
彼はただ一人海に放り出されたのだ。
浮遊する道具であり、捜索の際に目印になりそうなボードが先に見つかると言うことは絶望的でしかなかった。
年中海に行くせいで、髪の毛は潮焼けしていていた。璃桜の金髪よりも色素が抜けて銀糸が混ざっている。よく日に焼けているので学食で並んでいると、璃桜以上に目立つ存在だった。
だから、事故の日のニュースは学内でも有名。
『あんな日に海に行くなんて』
『下手なのに上級者のポイントに行くからこんな目に……自業自得だよ』
ほとんどが誹謗中傷だ。星那が、目を腫らし歯を食いしばっていた姿を思い出す。
二人がルームシェアをしていた。笹木 星那と円堂 凪先輩。同じ高校の時からの先輩後輩の関係。
今でも、彼の部屋はそのままらしい。ずっと帰りを待っていると聞いた。
二人には何か特別な絆があるのだろうか?
「──それで、俺に相談って何?」
「本当に……亡くなったのか、調べて欲しいんだ。その、噂……」
璃桜の噂。
またか、と思う。
「噂って、聞いていい?どんなやつ?」
「幽霊が見えるって……本当?」
「そんなの、信じてるとか。有り得ないと思うんだけど」
「分かってる、分かってるよ。だけど、死んだって信じたくない。三日後が、あの日が命日になるとか……嫌だ」
「特別失踪……の場合はそうなる事が多いじゃないか? 日にちの特定なんて出来ないし」
「僕の誕生日なんだ」
「星那の? だからと言って俺が、家族に幽霊からいつ死んだか聞きましたって言う訳? そんな胡散臭い事を言って、誰かを深く傷つけると思わないか? 」
「そん……な、の。そんなの、十分分かってるよ。でも、戸籍とか全部、凪先輩の存在を消されてしまうんだ。荷物も全部引き取るって……」
「俺が出来る事なんて何もないよ」
「一緒に居たんだ。まだ認めたくない……ごめん。璃桜、変な事言って」
星那が、もう一度謝って席から離れて行った。
「特別失踪」は、海難事故や戦争の場合による事が多い。
死亡の原因となる危機に遭遇する事。
その危難が去り一年間生死不明の場合に失踪宣告が認められるらしい。
彼の先輩は、朝活のサーフィンを日課にしていた。サーファーは良い波を求める。凪では駄目なのだ。
少し荒れたくらいが調度良い。つまりは、普通なら遊泳が難しいと言う海況を好のんで、チャレンジしてしまう。
「たった一年で、捜索が終わるなんて。どこかで生きてるかも知れないのに」
璃桜と学部が同じ笹木 星那が、苦々しく呟いた。
三日後は、一年前の遭難事故の日だ。
事故の数日後に海岸に流れついたのは、亀裂の入ったサーフボードだけ。サーファーの足とボードを繋ぐリーシュコードが、途中から千切れていた。
彼はただ一人海に放り出されたのだ。
浮遊する道具であり、捜索の際に目印になりそうなボードが先に見つかると言うことは絶望的でしかなかった。
年中海に行くせいで、髪の毛は潮焼けしていていた。璃桜の金髪よりも色素が抜けて銀糸が混ざっている。よく日に焼けているので学食で並んでいると、璃桜以上に目立つ存在だった。
だから、事故の日のニュースは学内でも有名。
『あんな日に海に行くなんて』
『下手なのに上級者のポイントに行くからこんな目に……自業自得だよ』
ほとんどが誹謗中傷だ。星那が、目を腫らし歯を食いしばっていた姿を思い出す。
二人がルームシェアをしていた。笹木 星那と円堂 凪先輩。同じ高校の時からの先輩後輩の関係。
今でも、彼の部屋はそのままらしい。ずっと帰りを待っていると聞いた。
二人には何か特別な絆があるのだろうか?
「──それで、俺に相談って何?」
「本当に……亡くなったのか、調べて欲しいんだ。その、噂……」
璃桜の噂。
またか、と思う。
「噂って、聞いていい?どんなやつ?」
「幽霊が見えるって……本当?」
「そんなの、信じてるとか。有り得ないと思うんだけど」
「分かってる、分かってるよ。だけど、死んだって信じたくない。三日後が、あの日が命日になるとか……嫌だ」
「特別失踪……の場合はそうなる事が多いじゃないか? 日にちの特定なんて出来ないし」
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「星那の? だからと言って俺が、家族に幽霊からいつ死んだか聞きましたって言う訳? そんな胡散臭い事を言って、誰かを深く傷つけると思わないか? 」
「そん……な、の。そんなの、十分分かってるよ。でも、戸籍とか全部、凪先輩の存在を消されてしまうんだ。荷物も全部引き取るって……」
「俺が出来る事なんて何もないよ」
「一緒に居たんだ。まだ認めたくない……ごめん。璃桜、変な事言って」
星那が、もう一度謝って席から離れて行った。
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