手紙屋 ─ending letter─【完結】

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
11 / 32
手紙屋☆伝えたい想い

9.結局こうなる

しおりを挟む
 高校二年生の寧々子の朝は早い。

 璃桜が通っていた聡慧館そうけいかん高校は、県下トップクラスの、いや日本でも最難関として有名な高校。

 生徒のレベルの高さ故か、自主性を重んじ生徒に自治が認められていて校則がない。自分達が行動なのかも分かっているので、教職員の信頼が熱いとか、テレビで高校紹介されていた。

 その高校よりは、県内で三つくらい下の偏差値になるが進学校ではある。
 ただし、打倒聡慧館そうけいかん高校を掲げているので、課題も課外授業も多い。

「朝課外もあるので、送迎は結構です」

 断ったのに、それなら尚更だと璃桜の兄にバッサリと切られた。

「大学とか、バイトとか……忙しいですよね?」

(ほら、断れ。無理って言え)と念じてみても伝わらないみたいだ。

「神社の手伝いが、バイトみたいなものだし。大丈夫。大丈夫。運転も俺より上手いよ。りーくん……じゃなくて璃桜も、一週間、いや完治するまでの送迎出来るよね?」

りーくん……。
寧々子は思わず、ツッコミそうになったけど、鋭い視線を感じて黙った。日向の圧が大きかったのか、璃桜は折れた。

「分かった、。連絡先、Lime教えて」

自然の流れに逆らえず、連絡先まで交換する羽目になってしまった。



既に、家の前の空きスペースに車が停まっている。
ひょこひょこと歩いていると、スタスタと縁が先に動いた。

「おはよう。璃桜くん。しばらく寧々子の送迎をお願いするわね」

祖母だけど、母親位にしか見えない。本当に年齢不詳の美人だ。

「おはようございます。──分かりました。じゃ、乗って……黒ね……黒須さん」

黒猫、呼ばわりにムッとしつつ、でも今更、黒須さんって言われるのもむず痒い。

おはようございます」

璃桜の眉がピクリと動いた。仕返しを少ししてみたのだけど、日向に比べてクールに見えたものの、意外と表情が豊かだ。

思わず、吹き出しそうなった。

学校までは、車なら5分もかからない。
裏門に着けてもらうつもりだった。ほぼ沈黙の車内で、裏門にお願いしますと伝えたのだ。

「なんで、よりによって正面?」
こっちは、JKだ。 金髪の男性に朝から送迎されているのを見られるとか……堂々とし過ぎてびっくりだ。

「裏門に送る方が、意味深だろ?学校には連絡してくれてるらしいし」

「そうだけど、そうじゃないでしよう!!」

「世間は狭いから、問題ないし……誰も俺と誤解なんてしない」

「えっ、逆でしょ? 疑われると思うけど?」

ブハッと吹き出して笑い始めた。

「教室まで送る?」
「結構です!」

「帰りも、黒猫」

「う、───わかりました」

「じゃ、また」
そう言って、戻ってしまった。面白がってる。絶対そうだ。なんか腹が立つ。


ほら、だから……今こんな目に合うんじゃない。

クラスの席に着いた後、こんなにクラスメートに囲まれたのは、初めてだ。

(あの、腹黒鴉……最低)

夕方の事を思うと寧々子は、ため息しか出なかった。











しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。 ⚠️不倫等を推奨する作品ではないです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

ゼラニウムの花束をあなたに

ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...