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手紙屋☆伝えたい想い
8.
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手紙は、文字ももちろん書かれているのだが、受け取り人が便箋を開いた時に本人の声で届く。
受け取り人の三葉、届け人である寧々子、璃桜はその能力で、今回は特別に母親にも届いたみたいだ。
母親は本来ここに呼ばれて居なかったのだから。
何より、普通の人に見えない大福が母親の傍に寄り添っている。
寧々子も、もらい泣きをしてしまいそうだった。
ただ鴉間神社で、璃桜の手から取り返そうとした時とは違う感覚がある。
あの時は、悪意のようなものを感じていた。
理由は今なら分かる。
代わりに死んで欲しい……四葉のその気持ちのせいかもしれない。
きっと自分は、自傷をする三葉を許せない気持ちの部分に触れたのだ。
でも今は、この手紙には後悔の念はあるものの、悪意は感じる事はなかった。
一度破いたから?
それとも、大福が繋いだから? どう見ても、璃桜の影響がある気がしてならない。
璃桜の方を見ると、パクパクと口が動いた。
【か、え、る、ぞ】
三葉は、母親に抱きついて泣き声を我慢しているみたいだ。ちゃんと泣くべきだ。
きっと、四葉の気持ちは届くはず。
手紙は、直に消えてしまう。だからちゃんと二人とも泣いた方がいいのだ。
家族の邪魔はしないで、帰ろう。そして、自然に手紙屋の事も薄れていく。
寧々子が璃桜に向かって頷くと、傍に璃桜が来た。
「長く滞在して、ご迷惑をお掛けしました」
「──ありがとう」
三葉の声が聞こえた。
「元気になってね」
それだけを伝え、璃桜に腰を支えられて、この家を後にする。
玄関を出た先に、車がとまっていた。
「無事に終わった?」
パワーウィンドウが下がって、手を振ったのは日向さんだ。
着物じゃない姿だと、若い。
「いや、黒猫が怪我した」
「は? 嘘。大丈夫?」
「大丈夫です。縫うほどじゃないって、小さな破片を三つほど踏んだばかりなので、今だけです。明日になれば大丈夫です」
「今日はもちろん送る予定だったけど……高校の登下校大変だよね。松葉杖みたいなの、家にあったような。そうだ璃桜が送迎したらいい」
「ちょっ、え? いい、いいです!」
「大丈夫。ヘルプ遅れたんでしょ? 責任取りなさい璃桜」
日向の言葉に、璃桜の顔は渋い。
「───分かった。それより、早く後ろ開けて」
後部座席に乗せられた。璃桜は助手席に座る。
日向がエンジンをスタートさせた後に、また声をかけられる。
バックミラー越しに優しい笑顔が見えて、思わず照れてしまう。
「ごめんごめん。黒猫ちゃん。一週間位送迎させてね」
「いえ、あの、なんで? だってこれは私の仕事だったから」
「三葉さんの家族から、話は聞いてて時々話し相手になろうかと思ってたら、色々関わりがね」
何となく、察して来た。
「もしかして」
「そう言う事。縁さんからも、寧々子をお願いしますって言われてた」
日向さんが楽しそうに笑う。
「なら、手紙が危ないみたいな事は」
「四葉じゃなくて、三葉が一人だと受け止められそうもないって意味。自傷行為について、怒るの当たり前だろ」
「じゃあ、怒りの感情が入ってきたんだ」
「ま、そう言う負の感情を強く受けたのは、黒猫が羨ましいのもあったんだろ。怖いから届けないって言うかと思ってたけど、責任感は合格っぽい」
「──合格っぽい?」
「縁さんが、見習いの黒猫ちゃんが後継になれそうか判断して欲しいって、言われてたので。これからも頑張ってね。危なっかしいから、見張り役を推薦します」
「サポートですか?」
「璃桜、頼むね」
『はぁぁぁ!?』
璃桜と寧々子が変な声をあげて、日向が吹き出した。
受け取り人の三葉、届け人である寧々子、璃桜はその能力で、今回は特別に母親にも届いたみたいだ。
母親は本来ここに呼ばれて居なかったのだから。
何より、普通の人に見えない大福が母親の傍に寄り添っている。
寧々子も、もらい泣きをしてしまいそうだった。
ただ鴉間神社で、璃桜の手から取り返そうとした時とは違う感覚がある。
あの時は、悪意のようなものを感じていた。
理由は今なら分かる。
代わりに死んで欲しい……四葉のその気持ちのせいかもしれない。
きっと自分は、自傷をする三葉を許せない気持ちの部分に触れたのだ。
でも今は、この手紙には後悔の念はあるものの、悪意は感じる事はなかった。
一度破いたから?
それとも、大福が繋いだから? どう見ても、璃桜の影響がある気がしてならない。
璃桜の方を見ると、パクパクと口が動いた。
【か、え、る、ぞ】
三葉は、母親に抱きついて泣き声を我慢しているみたいだ。ちゃんと泣くべきだ。
きっと、四葉の気持ちは届くはず。
手紙は、直に消えてしまう。だからちゃんと二人とも泣いた方がいいのだ。
家族の邪魔はしないで、帰ろう。そして、自然に手紙屋の事も薄れていく。
寧々子が璃桜に向かって頷くと、傍に璃桜が来た。
「長く滞在して、ご迷惑をお掛けしました」
「──ありがとう」
三葉の声が聞こえた。
「元気になってね」
それだけを伝え、璃桜に腰を支えられて、この家を後にする。
玄関を出た先に、車がとまっていた。
「無事に終わった?」
パワーウィンドウが下がって、手を振ったのは日向さんだ。
着物じゃない姿だと、若い。
「いや、黒猫が怪我した」
「は? 嘘。大丈夫?」
「大丈夫です。縫うほどじゃないって、小さな破片を三つほど踏んだばかりなので、今だけです。明日になれば大丈夫です」
「今日はもちろん送る予定だったけど……高校の登下校大変だよね。松葉杖みたいなの、家にあったような。そうだ璃桜が送迎したらいい」
「ちょっ、え? いい、いいです!」
「大丈夫。ヘルプ遅れたんでしょ? 責任取りなさい璃桜」
日向の言葉に、璃桜の顔は渋い。
「───分かった。それより、早く後ろ開けて」
後部座席に乗せられた。璃桜は助手席に座る。
日向がエンジンをスタートさせた後に、また声をかけられる。
バックミラー越しに優しい笑顔が見えて、思わず照れてしまう。
「ごめんごめん。黒猫ちゃん。一週間位送迎させてね」
「いえ、あの、なんで? だってこれは私の仕事だったから」
「三葉さんの家族から、話は聞いてて時々話し相手になろうかと思ってたら、色々関わりがね」
何となく、察して来た。
「もしかして」
「そう言う事。縁さんからも、寧々子をお願いしますって言われてた」
日向さんが楽しそうに笑う。
「なら、手紙が危ないみたいな事は」
「四葉じゃなくて、三葉が一人だと受け止められそうもないって意味。自傷行為について、怒るの当たり前だろ」
「じゃあ、怒りの感情が入ってきたんだ」
「ま、そう言う負の感情を強く受けたのは、黒猫が羨ましいのもあったんだろ。怖いから届けないって言うかと思ってたけど、責任感は合格っぽい」
「──合格っぽい?」
「縁さんが、見習いの黒猫ちゃんが後継になれそうか判断して欲しいって、言われてたので。これからも頑張ってね。危なっかしいから、見張り役を推薦します」
「サポートですか?」
「璃桜、頼むね」
『はぁぁぁ!?』
璃桜と寧々子が変な声をあげて、日向が吹き出した。
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