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手紙屋☆伝えたい想い

3.

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 予定通りに、家の前に着いた。ただ朝から一日晴れの天気予報が外れてしまい、気持ちが沈んでしまう。

 パラパラと降り出した雨に濡れた顔や腕、鞄をハンカチで軽く拭いた後に寧々子は、一度大きく深呼吸をしてインターホンを押した。

返事が聞こえた後に、すぐに鍵を解除する音がしてドアが開く。

「黒須 寧々子といいます。手紙屋から来ました」
黒いカーディガンは萌え袖状態で、指先が少しだけ見える。華奢な女の子はさらに儚げに見えた。
他には誰もいないようで、手紙を渡す相手は彼女一人だという事だ。

「どうぞ」
後について室内に上がると、カーテンは閉まったままだ。彼女は薄暗いリビングのライトをオンにする。

初夏とは言え、室内の無風状態にじわりと汗ばんだシャツが肌に張り付いた。暑くないのかな?と思い顔をもう一度よく見ると少し隈が出来ていて、眼も赤い。

 ああ……だから、手紙を届けたかったんじゃないか? こんな姿で家に引きこもっている。そんな事を推測出来るほどに、彼女の姿は痛々しい。

リビングの脇の家具の上に写真と花が飾ってある。彼女に似た女の子だ。もう少しふっくらしていたら双子に見えなくも……

ふと、そのワードが頭に響いた。

四葉よつばさんに挨拶させてください」
「───どうぞ」

 手を合わせて目を瞑る。
(想いを届けに来たからね。貴方も彼女も前に進める様に手伝わせてね)

 不意に後ろから声がかかった。

「私達そっくりだったの。今は似てないでしょ?」
「四葉さんはお姉さんですか?」

「うん。自慢の姉だったの。私達は双子だから一つの魂を分けあって生きてきたんだよ。置いていくなんてひどいよね?」

 双子には見えないくらいに痩せた頬に涙が伝う。これは、少し不味い気がする。早めに手紙を見せた方が、心が軽くなるかもしれない。

「あの、お姉さんからの手紙を受け取ってくれるかな?」

「受け取らなきゃ駄目?」

「え?」
何を言われてるのか、ピンと来なくて変なトーンの声色になる。

「手紙を届けるのが……」

「仕事なんでしょ? 四葉ちゃんの言いたい事なんて分かるから!!」

「お、落ち着いて。思ってる事と違う事書いてるかも知れないし」

「双子なの!ずっとずっと一緒にお母さんのお腹の中からずっと……一緒だったんだから。貴方に何が分かるのよっ」

側に寄ってきた彼女が、手紙を奪い取って寧々子の目の前でビリビリと破り捨てる。

初めて、こんな事が起きた。
手紙が、ハラハラとフローリングに落ちていく。

「な、なんで……? これじゃ、読めないよ」

「分かってるのよ。代わりに死んでよって言われたんだから。私だって、そうしてあげたかったのに」

落ちた手紙を拾い集めて、出直すべきだと思うと同時にニコリともしなかった青い双眸を思い出す。

きっと手紙を取られたり、破られたり……予定外の事が起きたから璃桜の事を考えてしまうのだ。

違うって否定してあげたい、そんなはずはないって言ってあげたい。
でも、破れた手紙ではどうしようもないのだ。寧々子は、手紙を元に戻す為に持ち帰ろうと手を伸ばした。

「触らないで!!」
手を叩かれて押された勢いで、家具にぶつかってしまった。

そして花瓶と写真立てが落ちてガラスが飛び散った。


















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