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手紙屋☆伝えたい想い
1.
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神主として働いてるお兄さんよりも、霊的な要素を持っているのは……璃桜さんなんだと寧々子は思った。
この手紙が見る事の出来る人は、霊的な才能がある人だから。
璃桜の手に握られている手紙を返してもらう必要がある。大切な想いが込められている手紙を、相手に渡すのが仕事なのだ。
璃桜の兄には、見えてないものを受け取るのは、おかしいのだろうか?
さっきの会話からいけば、璃桜の力を知っている訳だから、変には思わないのかも知れない。
それに、神職の人だ。あからさまに態度を変えたりしないはず。
大丈夫。変な子と思われるのは今更だよ。そう寧々子は言い聞かせた。
勇気を振り絞るように手をギュッと握り締め、少し唇を噛み締めて一歩前に出る。
気味が悪く思われるのなんて、慣れているもの──そんな事より手紙が大切。
これは、大切な仕事なのだ。
「それ、私のです。猫に取られて追いかけて来たんです」
璃桜の手を見て正直に話した。
璃桜の兄の視線も、その手に移る。
「──手紙があるんだね。そっか大福のせいかぁ……本当にちゃんと叱っとくね。後は二人だけで問題ないかな? ご祈祷を頼まれてる方が来るから社殿に行かないとね。ゆっくりしていってくださいね」
丁寧に一礼して白猫を抱えたまま行ってしまった。
背筋をピンと伸ばしていて、所作が一つ一つ綺麗な璃桜の兄を、寧々子も目で自然と追ってしまう。
「兄貴には、彼女がいるけど?」
「へ? そ、そんなんじゃないです! それより手紙を返して……下さい」
手を差し出すと、璃桜は片手に持った手紙を軽く横にふる。
「これ、なんで持ってんの? 黒須 寧々子さん」
突然フルネームで呼ばれて、寧々子は慌てた。
「なんで、私の名前知ってるの? ス、ストーカー?!」
いくらなんでも、自分はそこまで有名人ではないはずだ。疑いの眼差しを璃桜に向けつつ、自身の体を抱きしめて隠すようにする。
「は? それこそない。初めて会うのに」
「じゃ何で、私の名前をフルネームで知ってるの? へ、変態!?」
「自分で、さっき名乗ってただろ」
はたっと、寧々子の動きが止まる。時間を巻き戻すように、ここに来てからを思い出してみた。
「あ……ああ、そっか。手を合わせてた時?」
「思い出した? で、この手紙は君に繋がるとは思えない。どこで拾った? 大福が持って来たのだから、あまり関わらない方がいい」
「猫……が持って来たからって。偶然じゃないの? え、何あのこ、猫じゃないの?妖!?」
「大福は妖とかじゃない。 危険はない」
「関わらない方がいいって言われても。それを届けるのが仕事だもの。うちの家業なんだから仕方ないでしょう?」
「家業? こんな、怪しいものを運ぶのが?」
「怪しいとか、そんな事ありません。今まで何ともなかったもの。想いが込められてる手紙なんだからっ!ちゃんと届けないと駄目なの。早く返して。貴方……自称、霊媒師とか……?」
神社で、目立つ金髪。 しかも、耳のピアスは痛々しい位だ。見た目は、ここに似合わないけれど、不思議な存在。
寧々子がジロジロと顔を見ていると、璃桜は嫌そうな顔をする。
「霊媒師とかそんなんじゃない。───少し分かるだけだ」
「神社の人が全員視える訳でもないですよね? 不安を煽っても壺も御札も買いませんから!」
取り返そうと、手紙を掴んだ。ぶわりと、何か得体の知れない感情の様なものが体に入ってきた。
『代わりに……死……』
こんな事、今までなかったのに?この子の感情に引きずられそうになった。
パシンッと背中を叩かれた瞬間にプツンと糸が切れたように何もなくなる。
響いた音は痛そうに思うかもしれないが、特に痛いとは思わない。ただ繋がりが切れたのだけは分かった。
「祓い人? い、や、ちょっと待って。祓ったりしないでよ。今あなたに関わりたくないんだけど? 手紙届けてからにして!」
「祓ってはいない。ただ君から引き離しただけだ。祓ってとは言われた事はあるけど祓ったりしないでは、おかしくないか?」
「だから、仕事だって」
取り返した手紙をカバンにつっこんで、頭を下げる。
「問題ないので、さよなら!」
寧々子は、明日筋肉痛になるだろう両足を恨めしく思う。
登ってきた階段を落ちないように、手摺りに触れながらなるべく早く駆け下りた。
この手紙が見る事の出来る人は、霊的な才能がある人だから。
璃桜の手に握られている手紙を返してもらう必要がある。大切な想いが込められている手紙を、相手に渡すのが仕事なのだ。
璃桜の兄には、見えてないものを受け取るのは、おかしいのだろうか?
さっきの会話からいけば、璃桜の力を知っている訳だから、変には思わないのかも知れない。
それに、神職の人だ。あからさまに態度を変えたりしないはず。
大丈夫。変な子と思われるのは今更だよ。そう寧々子は言い聞かせた。
勇気を振り絞るように手をギュッと握り締め、少し唇を噛み締めて一歩前に出る。
気味が悪く思われるのなんて、慣れているもの──そんな事より手紙が大切。
これは、大切な仕事なのだ。
「それ、私のです。猫に取られて追いかけて来たんです」
璃桜の手を見て正直に話した。
璃桜の兄の視線も、その手に移る。
「──手紙があるんだね。そっか大福のせいかぁ……本当にちゃんと叱っとくね。後は二人だけで問題ないかな? ご祈祷を頼まれてる方が来るから社殿に行かないとね。ゆっくりしていってくださいね」
丁寧に一礼して白猫を抱えたまま行ってしまった。
背筋をピンと伸ばしていて、所作が一つ一つ綺麗な璃桜の兄を、寧々子も目で自然と追ってしまう。
「兄貴には、彼女がいるけど?」
「へ? そ、そんなんじゃないです! それより手紙を返して……下さい」
手を差し出すと、璃桜は片手に持った手紙を軽く横にふる。
「これ、なんで持ってんの? 黒須 寧々子さん」
突然フルネームで呼ばれて、寧々子は慌てた。
「なんで、私の名前知ってるの? ス、ストーカー?!」
いくらなんでも、自分はそこまで有名人ではないはずだ。疑いの眼差しを璃桜に向けつつ、自身の体を抱きしめて隠すようにする。
「は? それこそない。初めて会うのに」
「じゃ何で、私の名前をフルネームで知ってるの? へ、変態!?」
「自分で、さっき名乗ってただろ」
はたっと、寧々子の動きが止まる。時間を巻き戻すように、ここに来てからを思い出してみた。
「あ……ああ、そっか。手を合わせてた時?」
「思い出した? で、この手紙は君に繋がるとは思えない。どこで拾った? 大福が持って来たのだから、あまり関わらない方がいい」
「猫……が持って来たからって。偶然じゃないの? え、何あのこ、猫じゃないの?妖!?」
「大福は妖とかじゃない。 危険はない」
「関わらない方がいいって言われても。それを届けるのが仕事だもの。うちの家業なんだから仕方ないでしょう?」
「家業? こんな、怪しいものを運ぶのが?」
「怪しいとか、そんな事ありません。今まで何ともなかったもの。想いが込められてる手紙なんだからっ!ちゃんと届けないと駄目なの。早く返して。貴方……自称、霊媒師とか……?」
神社で、目立つ金髪。 しかも、耳のピアスは痛々しい位だ。見た目は、ここに似合わないけれど、不思議な存在。
寧々子がジロジロと顔を見ていると、璃桜は嫌そうな顔をする。
「霊媒師とかそんなんじゃない。───少し分かるだけだ」
「神社の人が全員視える訳でもないですよね? 不安を煽っても壺も御札も買いませんから!」
取り返そうと、手紙を掴んだ。ぶわりと、何か得体の知れない感情の様なものが体に入ってきた。
『代わりに……死……』
こんな事、今までなかったのに?この子の感情に引きずられそうになった。
パシンッと背中を叩かれた瞬間にプツンと糸が切れたように何もなくなる。
響いた音は痛そうに思うかもしれないが、特に痛いとは思わない。ただ繋がりが切れたのだけは分かった。
「祓い人? い、や、ちょっと待って。祓ったりしないでよ。今あなたに関わりたくないんだけど? 手紙届けてからにして!」
「祓ってはいない。ただ君から引き離しただけだ。祓ってとは言われた事はあるけど祓ったりしないでは、おかしくないか?」
「だから、仕事だって」
取り返した手紙をカバンにつっこんで、頭を下げる。
「問題ないので、さよなら!」
寧々子は、明日筋肉痛になるだろう両足を恨めしく思う。
登ってきた階段を落ちないように、手摺りに触れながらなるべく早く駆け下りた。
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