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最愛の君へ
最愛の君へ 後編
しおりを挟む鈍く光る剣が見えた。
「あ……アルっ」
ルビー色の瞳が、より真紅に染っている。
怒ってる……纏う空気が、いつもと違う。
僕を見た一瞬だけ、ホッとしたように柔らかく笑った。すぐに引き締まってリート様を睨んでいる。
それに、銀色の髪が見えた。後ろにいるの……シス兄様だ。
アメジストの瞳が、この場を凍らせてしまいそうだ。
名前を呼ぼうとした時、声が出せなくなった。
イアソ様なの?
そして、閉じ込められている僕の前にイアソ様が現れた。
「───何をしに来た?」
少し、馬鹿にしたような……煽るようにも聞こえる。
駄目。挑発されて、手を出したら……アルもシス兄様も……命が危ない。
神を怒らせたら、赦されるはずが無い。
声も出せない、どうしたら……
「───大切な人を取り返しに来た」
「返すとでも?」
「ルナは、俺の最愛の人だ。いくら貴方でも、絶対に渡さない。約束ですよね?寿命を全うするまで待つと」
「──大切にしてないのはお前達だ。なぜ泣かす?」
アルの顔が歪む。違うって言いたいのに声が出ない。
「それは、ルナがシャウラを大切に想うからです。──別れる日を考えてしまうからでしょう」
「面倒だな、人は。そんな感情に振り回されて、優しいルナは傷ついていくのに。我らは、最愛を大切にしたい。護りたいだけだ」
フッと笑ったアルが、威圧しているイアソ様に向かって堂々と話している。
恐ろしいはずだ。
逆らわないで、お願い。
「貴方も、ルナを泣かしてますよ?ルナに必要なのは俺です。その空間から、出して貰えませんか?嫌だと言うのなら、この森を焼き尽くしてでも取り返します。まぁ、半分は氷に閉ざされるかも知れません。彼のルナへの想いは、俺並みですから」
ウンディーネ様、シルフィ様にノーム様も現れた。
どうしょう。イアソ様の加勢に来たの?ただ森を護りに来ただけだよね?攻撃とか、しないよね?
シス兄様が、剣を構えて魔術を発動させる。
嫌だやめて。
精霊の森が傷つくとか、皆が傷つくなんて……
「─────」
声、でて!声、声、声……
「─────」
あ、守刀がある。リート様を押しのけて首にあてた。
僕さえ消えてしまえば……いいんだ。
皆がこちらを見た。
「っ、ルナ!!」
アルが一瞬でこちらに移動して剣を突き立てた。
ガラスのように砕けた破片。守刀は、弾かれる。抱き締められて。アル、アル。
もう、訳が分からない。ただ、抱きついて泣いてしまう。
アル、死んだらやだ。
「イアソ様。人には人の思いがあるのです。ルナにとって何がいいのかは、ルナが決めることです。2人を引裂くとか、やめてもらいたい。迷惑です」
シス兄様の低い声が聞こえた。
「本当に、イアソ様、やり過ぎです。ルナが可愛いからって。大体貴方が本気なら、この場所にこの2人は、来れないでしょう?」
呆れた声は、リート様だ。
「甘えるのが何時まで経っても下手だからね」
イアソ様?
「連れて帰れ。寂しがらせるな……次はない」
一瞬で、パルムの木の下に戻ってきた。
シャウラが、飛びついて来る。
「ルナ様。連れ去られたかと……もう、戻してもらえなかったらどうしようって」
「こら、離れろシャウラ」
「アル兄様……貴方がしっかりしてないせいって、シス兄様が言ってました!ルナ様を泣かせたら、許しません」
シャウラ?
「ルナ様を護る役目を絶対に勝ち取ります」
「アルも大変だな……」
シス兄様……?
抱き上げられた。
アルの首にしがみつく。
「部屋に戻ってから話すよ」
◇◇◇
「シャウラを私たちの子にするの?」
今室内には、シス兄様とシャウラそしてアルがいる。
防音を張られた部屋に、お菓子とお茶が用意されている。
「どうして。家族は離さない方が良いと思うよ?」
「兄上からの提案なんだ。俺に第2夫人をって声が上がってる。そこで、養子としてシャウラを預けると」
意味がよく分からないけど。不思議で、ついシス兄様をみてしまった。
少し笑ってる。
「都合がいいんだよ。2人の間に子供がいる。第2夫人の必要性がない。しかも、王になる人の実子だ。反乱分子になり得ない。双子だしね。仲の良さも群を抜いてる。何より、アリオトが提案したようだ」
「何を提案したの?」
『自分の代わりにルナ様を護って欲しい』
「言われなくても、その役目を受けるつもりでした。だって、いくら今は強くても、老化します!私が成長したら交代するんです。アリオトの想いを叶えます。それに、私も一緒に居たいです」
眩しい笑顔を向けられる。
「フォレストは、最強騎士達の集まる場所です。シス兄様は、魔術もすごいし、ここで、私は強くなります。だから、ここに残ってもいいですか?」
「シャウラ、僕と家族になってくれるの?」
「はいっ!その方が都合が……」
アルに口を塞がれてジタバタしている。
都合ってなんだろう?
「シャウラ……ルナは俺のだから」
また、子供相手に……そんな事言ってる。
でも……それでも。やっぱり。
「──アル。大好き」
自然と笑みがこぼれてしまう。
あれ?
みんなが固まってる。どうして……?
「シリウス……すまない。シャウラを鍛えくれ。ちょっとルナと話し合いをしてくるよ」
そう言ってまた、抱きかかえられた。
あっ、て思った時には寝室へと移動してた。
「些細なことでもいいんだ。手を煩わすとか、思わないで話して。心臓に悪い。俺は今世も、その先も……お前のものだ。そして、ルナ……お前も俺だけのものだよ」
抱きついてしまう。この人が好き。
「ずっと、アルだけのものだよ」
そして、口付けを交わした。
◇◇◇
番外編を長く書かせて頂きました。
R回も多くて……皆さん引いてませんか?😅
口付け後……は妄想して下さい。
ここで、一度終了したいと思います。
何かしらイベントがあれば、この2人を登場させるかも知れません。そのくらい、思い入れがあって大好きな作品です。
読んで頂けて、時に感想等……嬉しく思います。
別作品を書いてますので、応援頂けたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
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