【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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最愛の君へ

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なんと言うか……気まずい。
2人して、遅れてオーウェン殿下に会いに行く。

たぶん……バレているのだろう。
片目を一瞬閉じて合図っぽくされると、羞恥で顔が赤くなった。少し僕を隠すようにアルが前に立つ。余計に恥ずかしいかも。

にこやかに笑う殿下の腕の中には、シャウラ王子の後ろ姿が見えた。しがみついていて残念だけど顔が見えない。隣に座るアリオト王子との大きさの違いに胸が痛む。先にアリオト王子がソファから降りて、僕達の方にやってきた。

「お久しぶりです。アリオト・グランデです」

オーウェン殿下に似た賢そうな子だ。格好良くなりそう。

「よく来たな」
アル……声のトーンが低いよ?
シャツを少し引っ張ると、振り返って優しく微笑んでくれる。
あ​───もう。

アルの脇から前に出て行く。
「いらっしゃい。疲れたよね?お菓子とか遠慮しないで。それとも、パルムの木まで案内しようか?」

僕の顔を見て、少し赤くなって口を閉じてしまった。恥ずかしいのかな?
何か迷っているので、もう少しだけ待ってみた。


「あの。私は、ここにいます。シャウラをお願いします」

活発そうだから、外が喜ぶかと思ったのにな。

「そっか。残念……一緒は嫌だった?」

その時、初めてシャウラがこちらを見た。ルビー色の大きな瞳から、こぼれ落ちる涙。

「​───やだ。ぼくが、はなれたら。きっと……すぐ、かえっちゃう」

あ。シャウラ……置いていかれるの分かっているんだ。

「シャウラは、治療があるんだから、ここにいるんだ!」

「アリオトなんかっ嫌い!ズルい。いつもいつも、僕を仲間はずれにする」

「​───いいよ。嫌いでも」

ああ2人とも……素直じゃないなぁ。 

「だめ。アリオトも一緒に外に行こうね。シャウラは、僕が抱っこして連れていくね。オーウェン殿下は、アルとしててね!」

「は?ルナ……何に言って」

「兄弟仲良くしてて」
ちょっとアルを睨む。

肩を揺らして、声を殺してオーウェン殿下が笑っている。

「​───ル、ナ。2人を頼む、兄弟は仲良くしなきゃな」

殿下は、私の腕にシャウラを預けた。顔をのぞき込むと、こちらも真っ赤だ。泣き顔……はずかしかったのかな?

「精霊達に紹介するから、一緒にね。アリオトも一緒に行くよ……逃げないでね。シス兄様に護衛してもらうので、心配しないで下さいね」

途端に、パァァァァって言葉が似合う感じの満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。
うわぁ。可愛い。細いけど……ほっぺは、ぷにぷにだ。思わず頬を合わせてスリスリすると、キュッと首の所に抱きついてきた。

アルの子供の頃みたい~。

また、オーウェン殿下の笑い声が聞こえてきた。なんだろう?

「ふふ。ルナは、いつまでも綺麗で可愛いままだね。だからこそ、精霊達の加護があるんだろうね。シャウラを頼みたい。大切な息子なんだ」

大切な……息子。
今回は、母親であるメリル様は、これなかった。お腹に第3子を宿しているからだ。馬車の振動も身体に悪いから……本当は、シャウラについて来たかったよね。

「シャウラ……今日、アリオトと一緒に寝ようか?」

「え?アリオト……今日は帰らない?」
不安そうな目から、少し希望をのぞかせてきた。

「そうだよ、一緒にここ泊まるよ」

「本当?」
めちゃくちゃ可愛い。
うん……って頷く。またぎゅっとくっついてきた。足元にいるアリオトが、シャツの裾を引っ張った。

「待って……一緒に泊まっていいの?」

「ちゃんと、約束守れたらいいよ。僕は、加護付きだから。帰りは、送ってあげれるから。オーウェン殿下が先に帰っても大丈夫かな?」


「はい」
元気なアリオトが嬉しそうだ。

「平気!夜は、3で寝てもいい?」
シャウラが、恥ずかしそうに言う。


「​──4人だ」
アル……仕方ないなぁ。



オーウェン殿下が声を出して笑った。
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