116 / 129
最愛の君へ
②
しおりを挟む朝からドキドキしている。今日は、特別な日。
アルのお兄さん……オーウェン・グランデ殿下が王子を連れてフォレスト領までやって来る。子供が生まれた時はお祝いに行ったけれどその後は、お互いに中々会えないままだったんだ。
なぜドキドキしているかと言えば……病弱な第2王子をしばらくフォレストで預かって欲しいと言う理由からだ。
双子で生まれたため、第2王子は本当に小さかったんだ。何よりも、ルビーの宝石眼でアルに似ていた。可愛い……アルみたいだったのを思い出す。
その子が、僕達の所に来るんだ。
元気に成長するまでの間……数年かも知れないし、馴染めずにすぐ帰りたがるかも知れない。
オーウェン殿下曰く、アリオト第1王子は、健康そのものだそうだ。
シャウラ第2王子は一回り小さくて熱を出しやすいみたいだ。このフォレストの空気が癒しになって、元気に育ってくれたら嬉しい。
「君を利用して悪い。精霊の加護のある君の側なら、シャウラの命を護ってくれるのではと下心ありだよ。
このままでは、あまり生きられないんじゃないかと思ってね」
そう通信鏡から連絡が来たんだ。
アルと婚姻した事は、後悔はしていない。それでも、子供を産めない僕で良かったのかと時々考えるから。アルに似てるシャウラ王子がここに来てくれるのは、少し楽しみでもある。もちろん、不安もあるんだけどね。
だからアルが子供を本当に欲しくなった時は、第2夫人をちゃんと考えていくつもりだ。アルを大切に思ってくれる優しい人がいいなぁ。そして、アルの子なら……跡継ぎとして、僕達の子にしてもいいのかな?
ああ、駄目。やっぱりお母さんと引き離したくはない。その時はきちんと話あって、僕がアルとその人と子供達を支えよう。邪魔にならないようにしないとね。
気が早いかも知れないけど覚悟はしておかなきゃ。
今は、グランデからの大切な王子様を支える。懐いてくれたらいいけど、もうすぐ4歳くらいかな?
「────ルナ」
ドアのところにアルが来ていた。
「あ、ごめんなさい。気が付かなかった」
近寄ると、何故か縦抱きにされる。
「え?どうしたの?」
アルの顔を思わず覗き込むと、少し気まずそうな顔をする。
空いてる片手で頬をなぞられて、少し擽ったくて……身をよじると逆に胸の中に抱き込まれてしまう。
「何かあったの?」
ソファの方に移動して、降ろしてもらえるかと思ったら向かい合わせで太ももの上に乗せられたままだ。
「アル?」
親指で唇を触られて、感触を確かめているみたい。
「もう、こちらの領内に入ったようだ。後2時間もすれば、邸に着くと思う」
「そっか。無事に入ったんだね。良かったね」
あまり機嫌は良くないみたい……
「本当に何かあったの?」
少しため息をついて、考え込んでいる。
「あ、のさ。ルナは、子供が欲しかったりするのか?」
「───僕?」
「シャウラがこっちに来るの楽しみしてるだろ?」
「だって、アルのお兄さんの子だよ?1度しか会ってないけど、アルに似てて可愛かった。僕の大好きなルビーの瞳だったし……アルに……子供がいたらきっと、シャウラ王子見たいじゃないかと思ってて」
「アリオトは、兄上にそっくりみたいだな。シャウラは、黒髪に赤目だから俺っぽいのか……俺の瞳が好きだから、シャウラも好きってこと?」
「うん。アルの子みたいで……僕は産めないから、ね。アルがもしも、子供が欲しかったら正直に言ってね。ちゃんと、僕考えるから」
「は?何で俺が子供が欲しいってことになるんだ?」
「え?シャウラ王子を見たら欲しくなるんじゃないの?」
「────いらない」
「アル似の王子をみたら……」
「俺は、2人がいいんだ。俺の顔が好きだろ、ルナ。それで、シャウラが来たら……シャウラばっかり構うだろ?俺は、それが嫌なんだ」
は?まさかの……嫉妬!
「え?4歳位の病弱な男の子だよ?しかも、小さく生まれちゃったから3歳くらいにしか見えないって……可愛いと思うけど?どうして嫌なの?」
「兄上の子だ。人懐っこいはずだ。取り入るのが上手いんだ。すでに美少年なんて言われて、従者になりたいものは多い。だが、ルナを見たら……王子がくっ付いて離れないと、思う」
まさかの理由。
「両親と離れてこっちで預かる訳だし……構うとは思うけど。子供だよ?懐かれたら嬉しいしと思うけど。それだけだよ?」
「────夜一緒に寝たいって言われたら、同じベッドで寝るのか?」
「来たばっかりなら、不安だろうから、一緒に寝てもいいけど?いきなり懐くとも思えないけど」
「ルナは、自覚が足りない。その綺麗な顔に雰囲気、声……その身体。女神か妖精って言われているんだそ?絶対に邪魔をして来る」
アル……4歳児に嫉妬するの?
ふふふ。やだ。笑っちゃう。
引き寄せられてキスを交わす。何度も何度も触れて、そして深くキスをした。
「夜邪魔をされるのは、嫌だ。毎日シたいのに……」
真っ赤になってしまう。
毎日シたいって……ちょっと待ってよ。
「子供……欲しくならないの?」
「いらない。ルナを取られそうで嫌なんだ」
なんだ。そっか……第2夫人とか……考えなくていいのかな?
思わずアルを抱き締めた。
19
お気に入りに追加
5,768
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる