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その後のetc…
If クロスと猫とくじ引きと⑧
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腕の中のルナは、小刻みに震えている。
怖い思いをしただろう。抱きかかえる腕に力が入る。
「先生、僕は大丈夫です」
顔色は悪いままなのに、いつもいつも我慢して本心を言わない。
「──俺が、大丈夫じゃない」
きょとんとした顔をして、俺の顔を見ている。
「震えて、怖いままのくせに。大人の前で平気な振りをするな。心配でこっちがおかしくなりそうだ」
「先生ご、ごめんなさい」
全く、困らせてどうするんだ俺は。
「──なら、君が俺に甘えてくれたなら、許す」
「な、何を言っているのですか?」
「君には笑って欲しい。無理に作った笑顔じゃなくて、心からの笑顔がみたい。
ああもう。俺が嫌なんだ。分かるか?君が幸せになるのを見たい。でもそれは、他の奴に任せたくないって事だ。俺が君を護りたいんだ」
手当をするのに、自室に連れてきた。
ここは、特別な仕様なんだ。他の誰にも認知されない。精霊に愛されているルナの気配が探せないとなれば、あいつらが暴走しかけない。ならば、こちらから連絡するだけだ。
イアソだったな。
「イアソ殿、聞こえますか?」
ルナの治療を、開始する。傷に触れながら消していく。痛みを取り去り、その綺麗な肌を確認していく。
『──ああ。異界の君がルナを連れて行った様だね。ルナは、無事かい?』
「もちろんです。貴方と同様に大切に思っていますので、治療を済ませたところです」
『そうか。ルナが無事ならいいが。姿をくらますのは、あまり良くないな。皆心配で落ち着かないよ』
「それは、申し訳ありません。ですが、こちらの世界へ連れて来た責任もありますから、私にも月を幸せにしたい気持ちを分かっていただけますか?」
『なるほどね。ルナの時間は有限だから……君がルナをどう護りたいか見ておくよ。納得出来なければいつでも、我々はルナを取り返すからね。せめてフェルくらいは側につけさせて欲しいが、分かるかい?』
冥王に似ている。この威圧感。ゾクゾクするな。
「ええ。フェルもいますよ。大人しく籠の中です」
『そうか。まぁ、しばらく様子を見るよ。オリビィの大切な宝だと言っておく。もちろん、我々にとっても大切な子だよ』
「──分かりました」
会話が終わった。
「先生?イアソ様を知っているの?」
「いや、詳しくは分からないな。ただこの世界を護っている1人だろうね。今のところは、認めて貰えたから安心かな?」
「傷がなくなって、痛みも取れたので……そろそろ帰ります」
「まだ癒えてないだろ?服も変えよう」
シャツや着替えを用意して、さっさと脱がせる。
「あ、の?」
「血だらけ。ぼろぼろだろ?少し大きいが俺の服を着て」
白い肌が美しいな。見とれている場合ではない。
大きめのシャツからのぞく細い腕。細い首。腰ベルト紐も余る。
なんて細い。
果実水を用意して、飲む様に促した。飲んでいる時の小さな喉元が、やけに目に焼き付いてしまう。
青ざめていた時よりはマシになった。だが、顔色が元に戻りきらない。
このまま、帰したくないな。
「ルナ。一緒に横になるから少し寝よう」
「え?」
「顔色が悪いままなんだよ」
「いや、一緒に寝るって……え?」
「そのまま。添い寝だよ。2人なら、怖くないだろ?」
ベッドに連れて行き、胸に押し込める形で横になる。
「あ、あのぅ」
「人の体温は、ホッとすると思わないか?甘えていい。笑ったりしない。今は、休むんだ」
ルナ……素直に甘えてくれ。
背中をさすれば、少し驚いた様だ。でも、しばらくしてうとうとし始めた。
そうだ。俺に甘えればいいんだ
俺がお前を護るから、もう一人で苦しむんじゃない。
───俺の手を取って欲しい。
怖い思いをしただろう。抱きかかえる腕に力が入る。
「先生、僕は大丈夫です」
顔色は悪いままなのに、いつもいつも我慢して本心を言わない。
「──俺が、大丈夫じゃない」
きょとんとした顔をして、俺の顔を見ている。
「震えて、怖いままのくせに。大人の前で平気な振りをするな。心配でこっちがおかしくなりそうだ」
「先生ご、ごめんなさい」
全く、困らせてどうするんだ俺は。
「──なら、君が俺に甘えてくれたなら、許す」
「な、何を言っているのですか?」
「君には笑って欲しい。無理に作った笑顔じゃなくて、心からの笑顔がみたい。
ああもう。俺が嫌なんだ。分かるか?君が幸せになるのを見たい。でもそれは、他の奴に任せたくないって事だ。俺が君を護りたいんだ」
手当をするのに、自室に連れてきた。
ここは、特別な仕様なんだ。他の誰にも認知されない。精霊に愛されているルナの気配が探せないとなれば、あいつらが暴走しかけない。ならば、こちらから連絡するだけだ。
イアソだったな。
「イアソ殿、聞こえますか?」
ルナの治療を、開始する。傷に触れながら消していく。痛みを取り去り、その綺麗な肌を確認していく。
『──ああ。異界の君がルナを連れて行った様だね。ルナは、無事かい?』
「もちろんです。貴方と同様に大切に思っていますので、治療を済ませたところです」
『そうか。ルナが無事ならいいが。姿をくらますのは、あまり良くないな。皆心配で落ち着かないよ』
「それは、申し訳ありません。ですが、こちらの世界へ連れて来た責任もありますから、私にも月を幸せにしたい気持ちを分かっていただけますか?」
『なるほどね。ルナの時間は有限だから……君がルナをどう護りたいか見ておくよ。納得出来なければいつでも、我々はルナを取り返すからね。せめてフェルくらいは側につけさせて欲しいが、分かるかい?』
冥王に似ている。この威圧感。ゾクゾクするな。
「ええ。フェルもいますよ。大人しく籠の中です」
『そうか。まぁ、しばらく様子を見るよ。オリビィの大切な宝だと言っておく。もちろん、我々にとっても大切な子だよ』
「──分かりました」
会話が終わった。
「先生?イアソ様を知っているの?」
「いや、詳しくは分からないな。ただこの世界を護っている1人だろうね。今のところは、認めて貰えたから安心かな?」
「傷がなくなって、痛みも取れたので……そろそろ帰ります」
「まだ癒えてないだろ?服も変えよう」
シャツや着替えを用意して、さっさと脱がせる。
「あ、の?」
「血だらけ。ぼろぼろだろ?少し大きいが俺の服を着て」
白い肌が美しいな。見とれている場合ではない。
大きめのシャツからのぞく細い腕。細い首。腰ベルト紐も余る。
なんて細い。
果実水を用意して、飲む様に促した。飲んでいる時の小さな喉元が、やけに目に焼き付いてしまう。
青ざめていた時よりはマシになった。だが、顔色が元に戻りきらない。
このまま、帰したくないな。
「ルナ。一緒に横になるから少し寝よう」
「え?」
「顔色が悪いままなんだよ」
「いや、一緒に寝るって……え?」
「そのまま。添い寝だよ。2人なら、怖くないだろ?」
ベッドに連れて行き、胸に押し込める形で横になる。
「あ、あのぅ」
「人の体温は、ホッとすると思わないか?甘えていい。笑ったりしない。今は、休むんだ」
ルナ……素直に甘えてくれ。
背中をさすれば、少し驚いた様だ。でも、しばらくしてうとうとし始めた。
そうだ。俺に甘えればいいんだ
俺がお前を護るから、もう一人で苦しむんじゃない。
───俺の手を取って欲しい。
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