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その後のetc…
If クロスと猫とくじ引きと③
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寿命を全うした者。事故や病気で短い生涯を終えた者。理不尽に命を奪われたり、自ら命を絶った者。
許されざる悪行を犯した者は、魂を浄化されてしばらく転生を待たされている。その芽が出ないように。それでも、人は過ちを犯してしまうが……
ほとんどの者が、こちらへと導かれてくる。
あの子を見つけられるだろうか?
ゾロゾロと人型が一本道に集まって来る。大きさは微妙に違うけど──顔は分からないようにしている。因縁の相手などがいたら厄介だからだ。
真っ白な人型が、続いている。大丈夫きっと分かる。あの子の波長に俺なら気付けるはずだ。
ほら、もうすぐやって来る。
俺の近くまで来ている。呼びかけなければ、いけない。
「転生先は、クジ引きだよ!」
キツネという人間界の神使のハーフ面を付けて顔を隠す。
顔半分だけが見える仕様になっているのは、やはり印象を残さない為だ。無意識に執着をしてくる者が現れると業務執行の妨げになるから。人ならざる者として意識させる。
じっと、自分を見つめる視線に気がついた。
顔がないと思っているだろう?近づくと分かるんだ、君の顔が。
綺麗だな、君は。つい、触れたくなってしまう。
君の為にここにいるが、役割は果たさないといけない。
君の前にいる人型にクジを引く様に促して、来世へ繋がるドアへと導いていく。次々にドアへ消えて行く。
やっと、会えたね。
「やぁ!僕はやり直し人生のナビゲーターなんだよ。
さあさあ、君の番だよ!現世に戻るのも、異世界に転生するのも、性別が変わるのも、ぜ~んぶ運だよ!運!」
少しだけ、君の希望が叶うように魔力を乗せる。あの時猫を護ってくれてありがとう。
八角形の形をした筒から、一本の棒が出てきた。
異世界転生か……小説の世界だな。
皆に愛される主人公か。そうか、愛されたかったのだから……きっと君が幸せになれる世界だね。
良かっ───?
「──主人公」
と呟いた後。
顔が歪んだ。俺には表情が分かる。なんで、そんなに嫌そうなんだ?
言葉を失っている間に後ろの人型が、慌ててクジを引いた。こちらも何か落ち込んでいる。
一体どうしたんだ?とにかく、幸せになる世界へ送ってあげよう。
「おおっ!頑張れば沢山の人に愛されちゃう、異世界転生の定番だねぇ。おめでとう!」
全然嬉しく無さそうだ。
「ん?何か残念そうだねぇ?」
「モブで良かったのに」
俺と一緒になって君の後ろにいる人型が驚いて声をあげた。
「えっ?」
ただ、その表情に胸が締め付けられていく。一体何がそんなに君を苦しめているんだ?
その時、スッと何かが伸びてきた。その手が後ろの子のだと気づいた。
「だったら、僕と交換してよ!」そう言った。
あっという間に彼が持っていたクジ棒を取りあげる。
そして現れたドアの中へ走って消えて行ってしまった。
「おいっ!勝手に交換しちゃ駄目だよ!待てこら!」
嘘だろ?なんで、こんな事になるんだ。
俺は、君に──
「あっ、本当にモブだぁ!やった──!!!
ナビゲーターさん、ありがとう!
行って来ます!」
彼の前のドアが、開いた。
だめだ。それじゃあ、だめだ。
俺が幸せにしたいのは……
目の前が眩しい光に包まれて、消えてしまった。
「あーあ。勝手な事したら、
不具合おきちまうだろーが。しゃーねぇなぁ」
くそ。
俺の落ち度だ。追いかけないといけない。
他のナビゲーターを見つけると仕事を押し付けた。絶対にアイツは許さない。
やはり、俺が護りたい。
「猫」
名を呼び事情を伝えた。
「しばらく、代わりを頼むな」
そう言って追いかけることにした。
許されざる悪行を犯した者は、魂を浄化されてしばらく転生を待たされている。その芽が出ないように。それでも、人は過ちを犯してしまうが……
ほとんどの者が、こちらへと導かれてくる。
あの子を見つけられるだろうか?
ゾロゾロと人型が一本道に集まって来る。大きさは微妙に違うけど──顔は分からないようにしている。因縁の相手などがいたら厄介だからだ。
真っ白な人型が、続いている。大丈夫きっと分かる。あの子の波長に俺なら気付けるはずだ。
ほら、もうすぐやって来る。
俺の近くまで来ている。呼びかけなければ、いけない。
「転生先は、クジ引きだよ!」
キツネという人間界の神使のハーフ面を付けて顔を隠す。
顔半分だけが見える仕様になっているのは、やはり印象を残さない為だ。無意識に執着をしてくる者が現れると業務執行の妨げになるから。人ならざる者として意識させる。
じっと、自分を見つめる視線に気がついた。
顔がないと思っているだろう?近づくと分かるんだ、君の顔が。
綺麗だな、君は。つい、触れたくなってしまう。
君の為にここにいるが、役割は果たさないといけない。
君の前にいる人型にクジを引く様に促して、来世へ繋がるドアへと導いていく。次々にドアへ消えて行く。
やっと、会えたね。
「やぁ!僕はやり直し人生のナビゲーターなんだよ。
さあさあ、君の番だよ!現世に戻るのも、異世界に転生するのも、性別が変わるのも、ぜ~んぶ運だよ!運!」
少しだけ、君の希望が叶うように魔力を乗せる。あの時猫を護ってくれてありがとう。
八角形の形をした筒から、一本の棒が出てきた。
異世界転生か……小説の世界だな。
皆に愛される主人公か。そうか、愛されたかったのだから……きっと君が幸せになれる世界だね。
良かっ───?
「──主人公」
と呟いた後。
顔が歪んだ。俺には表情が分かる。なんで、そんなに嫌そうなんだ?
言葉を失っている間に後ろの人型が、慌ててクジを引いた。こちらも何か落ち込んでいる。
一体どうしたんだ?とにかく、幸せになる世界へ送ってあげよう。
「おおっ!頑張れば沢山の人に愛されちゃう、異世界転生の定番だねぇ。おめでとう!」
全然嬉しく無さそうだ。
「ん?何か残念そうだねぇ?」
「モブで良かったのに」
俺と一緒になって君の後ろにいる人型が驚いて声をあげた。
「えっ?」
ただ、その表情に胸が締め付けられていく。一体何がそんなに君を苦しめているんだ?
その時、スッと何かが伸びてきた。その手が後ろの子のだと気づいた。
「だったら、僕と交換してよ!」そう言った。
あっという間に彼が持っていたクジ棒を取りあげる。
そして現れたドアの中へ走って消えて行ってしまった。
「おいっ!勝手に交換しちゃ駄目だよ!待てこら!」
嘘だろ?なんで、こんな事になるんだ。
俺は、君に──
「あっ、本当にモブだぁ!やった──!!!
ナビゲーターさん、ありがとう!
行って来ます!」
彼の前のドアが、開いた。
だめだ。それじゃあ、だめだ。
俺が幸せにしたいのは……
目の前が眩しい光に包まれて、消えてしまった。
「あーあ。勝手な事したら、
不具合おきちまうだろーが。しゃーねぇなぁ」
くそ。
俺の落ち度だ。追いかけないといけない。
他のナビゲーターを見つけると仕事を押し付けた。絶対にアイツは許さない。
やはり、俺が護りたい。
「猫」
名を呼び事情を伝えた。
「しばらく、代わりを頼むな」
そう言って追いかけることにした。
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