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その後のetc…
If クロスと猫とくじ引きと①
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あの日。
君と出逢い。
そして目の前で、一瞬にして散ってしまったんだ。
「お前、またフラフラ離れていくんじゃない」
『ニャーニャニャ♪』
「人間界だと能力が下がるだろ?傍にくっ付いておけって」
本当に学習しない奴だな。人間界なんて、空気が澱んでいるから好きじゃない。皆多かれ少なかれ、毒を吐き出して生きている。
『ニャニャニャ~ン♪』
「って、言った傍から」
駆け出していく。
冥界に少し人間界が騒がしいと連絡が来て、こちらに呼び出された。
案件は─────魂の消失。
人は、生まれ変わる機会を与えられているのだが、扉の部屋に行かずに消失する魂が稀に出てくる。もちろん、回収班が動いている。それなのに、ここ数十年の間に少しづつ増えているとか。
「神のイタズラか?時空の歪みか?扉の部屋を通過しない者は存在が危険なものになりやすいからな。全く、冥王も面倒事は全部俺に回すんだからな……たまったもんじゃない」
俺より敏感な猫が走り出すってことは……近くでそれは起きるのだろうか?
俺の姿は認識されない。
いや、認識しても景色と同化して通り過ぎた瞬間から記憶から消されていくから、世界を歪ませることはない。
トン、トン、トンと軽く跳ねつつ、後を追っていく。
なにかが見えた。
どす黒い何かが溢れ出てくる。
「一体なんだこれは」
禍々しい、人ではない。既に人の形は消え魂が汚れきっている。
「おい、ゆっくり下がれ。絶対触るな」
ジワジワと、気づかれないように下がらせるつもりだったのに。
俺のドジな猫は、空き缶を蹴飛ばした。
カランカランと音が鳴り、黒霧が一瞬ググッと縮んだ。
だが、次の瞬間に大きく膨張し猫に襲いかかる。
不味い。
「逃げろ!」
その時、視界に影が見えた。
猫を抱きかかえて、転がる。
そこに、自動車が突っ込んできた。全てがスローモーションで起きているように見えた。
だが実際は、あっという間だ。
何が起きているんだ?
信号のない交差点、黒い禍々しい霧。
その黒霧が、その少年により霧散した。
大切な猫は、それに触れなかったため、無事のようだ。
それに、いつの間にか空気は正常になっている。
この子の力か?
人間と関わってはいけない。
だが、猫を護ってくれたのだ。
「大丈夫か?」
傍により膝をつき彼を抱き起こす。
だが、だめだ。
手遅れだ。血が溢れてきて止まらない。この出血量では、助からない。
あの霧が原因なら、手を貸してもいいはずだ。
だが、交通事故の外傷だ。
ふっと、目が開く。
「猫ちゃん、ぶじ……ですか?」
なんて、綺麗な少年なんだろう。
「────ああ。君のおかげで無事だよ。無茶をし過ぎだ。救急車が、もうすぐ来るから…頑張れ」
無理だ。間に合わない。だが、意識が途切れるまでは、せめて居てやりたい。
「家族に連絡しよう。教えてくれるかい?」
優しく優しく微笑んだ彼が…
「僕は、ひとり……だか、ら。いなくなっても、誰も気にしないから。心配、いらない。痛くないけど、寒いね?死んじゃうのか、な?次は……お母さんに、愛されたいなぁ」
事故とは関係ないような、アザや傷が見え隠れする。
「母親?」
「────ずっと、嫌われてたの。いなくなったらきっと、喜んでくれるよね?
寒い。ごめん、なさい。血がついちゃうね、でも、もう少しだけ、手をつない、で。お願い──」
綺麗な涙が流れ落ちた。
握りしめた手から力が抜ける。
こんな、綺麗な魂がこんな最期なんてだめだ。
君が幸せになるために……俺は君の力になりたい。
君と出逢い。
そして目の前で、一瞬にして散ってしまったんだ。
「お前、またフラフラ離れていくんじゃない」
『ニャーニャニャ♪』
「人間界だと能力が下がるだろ?傍にくっ付いておけって」
本当に学習しない奴だな。人間界なんて、空気が澱んでいるから好きじゃない。皆多かれ少なかれ、毒を吐き出して生きている。
『ニャニャニャ~ン♪』
「って、言った傍から」
駆け出していく。
冥界に少し人間界が騒がしいと連絡が来て、こちらに呼び出された。
案件は─────魂の消失。
人は、生まれ変わる機会を与えられているのだが、扉の部屋に行かずに消失する魂が稀に出てくる。もちろん、回収班が動いている。それなのに、ここ数十年の間に少しづつ増えているとか。
「神のイタズラか?時空の歪みか?扉の部屋を通過しない者は存在が危険なものになりやすいからな。全く、冥王も面倒事は全部俺に回すんだからな……たまったもんじゃない」
俺より敏感な猫が走り出すってことは……近くでそれは起きるのだろうか?
俺の姿は認識されない。
いや、認識しても景色と同化して通り過ぎた瞬間から記憶から消されていくから、世界を歪ませることはない。
トン、トン、トンと軽く跳ねつつ、後を追っていく。
なにかが見えた。
どす黒い何かが溢れ出てくる。
「一体なんだこれは」
禍々しい、人ではない。既に人の形は消え魂が汚れきっている。
「おい、ゆっくり下がれ。絶対触るな」
ジワジワと、気づかれないように下がらせるつもりだったのに。
俺のドジな猫は、空き缶を蹴飛ばした。
カランカランと音が鳴り、黒霧が一瞬ググッと縮んだ。
だが、次の瞬間に大きく膨張し猫に襲いかかる。
不味い。
「逃げろ!」
その時、視界に影が見えた。
猫を抱きかかえて、転がる。
そこに、自動車が突っ込んできた。全てがスローモーションで起きているように見えた。
だが実際は、あっという間だ。
何が起きているんだ?
信号のない交差点、黒い禍々しい霧。
その黒霧が、その少年により霧散した。
大切な猫は、それに触れなかったため、無事のようだ。
それに、いつの間にか空気は正常になっている。
この子の力か?
人間と関わってはいけない。
だが、猫を護ってくれたのだ。
「大丈夫か?」
傍により膝をつき彼を抱き起こす。
だが、だめだ。
手遅れだ。血が溢れてきて止まらない。この出血量では、助からない。
あの霧が原因なら、手を貸してもいいはずだ。
だが、交通事故の外傷だ。
ふっと、目が開く。
「猫ちゃん、ぶじ……ですか?」
なんて、綺麗な少年なんだろう。
「────ああ。君のおかげで無事だよ。無茶をし過ぎだ。救急車が、もうすぐ来るから…頑張れ」
無理だ。間に合わない。だが、意識が途切れるまでは、せめて居てやりたい。
「家族に連絡しよう。教えてくれるかい?」
優しく優しく微笑んだ彼が…
「僕は、ひとり……だか、ら。いなくなっても、誰も気にしないから。心配、いらない。痛くないけど、寒いね?死んじゃうのか、な?次は……お母さんに、愛されたいなぁ」
事故とは関係ないような、アザや傷が見え隠れする。
「母親?」
「────ずっと、嫌われてたの。いなくなったらきっと、喜んでくれるよね?
寒い。ごめん、なさい。血がついちゃうね、でも、もう少しだけ、手をつない、で。お願い──」
綺麗な涙が流れ落ちた。
握りしめた手から力が抜ける。
こんな、綺麗な魂がこんな最期なんてだめだ。
君が幸せになるために……俺は君の力になりたい。
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