【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
97 / 129
その後のetc…

If 氷の瞳②

しおりを挟む
子供の体に戻ったせいなのか、それともただ緊張しているだけなのか?

婚約を保留にしてきたのは、ルナの父親のセス様だ。母親のオリビィ様に似ているルナを離したくないのも、その理由も知っている。

家族ぐるみで付き合いもあり、領が隣接している為に何かと力を合わせてきた。関係を強固にする意味合いもあり、身分も問題ない。
何よりルナは、懐いてくれている。



フォレスト領へ行くことは、いつもは、楽しみでしかなかったのにな。
婚約で縛ったとして、心はどうなのだろう?
アルに会えば……心は惹かれて行くのでないだろうか?


アルは、本当に良い奴なんだ。

学園での振舞いも、ルナへの想いも真っ直ぐだった。
レグルス様も、ルナをどれだけ大切にしてきたか……




何を今更、迷っている。

他の2人の気持ちを今更汲み取って……どうする?

精霊は悪意を嫌う。
イアソ様は、全て見ているはずだ。

なら、これが夢ではないのなら。

俺のやり直しを組んでくれたのだろうか?
一生騎士としてルナに尽くすと決めた。あの世界から、隠さず愛を伝えて良いと許された世界なのかもしれない。


ルナ。

お前が、何度もトラウマで泣くのを無くしてやりたい。

自己肯定感が低いお前が、どれだけ皆に愛されているか教え込みたい。

何より、俺が。
ルナを愛していることを信じて欲しい。



「やっと、着いた」

邸の中へ案内される。

本当に、戻ったんだな。セス様も若い。

「シリウス」

セス様に声をかけられた。
また、反対されるのだろうか?

「​───はい」

「今日は、来てくれてありがとう。騎士としての訓練も楽しみだが、君がルナの心を護ってくれると嬉しいよ。ただ……」

ただ?

「どうかしたのですか?」

セス様が、少し困った顔をした。

「婚約の話をした後に、ルナが、部屋にこもっているんだ」

部屋に?

「それは、お、れ……私との婚約が嫌だと言うことでしょうか?」

「そう言う感じではないのだが…とりあえず、部屋に行ってみてくれ。まだ幼いから、もう少し先にしても構わないんだが」

もう少し先?
ダメだ。延ばす訳にはいかない。

「私が、説明して来ます」

一礼して、ルナの部屋に向かう。




ルナ?
俺じゃ駄目か?

走るなんて駄目だ。でも、早くルナに会いたいんだ。
小さな体が、もどかしい。

勝手知ったる邸だ。
何度も、一緒に過ごしてきた。

ルナ。

部屋の前に護衛がいる。

「どうされましたか?シリウス様」

「許可をもらった。中へ入りたい。ルナに声をかけさせてくれ」

「はい」
護衛のユーリだったかな?ドアから少し離れてくれた。



「ルナ。俺だよ。シリウスだ」


室内から、ガタンと音がした。
寝てはいないみたいだ。


「入ってもいいか?」


「あ、の。は、はい」
ガタガタと音がして、1度静かになった。

大きく深呼吸でもしたのか?息を吐いるみたいだ。それから、パンッと乾いた音がする。何か、叩いた?

ドアが少しだけ開いた。
顔をひょこっと見せる。頬が少し赤い。

さっきの音って。

「頬でも叩いたの?」

ビクリと肩を震わせて、少しだけ俯いた。

「部屋に入ってもいいか?ユーリも中へ入れば、2人だけじゃないよ?それか、ドアを少し開けておこうか?」

顔を上げて困ったように笑う。
それは、それで可愛いが。
今は、俺の気持ちを伝えなければならない。

「ルナ。ちゃんと話そう」

「はい」

「お茶を頼んでいいですか?」

護衛のユーリに伝え、中へと入った。ソファへと2人で向かう。


対面では無く、隣に座る。お茶も少しぬるめにしてもらった。


ドアを少しだけ開けて、ルナが不安にならないように手を握った。


「セス様から、話は聞いた?」


「は、はい」


「ルナ。本気なんだ。俺は、ずっと一緒にいたいんだ」

「で、でも。僕は男の子です。後継とか……色々問題があるって皆が言ってました」

「それは、ルナが本気で考えてくれた結果心配してくれたってことだよね?」

「だ、だって!シス兄様と婚約って。そんなの、兄様が可哀想だ。僕何の役にも立たないもの。一緒にいても、何にも出来ない」

大きな瞳に涙がたまっていく。

思わずギュッと抱き寄せた。
可愛くてたまらない。この子を俺が護るんだ。誰にも文句など言わせない。

魔術も剣も、知識も増やす。全部ルナの為になるのなら努力なんて惜しまない。

「ルナ。好きな人の為なら何だって出来るようになるんだ。ルナが1人で泣かなくていいように俺は強くなるよ」

こんなに、小さいのに。

心はボロボロになって、自身の存在を否定し続けている。


「俺が強くなるのに、ルナが必要なんだよ。大好きなんだ。他の誰も要らない。ルナが手に入らないのなら一生1人でいいんだ」


「そんな、悲しいこと言わないで。1人は寂しいから。1人は嫌だよ」

「なら、2人で未来を進もう。泣きたい時は、1人で泣くな。俺を、俺だけを見て」

6歳のルナに……分かってもらえるだろうか?

「俺だけを信じて。俺は、ルナしか要らないんだ」


​────愛してる。
今までも、これからも。
他の誰も愛したりしない。

ルナは、俺の全てだ。

ルナを抱きしめた。















しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...