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その後のetc…
If 氷の瞳②
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子供の体に戻ったせいなのか、それともただ緊張しているだけなのか?
婚約を保留にしてきたのは、ルナの父親のセス様だ。母親のオリビィ様に似ているルナを離したくないのも、その理由も知っている。
家族ぐるみで付き合いもあり、領が隣接している為に何かと力を合わせてきた。関係を強固にする意味合いもあり、身分も問題ない。
何よりルナは、懐いてくれている。
フォレスト領へ行くことは、いつもは、楽しみでしかなかったのにな。
婚約で縛ったとして、心はどうなのだろう?
アルに会えば……心は惹かれて行くのでないだろうか?
アルは、本当に良い奴なんだ。
学園での振舞いも、ルナへの想いも真っ直ぐだった。
レグルス様も、ルナをどれだけ大切にしてきたか……
何を今更、迷っている。
他の2人の気持ちを今更汲み取って……どうする?
精霊は悪意を嫌う。
イアソ様は、全て見ているはずだ。
なら、これが夢ではないのなら。
俺のやり直しを組んでくれたのだろうか?
一生騎士としてルナに尽くすと決めた。あの世界から、隠さず愛を伝えて良いと許された世界なのかもしれない。
ルナ。
お前が、何度もトラウマで泣くのを無くしてやりたい。
自己肯定感が低いお前が、どれだけ皆に愛されているか教え込みたい。
何より、俺が。
ルナを愛していることを信じて欲しい。
「やっと、着いた」
邸の中へ案内される。
本当に、戻ったんだな。セス様も若い。
「シリウス」
セス様に声をかけられた。
また、反対されるのだろうか?
「───はい」
「今日は、来てくれてありがとう。騎士としての訓練も楽しみだが、君がルナの心を護ってくれると嬉しいよ。ただ……」
ただ?
「どうかしたのですか?」
セス様が、少し困った顔をした。
「婚約の話をした後に、ルナが、部屋にこもっているんだ」
部屋に?
「それは、お、れ……私との婚約が嫌だと言うことでしょうか?」
「そう言う感じではないのだが…とりあえず、部屋に行ってみてくれ。まだ幼いから、もう少し先にしても構わないんだが」
もう少し先?
ダメだ。延ばす訳にはいかない。
「私が、説明して来ます」
一礼して、ルナの部屋に向かう。
ルナ?
俺じゃ駄目か?
走るなんて駄目だ。でも、早くルナに会いたいんだ。
小さな体が、もどかしい。
勝手知ったる邸だ。
何度も、一緒に過ごしてきた。
ルナ。
部屋の前に護衛がいる。
「どうされましたか?シリウス様」
「許可をもらった。中へ入りたい。ルナに声をかけさせてくれ」
「はい」
護衛のユーリだったかな?ドアから少し離れてくれた。
「ルナ。俺だよ。シリウスだ」
室内から、ガタンと音がした。
寝てはいないみたいだ。
「入ってもいいか?」
「あ、の。は、はい」
ガタガタと音がして、1度静かになった。
大きく深呼吸でもしたのか?息を吐いるみたいだ。それから、パンッと乾いた音がする。何か、叩いた?
ドアが少しだけ開いた。
顔をひょこっと見せる。頬が少し赤い。
さっきの音って。
「頬でも叩いたの?」
ビクリと肩を震わせて、少しだけ俯いた。
「部屋に入ってもいいか?ユーリも中へ入れば、2人だけじゃないよ?それか、ドアを少し開けておこうか?」
顔を上げて困ったように笑う。
それは、それで可愛いが。
今は、俺の気持ちを伝えなければならない。
「ルナ。ちゃんと話そう」
「はい」
「お茶を頼んでいいですか?」
護衛のユーリに伝え、中へと入った。ソファへと2人で向かう。
対面では無く、隣に座る。お茶も少しぬるめにしてもらった。
ドアを少しだけ開けて、ルナが不安にならないように手を握った。
「セス様から、話は聞いた?」
「は、はい」
「ルナ。本気なんだ。俺は、ずっと一緒にいたいんだ」
「で、でも。僕は男の子です。後継とか……色々問題があるって皆が言ってました」
「それは、ルナが本気で考えてくれた結果心配してくれたってことだよね?」
「だ、だって!シス兄様と婚約って。そんなの、兄様が可哀想だ。僕何の役にも立たないもの。一緒にいても、何にも出来ない」
大きな瞳に涙がたまっていく。
思わずギュッと抱き寄せた。
可愛くてたまらない。この子を俺が護るんだ。誰にも文句など言わせない。
魔術も剣も、知識も増やす。全部ルナの為になるのなら努力なんて惜しまない。
「ルナ。好きな人の為なら何だって出来るようになるんだ。ルナが1人で泣かなくていいように俺は強くなるよ」
こんなに、小さいのに。
心はボロボロになって、自身の存在を否定し続けている。
「俺が強くなるのに、ルナが必要なんだよ。大好きなんだ。他の誰も要らない。ルナが手に入らないのなら一生1人でいいんだ」
「そんな、悲しいこと言わないで。1人は寂しいから。1人は嫌だよ」
「なら、2人で未来を進もう。泣きたい時は、1人で泣くな。俺を、俺だけを見て」
6歳のルナに……分かってもらえるだろうか?
「俺だけを信じて。俺は、ルナしか要らないんだ」
────愛してる。
今までも、これからも。
他の誰も愛したりしない。
ルナは、俺の全てだ。
ルナを抱きしめた。
婚約を保留にしてきたのは、ルナの父親のセス様だ。母親のオリビィ様に似ているルナを離したくないのも、その理由も知っている。
家族ぐるみで付き合いもあり、領が隣接している為に何かと力を合わせてきた。関係を強固にする意味合いもあり、身分も問題ない。
何よりルナは、懐いてくれている。
フォレスト領へ行くことは、いつもは、楽しみでしかなかったのにな。
婚約で縛ったとして、心はどうなのだろう?
アルに会えば……心は惹かれて行くのでないだろうか?
アルは、本当に良い奴なんだ。
学園での振舞いも、ルナへの想いも真っ直ぐだった。
レグルス様も、ルナをどれだけ大切にしてきたか……
何を今更、迷っている。
他の2人の気持ちを今更汲み取って……どうする?
精霊は悪意を嫌う。
イアソ様は、全て見ているはずだ。
なら、これが夢ではないのなら。
俺のやり直しを組んでくれたのだろうか?
一生騎士としてルナに尽くすと決めた。あの世界から、隠さず愛を伝えて良いと許された世界なのかもしれない。
ルナ。
お前が、何度もトラウマで泣くのを無くしてやりたい。
自己肯定感が低いお前が、どれだけ皆に愛されているか教え込みたい。
何より、俺が。
ルナを愛していることを信じて欲しい。
「やっと、着いた」
邸の中へ案内される。
本当に、戻ったんだな。セス様も若い。
「シリウス」
セス様に声をかけられた。
また、反対されるのだろうか?
「───はい」
「今日は、来てくれてありがとう。騎士としての訓練も楽しみだが、君がルナの心を護ってくれると嬉しいよ。ただ……」
ただ?
「どうかしたのですか?」
セス様が、少し困った顔をした。
「婚約の話をした後に、ルナが、部屋にこもっているんだ」
部屋に?
「それは、お、れ……私との婚約が嫌だと言うことでしょうか?」
「そう言う感じではないのだが…とりあえず、部屋に行ってみてくれ。まだ幼いから、もう少し先にしても構わないんだが」
もう少し先?
ダメだ。延ばす訳にはいかない。
「私が、説明して来ます」
一礼して、ルナの部屋に向かう。
ルナ?
俺じゃ駄目か?
走るなんて駄目だ。でも、早くルナに会いたいんだ。
小さな体が、もどかしい。
勝手知ったる邸だ。
何度も、一緒に過ごしてきた。
ルナ。
部屋の前に護衛がいる。
「どうされましたか?シリウス様」
「許可をもらった。中へ入りたい。ルナに声をかけさせてくれ」
「はい」
護衛のユーリだったかな?ドアから少し離れてくれた。
「ルナ。俺だよ。シリウスだ」
室内から、ガタンと音がした。
寝てはいないみたいだ。
「入ってもいいか?」
「あ、の。は、はい」
ガタガタと音がして、1度静かになった。
大きく深呼吸でもしたのか?息を吐いるみたいだ。それから、パンッと乾いた音がする。何か、叩いた?
ドアが少しだけ開いた。
顔をひょこっと見せる。頬が少し赤い。
さっきの音って。
「頬でも叩いたの?」
ビクリと肩を震わせて、少しだけ俯いた。
「部屋に入ってもいいか?ユーリも中へ入れば、2人だけじゃないよ?それか、ドアを少し開けておこうか?」
顔を上げて困ったように笑う。
それは、それで可愛いが。
今は、俺の気持ちを伝えなければならない。
「ルナ。ちゃんと話そう」
「はい」
「お茶を頼んでいいですか?」
護衛のユーリに伝え、中へと入った。ソファへと2人で向かう。
対面では無く、隣に座る。お茶も少しぬるめにしてもらった。
ドアを少しだけ開けて、ルナが不安にならないように手を握った。
「セス様から、話は聞いた?」
「は、はい」
「ルナ。本気なんだ。俺は、ずっと一緒にいたいんだ」
「で、でも。僕は男の子です。後継とか……色々問題があるって皆が言ってました」
「それは、ルナが本気で考えてくれた結果心配してくれたってことだよね?」
「だ、だって!シス兄様と婚約って。そんなの、兄様が可哀想だ。僕何の役にも立たないもの。一緒にいても、何にも出来ない」
大きな瞳に涙がたまっていく。
思わずギュッと抱き寄せた。
可愛くてたまらない。この子を俺が護るんだ。誰にも文句など言わせない。
魔術も剣も、知識も増やす。全部ルナの為になるのなら努力なんて惜しまない。
「ルナ。好きな人の為なら何だって出来るようになるんだ。ルナが1人で泣かなくていいように俺は強くなるよ」
こんなに、小さいのに。
心はボロボロになって、自身の存在を否定し続けている。
「俺が強くなるのに、ルナが必要なんだよ。大好きなんだ。他の誰も要らない。ルナが手に入らないのなら一生1人でいいんだ」
「そんな、悲しいこと言わないで。1人は寂しいから。1人は嫌だよ」
「なら、2人で未来を進もう。泣きたい時は、1人で泣くな。俺を、俺だけを見て」
6歳のルナに……分かってもらえるだろうか?
「俺だけを信じて。俺は、ルナしか要らないんだ」
────愛してる。
今までも、これからも。
他の誰も愛したりしない。
ルナは、俺の全てだ。
ルナを抱きしめた。
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