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番外編☆
ある日の出来事 スピカ①
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シリウス様が、王命でルナ様付きの護衛騎士となった。
それ、俺がやりたかったなぁ。
ルナ様可愛いし。
フォレストの人達優しいし。
なんて現実逃避したくなるくらい今は忙しい。
カストル様は、宰相の息子の立場として知識を得る事に貪欲。この人は、チートじゃない。本当に努力の人だった。
睡眠時間を削り、何冊も本を読み続ける。
前世では漫画がメインでこんな分厚い専門書みたいな絵のない本は、読んだことがなかったよ。重いし。
いずれ、国の要になる人だから本当に頑張っている。
この人の努力を見て、それを支えるべく勉強はしていきたい。とりあえず主人公チートは少しはあるみたいで前世よりは覚えがいいと思う。それだけは、ほんっとに救いだった。
仕方ないことなんだけどカストル様の執務時間も長くて、触れ合いも最近はほとんどない。
疲れているんだろうなぁ。
つい、寂しいなって言ってしまった。だけど次の休みまで待つ様に言われた。
その休みが合わなくて、すれ違ったままだ。
それに課題が増えるし──魔術師団長……義父のギル様からの訓練時間の拘束が長い。
跡継ぎ君はまだ幼い。だから、なるべく多くの魔術を習ってギル様に何かあった場合に備え指導出来るレベルになって欲しいと言われている。いくら若くてもきついものは、きつい。
毎日、ヘロヘロなんだけど。
特に今日は疲れてしまって、お風呂を堪能する事にしたんだ。
前世の記憶や孤児院育ちの事もあり、侍女さん達に裸を見られるのは嫌だからお風呂は1人の時が多い。
忙しくて最近はクリーンで終わらせてたけど、今日はとにかく1人でゆっくりと湯船に浸かりたかった。
疲れてたし、長風呂もしてた。
のぼせてきた気もする。
なんか、ぼーっとしてきたんだけど…身体が上手く動かせない。
不味いって思った時、誰かが抱きかかえてくれた。
「あ、カストルさま?」
素っ裸の俺を横抱きにしてるからまる見えだ。思わず手で隠そうとしたら、「動くな、落とすだろうが」
ちょっと、怒ってる?
「ごめんなさい」
「風呂で溺れたらどうするんだ。次から侍女を付ける」
「や、だ。裸見られたく、ない」
「なら、遅くていいなら、俺に声かけて。溺れられたら困る」
「忙しいんでしょう?1人で……大丈夫。今日は疲れてたから偶々だよ」
ふわって温かい風が吹いて、身体も髪の毛も一瞬で乾かされた。
そのまま、寝室に連れていかれる。
「ありがとう、カストル様。着替えたら、先に寝るね。カストル様も疲れてるだろうから早くお風呂入って寝た方が良いよ」
もそもそと、寝衣を取りにベッドから這い出そうと動いた所を戻されて抱き込まれた。
「カストル様?あの、裸では寝たく無いので」
「明日は、2人とも休みだ」
何を言っているんだろう。従者にも言われたし、ちゃんと確認もしている。
「そんなはずは」
「レグルス殿下に怒られた。ちゃんと大切な人を大切にしないと取り返しがつかなくなると。どうやら魔術師団長は、お前の出来が良いからと、過分に教え込んでいるらしい。殿下に怒られてたよ。それで、3日ほど休みをもらったんだ」
「ほんと、に?」
「俺も焦ってて、寂しい思いをさせて、悪かった。
早く父上に追いついて、もう少し余裕が欲しかった。お前を手助けしたかったから」
そっか、明日休みなら早起きしなくていいんだ。
ゆっくり眠れる。
「そっか。じゃあ、おやすみなさい」
俺を見つめてたカストル様が──
「いや待て、スピカ…今日は、触れたい」
そう言って、押し倒してきた。
休みは、分かるけど
でも、今日めちゃくちゃ疲れてて眠い……
ちょっと、考える。
カストル様だって、休ませないと……顔色、あんまり良くないし。
「──疲れてるから、今日はやだ」
ちょっと驚いた顔をする。
明日ゆっくりして……夜なら良いかなぁ。
それに、本当に眠くて──
ごめんなさい。
「分かった。スピカ…明日だな。このまま寝よう」
そう言って抱きしめられる。
「お風呂入ったら?」
「クリーンでいい」
いや、だから裸のままは、ちょっと落ち着かない。
ガッチリとホールドされている。
ああ、もう──仕方ないなぁ。
疲れてたし、すぐに寝たんだと思う。
カーテンから少し光が差し込んで来ていて、朝?
なんて、ぼんやりしていたら。
何やら、身体を触られているのが分かる。頸部分をキスされている。
くすぐったい。
「え?何?」
胸と腹辺りにあった手がスルスルと下に降りてくる。
「あ、朝から?!」
「明日なら良いって言った」
「ちょ、まだ早朝だよ?」
それに、お腹も空いてて。
「もう今日になって、6時間は過ぎている」
「そうだけど──」
「昨日我慢したよ。それに、反応してるよスピカの。可愛い。
今から、駄目か?」
え、と。
もう少しゆっくりした方が、良くない?
分かるけど、待って。なんか、お腹が空いているし、ちょっとイラッときてしまった。
「待っ、ててば。
俺が、触れて欲しい時は断ったよね?」
思ったより大きな声が出た。
ジタバタ暴れて、カストル様のホールドが緩む。
「仕事が忙しいから、しばらくしないって言われて我慢してきたし──久々の連休なら、昼間は出かけたいよ。俺、ルナ様の所に1人で遊びに行ってくる!!!
そんなにベッドでごろごろしたいなら1人でごゆっくりどーぞ!」
3日もあるなら……
ちゃんと食べて、気分転換とか、外出とか息抜きしてからが良い。
俺は薄手のブランケットを身体に巻き付けて、自室に向かう。
「スピカ!待って!」
寝室にカストル様を残して、手早く着替える。部屋に結界を張り、《ルナ様、あ、会いたいです》と伝えると、フェルが現れた。
ルナ様の優しい顔が頭に浮かぶ。
『スピカ、訓練とか色々困ったり、息抜きしたい時に名前呼んでくれたら精霊を寄越すからね。フォレストに遊びにいつでもおいで』
ギュッとフェルを抱きしめる。
一瞬で、フォレストのルナ様の家に着く。
「いらっしゃい」
ルナ様が笑う。
その笑顔を見て、泣きたくなった。
それ、俺がやりたかったなぁ。
ルナ様可愛いし。
フォレストの人達優しいし。
なんて現実逃避したくなるくらい今は忙しい。
カストル様は、宰相の息子の立場として知識を得る事に貪欲。この人は、チートじゃない。本当に努力の人だった。
睡眠時間を削り、何冊も本を読み続ける。
前世では漫画がメインでこんな分厚い専門書みたいな絵のない本は、読んだことがなかったよ。重いし。
いずれ、国の要になる人だから本当に頑張っている。
この人の努力を見て、それを支えるべく勉強はしていきたい。とりあえず主人公チートは少しはあるみたいで前世よりは覚えがいいと思う。それだけは、ほんっとに救いだった。
仕方ないことなんだけどカストル様の執務時間も長くて、触れ合いも最近はほとんどない。
疲れているんだろうなぁ。
つい、寂しいなって言ってしまった。だけど次の休みまで待つ様に言われた。
その休みが合わなくて、すれ違ったままだ。
それに課題が増えるし──魔術師団長……義父のギル様からの訓練時間の拘束が長い。
跡継ぎ君はまだ幼い。だから、なるべく多くの魔術を習ってギル様に何かあった場合に備え指導出来るレベルになって欲しいと言われている。いくら若くてもきついものは、きつい。
毎日、ヘロヘロなんだけど。
特に今日は疲れてしまって、お風呂を堪能する事にしたんだ。
前世の記憶や孤児院育ちの事もあり、侍女さん達に裸を見られるのは嫌だからお風呂は1人の時が多い。
忙しくて最近はクリーンで終わらせてたけど、今日はとにかく1人でゆっくりと湯船に浸かりたかった。
疲れてたし、長風呂もしてた。
のぼせてきた気もする。
なんか、ぼーっとしてきたんだけど…身体が上手く動かせない。
不味いって思った時、誰かが抱きかかえてくれた。
「あ、カストルさま?」
素っ裸の俺を横抱きにしてるからまる見えだ。思わず手で隠そうとしたら、「動くな、落とすだろうが」
ちょっと、怒ってる?
「ごめんなさい」
「風呂で溺れたらどうするんだ。次から侍女を付ける」
「や、だ。裸見られたく、ない」
「なら、遅くていいなら、俺に声かけて。溺れられたら困る」
「忙しいんでしょう?1人で……大丈夫。今日は疲れてたから偶々だよ」
ふわって温かい風が吹いて、身体も髪の毛も一瞬で乾かされた。
そのまま、寝室に連れていかれる。
「ありがとう、カストル様。着替えたら、先に寝るね。カストル様も疲れてるだろうから早くお風呂入って寝た方が良いよ」
もそもそと、寝衣を取りにベッドから這い出そうと動いた所を戻されて抱き込まれた。
「カストル様?あの、裸では寝たく無いので」
「明日は、2人とも休みだ」
何を言っているんだろう。従者にも言われたし、ちゃんと確認もしている。
「そんなはずは」
「レグルス殿下に怒られた。ちゃんと大切な人を大切にしないと取り返しがつかなくなると。どうやら魔術師団長は、お前の出来が良いからと、過分に教え込んでいるらしい。殿下に怒られてたよ。それで、3日ほど休みをもらったんだ」
「ほんと、に?」
「俺も焦ってて、寂しい思いをさせて、悪かった。
早く父上に追いついて、もう少し余裕が欲しかった。お前を手助けしたかったから」
そっか、明日休みなら早起きしなくていいんだ。
ゆっくり眠れる。
「そっか。じゃあ、おやすみなさい」
俺を見つめてたカストル様が──
「いや待て、スピカ…今日は、触れたい」
そう言って、押し倒してきた。
休みは、分かるけど
でも、今日めちゃくちゃ疲れてて眠い……
ちょっと、考える。
カストル様だって、休ませないと……顔色、あんまり良くないし。
「──疲れてるから、今日はやだ」
ちょっと驚いた顔をする。
明日ゆっくりして……夜なら良いかなぁ。
それに、本当に眠くて──
ごめんなさい。
「分かった。スピカ…明日だな。このまま寝よう」
そう言って抱きしめられる。
「お風呂入ったら?」
「クリーンでいい」
いや、だから裸のままは、ちょっと落ち着かない。
ガッチリとホールドされている。
ああ、もう──仕方ないなぁ。
疲れてたし、すぐに寝たんだと思う。
カーテンから少し光が差し込んで来ていて、朝?
なんて、ぼんやりしていたら。
何やら、身体を触られているのが分かる。頸部分をキスされている。
くすぐったい。
「え?何?」
胸と腹辺りにあった手がスルスルと下に降りてくる。
「あ、朝から?!」
「明日なら良いって言った」
「ちょ、まだ早朝だよ?」
それに、お腹も空いてて。
「もう今日になって、6時間は過ぎている」
「そうだけど──」
「昨日我慢したよ。それに、反応してるよスピカの。可愛い。
今から、駄目か?」
え、と。
もう少しゆっくりした方が、良くない?
分かるけど、待って。なんか、お腹が空いているし、ちょっとイラッときてしまった。
「待っ、ててば。
俺が、触れて欲しい時は断ったよね?」
思ったより大きな声が出た。
ジタバタ暴れて、カストル様のホールドが緩む。
「仕事が忙しいから、しばらくしないって言われて我慢してきたし──久々の連休なら、昼間は出かけたいよ。俺、ルナ様の所に1人で遊びに行ってくる!!!
そんなにベッドでごろごろしたいなら1人でごゆっくりどーぞ!」
3日もあるなら……
ちゃんと食べて、気分転換とか、外出とか息抜きしてからが良い。
俺は薄手のブランケットを身体に巻き付けて、自室に向かう。
「スピカ!待って!」
寝室にカストル様を残して、手早く着替える。部屋に結界を張り、《ルナ様、あ、会いたいです》と伝えると、フェルが現れた。
ルナ様の優しい顔が頭に浮かぶ。
『スピカ、訓練とか色々困ったり、息抜きしたい時に名前呼んでくれたら精霊を寄越すからね。フォレストに遊びにいつでもおいで』
ギュッとフェルを抱きしめる。
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