【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第9章☆アルとルナ

3 兄弟

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☆アルファルド殿下


「なんで、ディオールなんですか?」

にこにこ、にこにこ。

この笑い方。絶対、面白がっている。

「お前の側に信頼のおける者を付けただけだよ。アイツは、お前を裏切らない」

「一体、何の話をしているのですか?ルナの専属講師なのですよね?」

セス様が疑問に思うはずだな。
俺が反対しているように聞こえるだろうから。

「ディオールは、元々アルの従者なんですよ。だが、アルがブルックス王国の学園に留学を決めた時に従者から外しました」

「何故でしょうか?何か問題を起こしたのですか、彼は?」

「ディオールは──アルの、伴侶候補だったのです」

「な」

「落ち着いて下さい。昔の話ですよ。ナイト伯爵家は、それは古い歴史があって、グランデ王国の中でも有数の名家です。厳格で発言力もある。だからこそ、アルを守る為には良い縁だと思っていました。アルを担ぎ上げようとする勢力を抑え込む事が出来るそんな立場です」

セス様の視線が痛い。
俺は、ディオールをそんな目で見た事なんて一度も無いのに。

「でも、アルにはその頃から想う相手がいたようです。それをディオールは知っていたのですよ。何を言うでも無く、アルの盾になるべく側にいたのです。アルは学園に行くまでにを味方に付けて、父王を納得させて、私に頭を下げた。そして貴方の息子に会いに行ったんだ」

そう言って、紅茶を一口飲んで俺を見る。

「だったら、ディオールじゃなくて」

良いじゃ無いか──

その言葉を遮られる。

「アイツの希望なんだ。お前の為だ。古いしきたりに、融通の聞かない貴族達の矛先がルナに向かない様にする事。
子供が生まれない事は確かに今後の継承問題で揉めない理由にはなる。だが、いくらお前が継承権を放棄しようが、お前を抱え込もうする者は出てくる。
どうなると思う?狙われるのはルナだ。
ブルックスの貴族がグランデの中に入り込む事を拒む者、不安に思う者もいない訳じゃない。
それだけフォレスト家の力を怖く思う者もいるんだ。

国内安定の為にグランデ出身の者を伴侶か愛人にすべきだと言い出すと思わないか?
ルナを廃し、娘に子供を孕ませたら事は済む訳だ」

分かっている。
子供が居ると兄上に迷惑がかかる。だから、同性婚はある意味、兄上を裏切らないその意味も強い。
もちろん、男とか女とか関係なくルナだけが俺の伴侶だ。

「ルナは、語学も知識も十分にあるようだし、見目も問題ない。あれだけ美しい子は、そうそういるもんじゃないからね。我が子を薦め難いだろう。
後はグランデのマナー等を学ばせれば、文句は言えないだろう。実際、ルナに会えば認めるとは思うけどね。
それにディオールは、ルナの事を認めているし、お前と同様に護りたいんだよ。その気持ちを組んでやれ。お前が窮地に立たないように最善を尽くす。そう言う奴だ。お前が、オロオロしてたら、ルナが心配するぞ?」

にこにこ、にこにこ。
鬱陶しい。

「分かりました。兄上に従います。セス様、俺はルナしか要らない。俺の伴侶は1人だけです。愛人を作る気もありません。ルナを継承のゴタゴタに巻き込んだりしないように最善を尽くします。それから、ディオールへの恋愛感情は、ありません」

セス様の表情は硬い。

「ルナが、貴方を選んだんです。その気持ちを裏切らないでいてくれれば、構わない。
我々もアルファルド殿下を護ります。
王になるのは、オーウェン殿下貴方だ。必要ならば、契約を交わして構いません。貴方の国に興味は無い。我々は、フォレストの森を護る事が最優先なんですよ。
もちろん、ブルックス王国とグランデ王国の友好を継続させ無意味な戦争は起こす気もありませんが」

兄上の表情が変わる。
この人は、王になるのだ。

「今回はでしたが、改めて公式で王家にもフォレスト家にも挨拶に伺います。我が弟を頼みます。貴方のご子息により我が国との友好関係を継続していただける事を期待しております」

セス様同様に兄上の信頼もさらに得なければならない。
──大切な人を護る為に。







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