【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第6章 学園編☆1年生

15ルナ②

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side シリウス

セス様がまた一つ溜息を落とす。視線の先には、ルナがウンディーネ様に守られるように眠っている。俺達の声が聞こえない様にしてくれていたようだ。

「殿下、声を荒げて申し訳ありません。ルナは、ウンディーネ様とフェルに任せて我々は別室へ。ウンディーネ様、何かあればすぐ教えて下さい」

セス様に促され、寝室から出て行く。

アルファルド殿下の腕の中にいたルナは、安心して身を任せていたように見えたな。

少し首を振る。まだ、だ。
ずっと大切にして来たんだ。簡単に譲る気はない。



談話室に防音をかけたセス様からソファに座るように促される。  

俺は、ルナの今後の事をどうするべきか考えてみる。

ルナをフォレストに戻し、学園を辞めさせる?
だが、そんな事をしていたら、そのまま精霊の所に連れて行かれるのが早まるだけではないのか?このまま会えなくなるのか?

駄目だ。まだ、何も伝えられていない。

「セス様。発言をしてもよろしいでしょうか?」

「いいよ。いつも通りで。君はもう1人の息子の様なものだ」
少し、セス様が落ち着いたように見える。

「ルナをしばらくこちらで休ませた後は、学園に戻していただけませんか?」

「シリウス?」
その目は、信じられないとでも言いたげだ。

「血が苦手なルナは、ロイド達のように辺境の騎士になるのは難しい。だからこそ勉強し文官になって貴方の役に立ちたいと思っていた。その為に、ずっと勉強も魔術も学んで来たはずです。学園で学び卒業する事で得るものも多い。友人を作る事も楽しみにして来たのです」

俺は、ロイドに目線を移す。

「ロイドも分かっているだろ?ルナは、役に立ちたいんだ。必要だと認めてもらいたいんだよ。ただ守られるだけじゃ、駄目なんだ。自信の無いルナが必死に頑張って来たのを知っているだろう?それを奪えばルナは、さらに自信を無くす。それでもいいのか?」

「シリウス、それでも俺達は、あの子を守りたいんだ。時間でも側にいたいんだ」
ロイドも呪いの事を聞いているんだな。

「聞いたよ。ルナの呪いが解けなかった場合は、精霊の世界に連れて行かれる事は殿下から。なら、なおさら学園に行かせてやって欲しい」
殿下も頷いている。

セス様が俺を見た。

「そうか、聞いたのか。
シリウス、済まなかった。君から……いやフォーマルハウト家からルナを望まれていたが、呪いを受けたルナを渡すわけにはいかないんだ。解呪出来なければ、人の世界には居られなくなるんだ」
オリビィ様似た、大切な子だ。俺なんかよりセス様は、辛いはずだろう。

ずっと、見てきた。
可愛くてたまらない。誰にも渡したくない、大切な存在。


だが、リゲルのあの一言で怯えきってしまった。
オリヴィ様が亡くなった時のトラウマ……血と雷だけではないのか?それ以外に何かあるのではないだろうか?
フォレスト辺境伯家は、ルナを溺愛している。産まれて来なければ良かったなどと言う者はいない。オリビィ様が?それも無いな。精霊に愛されていた人だ。

じゃあ、誰に言われた?

それに、殿下に呪いをかけたのは誰なんだ?

セス様に俺が気になっている事を話す事にした。

「気になる事が2つあります。問題を起こしたリゲルは、ただ殿下に近づきたいだけだと思っていました。前回の謹慎後には、クラスの中心人物になっていた。魅了でも使ったみたいに。そして、今回は呪いの様な黒い物が見えたのです。スピカ・グレンジャー子爵令息が光属性の魔術で浄化をしたようです。それにカストルが、レグルス殿下に呪いをかけた人物が接触してくる可能性があると言っていたんです。リゲルの後ろに誰かいるようで術者を探せるかも知れません」

「殿下を呪った術者が、また接触して来るというのか?」

「可能性があります。フォーマルハウト家としても、術者を探すように指示を出しています」

「そうか。ルナを苦しめている呪いをかけた者がまた、殿下に接触などと──」
セス様の纏う空気が変わる。

「私もその件は協力しよう。だが、ルナがまた誰かを庇う様な状態は避けたい」

「もちろんです。2度とそんな事させません」レグルス殿下が答えた。


「セス様──2つ目の気になる事ですが。ルナは、過去─いえ、記憶の中に《産まれて来なければ良かったのに》そう言われた事があるのではないのでしょうか?」

「シリウス!ふざけるな!!俺達や邸内の者がルナにそんな事を言うはずがないだろ!」
ロイドが立ち上がり、俺に殴りかかりそうな勢いで近づくのをセス様が止める。

「だから、記憶。生まれた時からの記憶の中にだ。尋常じゃない怯え方だった。。それも、大切な人に。あの絶望に染まる表情は経験してきた者のようだった」

「ルナの前世と言うのか?」

「ええ」

「──ルナは。オリビィが抱きかかえようとすると……一瞬固まるんだ。頬を撫でようとすると、その手が怖いのか……涙をいっぱいに溜めて。ジッとするんだ。私が怖いのだろうかと時々オリビィが悩んでいた。だから、驚かさないようにね。それは、ゆっくりと触れていたんだ。そうか、前世か。しかも大切な──母親から言われていたのかも知れない。
ルナの自信の無さの根本はそれかも知れない。実の母親に拒絶されて、否定されて来た記憶があるのか……」


「ルナに自信を付けさせるには、ルナを唯一の存在だと、肯定する人間が必要だと思うんです。俺はそうなりたい。学園に通う間に機会をいただけませんか?術者も探します。そして、ルナの唯一になる為の時間が欲しいのです」

その言葉にレグルス殿下も反応した。

「セス殿、俺にとっても、ルナは大切な存在なんだ。多分アルファルド殿もそうだと思う。傷ついてきたルナに自信を付けさせたい。大切にしたい。俺の呪いのせいでさらに苦しめているのは、分かっている。だからこそ卒業するまでに術者を捕まえたい。呪いのせいで連れて行かれるなんて、駄目だ。それに権力を使って迫ったり苦しめたりはしない。ルナが誰を選ぶかは、ルナの気持ち次第だ。今回ここに連れてきたのは、学園を辞めさせる為じゃないんだ。フォレストの森は、ルナを癒してくれると思ったからだ」

「ルナにとっての唯一……」
セス様は、何か考えている。



「ルナが──元気になって、学園に戻りたいと言えば、お連れください。レグルス殿下、王命で婚約者にしないと誓っていただけますか?アルファルド殿下にもそう伝えます。彼からもルナへ婚約の打診はあったのですが、断っていたのです。ですが、ルナを救ってくださるのなら。ルナとになった方にルナを任せたいと思います」









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