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第6章 学園編☆1年生
16その後 sideスピカ
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目が覚めたら、知らない部屋にいた。
ここは、何処だろう?
ゆっくりと上半身を起こしてみる。まだ、上手く力が入らない。
シンプルに整えられた落ち着いた家具。学校じゃないよね?
ノックの音が聞こえた。
「はい」
と返事をすると──
キラキラ眩しい笑顔のカストル様が、ベッドの方へ歩いて来て椅子に腰掛けた。
「あの……」
俺から声をかけても大丈夫かな?
「──随分と無茶をするんだな?殿下に取り入るためか?」
ヒュッと喉がなる。
「ち、ちが」
ああ、やっぱり。
こうなるんだ。運の問題じゃなくて、これは──罰。
違うと否定しても、信じてもらえることなんて……無いんだ。
何も言えずにいた。
なんて言ったら良いのか分からないから、黙る事しか出来なかった。
「悪かった。泣かすつもりは、無かったんだ」
カストル様のその一言で、涙が溢れている事に気がついて、慌てて袖口で顔を拭う。
「ばかっ。擦るな!」
「ずび、ましぇん……」
「だから、泣くな。ああ、鼻水が、ほらハンカチやる」
また、トントンとノックされて、
そちらを見る。
「カストル、何虐めてんだよ?」とソレイユ様が、ウォーターポットとグラスを持って部屋に入ってきた。
「違うから。どんな言い訳をするか試しただけだ。まさか、泣くとは思わなかったんだ」
「ふ~ん?それより説明してやったら?ここは俺の部屋なんだよ。とりあえず、スピカは、水飲んで落ち着け」
ソレイユ様の部屋?
あ、冷たくて美味しい。
リゲルに向かって魔力を放出した後の事は覚えていない。
「お前は分かっててやったのか?魔力の枯渇は、身体が出来上がっていない俺達の年齢では特に危険だ。それを躊躇わずに使った理由を聞きたい。殿下のためだったのか?」
カストル様から問いかけられた。
どこから話したら良いのだろう?
前世なんて信じてもらえない。頭がおかしいと思われる。それに、このベッドに寝ているのは問題ありまくりなのでは?
「不敬かも知れませんが、殿下のためではありません。俺、わ、私は、ルナ様に助けてもらったから。ルナ様に八つ当たりしているリゲルが許せなかった。だけど、彼が助けを求めている様にも見えたんです。それだけです。
でも、どうしてここに寝かされているのかが分からなくて。あの!シーツは洗って、いえ買って返します。もう部屋に戻りますから」
慌ててベッドから降りたら…立てなかった。眩暈がしてガクンと力が抜けて前に傾いていく身体。
見た目は、細めなのに意外にガッチリしているんだなんて、その人の胸に抱きつく形で支えられていた。
俺もう不敬罪で処分されちゃうかも。
「暴れるな。まだ寝てろ。俺の部屋じゃないけど」
カストル様に抱きかかえられてベッドに戻される。
「カストルお前なぁ。素直にありがとう。助かったって言う所だろ?」
ソレイユ様?
「光属性持ちは少ないから保護の対象になる。その希少な魔力で呪いの発動を止めて浄化したんだ。レグルス殿下達が被害を受けなかったのはスピカのおかげだよ。
リゲルは、魔術師団に預けられたから、俺達には今後の処遇は分からないよ」
そっか。リゲルは、とりあえず無事なのかな。
そのまま、ソレイユ様が話を続ける。
「あれから、2日経ったんだ。お前は、保護の対象になったから、こちらのエリアに部屋が用意されるまで、俺の部屋にいてもらう事が決まったんだ。で、俺はカストルの部屋に厄介になっているわけだ」
「2日…寝てたんだ」
まあ、ソレイユ様と2人にされていたわけじゃ無いから寮生達に変な誤解をされないなら良かった。
「呪いの元凶が他にいそうなんだよ。貴賓エリアの方が安全だから。保護を受け入れる様にね」
保護の為に、こちらのエリアに僕が住むの?良いのかな?ルナ様の邪魔にならないのかな?
リゲルは魔術師団の所。じゃあ、今ルナ様はどうしたんだろう。あの時の泣き顔が、痛々しくて苦しくなる。
「ルナ様は?大丈夫なのですか?」
お2人が顔を見合わせて、「療養の為にフォレストに行ってる。まだ、戻ってきてないよ」ソレイユ様は困ったようにそう言った。
だけど、カストル様は──
「大丈夫。きっと戻って来る」
優しく笑った。
ここは、何処だろう?
ゆっくりと上半身を起こしてみる。まだ、上手く力が入らない。
シンプルに整えられた落ち着いた家具。学校じゃないよね?
ノックの音が聞こえた。
「はい」
と返事をすると──
キラキラ眩しい笑顔のカストル様が、ベッドの方へ歩いて来て椅子に腰掛けた。
「あの……」
俺から声をかけても大丈夫かな?
「──随分と無茶をするんだな?殿下に取り入るためか?」
ヒュッと喉がなる。
「ち、ちが」
ああ、やっぱり。
こうなるんだ。運の問題じゃなくて、これは──罰。
違うと否定しても、信じてもらえることなんて……無いんだ。
何も言えずにいた。
なんて言ったら良いのか分からないから、黙る事しか出来なかった。
「悪かった。泣かすつもりは、無かったんだ」
カストル様のその一言で、涙が溢れている事に気がついて、慌てて袖口で顔を拭う。
「ばかっ。擦るな!」
「ずび、ましぇん……」
「だから、泣くな。ああ、鼻水が、ほらハンカチやる」
また、トントンとノックされて、
そちらを見る。
「カストル、何虐めてんだよ?」とソレイユ様が、ウォーターポットとグラスを持って部屋に入ってきた。
「違うから。どんな言い訳をするか試しただけだ。まさか、泣くとは思わなかったんだ」
「ふ~ん?それより説明してやったら?ここは俺の部屋なんだよ。とりあえず、スピカは、水飲んで落ち着け」
ソレイユ様の部屋?
あ、冷たくて美味しい。
リゲルに向かって魔力を放出した後の事は覚えていない。
「お前は分かっててやったのか?魔力の枯渇は、身体が出来上がっていない俺達の年齢では特に危険だ。それを躊躇わずに使った理由を聞きたい。殿下のためだったのか?」
カストル様から問いかけられた。
どこから話したら良いのだろう?
前世なんて信じてもらえない。頭がおかしいと思われる。それに、このベッドに寝ているのは問題ありまくりなのでは?
「不敬かも知れませんが、殿下のためではありません。俺、わ、私は、ルナ様に助けてもらったから。ルナ様に八つ当たりしているリゲルが許せなかった。だけど、彼が助けを求めている様にも見えたんです。それだけです。
でも、どうしてここに寝かされているのかが分からなくて。あの!シーツは洗って、いえ買って返します。もう部屋に戻りますから」
慌ててベッドから降りたら…立てなかった。眩暈がしてガクンと力が抜けて前に傾いていく身体。
見た目は、細めなのに意外にガッチリしているんだなんて、その人の胸に抱きつく形で支えられていた。
俺もう不敬罪で処分されちゃうかも。
「暴れるな。まだ寝てろ。俺の部屋じゃないけど」
カストル様に抱きかかえられてベッドに戻される。
「カストルお前なぁ。素直にありがとう。助かったって言う所だろ?」
ソレイユ様?
「光属性持ちは少ないから保護の対象になる。その希少な魔力で呪いの発動を止めて浄化したんだ。レグルス殿下達が被害を受けなかったのはスピカのおかげだよ。
リゲルは、魔術師団に預けられたから、俺達には今後の処遇は分からないよ」
そっか。リゲルは、とりあえず無事なのかな。
そのまま、ソレイユ様が話を続ける。
「あれから、2日経ったんだ。お前は、保護の対象になったから、こちらのエリアに部屋が用意されるまで、俺の部屋にいてもらう事が決まったんだ。で、俺はカストルの部屋に厄介になっているわけだ」
「2日…寝てたんだ」
まあ、ソレイユ様と2人にされていたわけじゃ無いから寮生達に変な誤解をされないなら良かった。
「呪いの元凶が他にいそうなんだよ。貴賓エリアの方が安全だから。保護を受け入れる様にね」
保護の為に、こちらのエリアに僕が住むの?良いのかな?ルナ様の邪魔にならないのかな?
リゲルは魔術師団の所。じゃあ、今ルナ様はどうしたんだろう。あの時の泣き顔が、痛々しくて苦しくなる。
「ルナ様は?大丈夫なのですか?」
お2人が顔を見合わせて、「療養の為にフォレストに行ってる。まだ、戻ってきてないよ」ソレイユ様は困ったようにそう言った。
だけど、カストル様は──
「大丈夫。きっと戻って来る」
優しく笑った。
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