【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第6章 学園編☆1年生

3留学生①

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☆シリウスside


リゲルの首元を掴み、後ろの壁にドンと押し付ける。

「ひっ」
リゲルが、ガクガクと震える。

見た事のない、黒髪の男の背中を見つめる。

誰だ?
ルナを馬鹿にした下衆リゲルを押さえ込んでいる。
いつ現れた?イフリート様が現れるのは空間が歪んだ瞬間に分かった。
だが、ほぼ同時だったせいか気配が掴めなかった。


イフリート様がルナの前に立ち、その姿を隠している様にも見える。
ウンディーネ様も現れてルナの腕に触れて治癒をしている。
レグルス殿下に抱え込まれて床に座りこんでいるが、ルナは意識はあるようだ。

くそっ。ルナが怪我をする事になるなんて、俺は、殿下の側を優先しなければならない。レグルス殿下からも手を出すなと合図が合った。
命令もなく、無闇に学生に手を出せない。殿下の生命に関わるものならば、即決して動けるが……

リゲルは何でも都合良く解釈をする奴と判断したのだろう。構えばさらに調子に乗るはずだ。
平等を持ち出す時点で、間違っている。殿下から認められて初めて成り立つ事が分かっていない。

話す価値も無い。だからこそ、対応をソレイユやカストルに任せたんだろう。

よりによってルナは、そんなリゲルをフェルから庇った。こんな下衆を守る必要など無かったのに。
精霊が悪意に反応した事で収めたい所だったが……

この状況を止めるべきか?

ピンクの奴は、オロオロしている。お前のダチだろう?なんとかしたらどうなんだ。
レグルス殿下は、黙ったままだが、かなり怒っているのが分かる。

それに、イフリート様が来てしまった。この状態のイフリート様を止められるのか分からない。

その時、声がした。

「アルファルド・グランデ殿下、落ち着いて下さい。彼がレグルス殿下達に不敬な態度を取った事を戒めて頂きありがとうございます。こちらで対応いたします」

クロス・アルデバラン先生が、黒髪の男の腕を軽く押さえた。

そして、囁くように──
リゲル君が死んでしまいます。良からぬ貴族に言い掛かりの隙を与えかねない。貴方の立場を悪くしてしまう。今は、抑えて下さい。
──そう告げた。

リゲルの首から手を離し、こちらを見る。

アルファルド・グランデ?
グランデ王国の第2王子か?

リゲルは、ゲホゲホと咳き込みながら、ズルズルと壁に持たれたまま座り込んだ。
「な、なんで?僕なんにも悪く無い。そいつが!」

今度は、イフリート様の炎の剣がリゲルの足元に突き刺された。
「ひぃ」

「まだ、何か言うのか?」
その威圧に、リゲルの前は濡れてしまったようだ。

「イフリート様。どうか落ち着いて下さい。ルナは、彼でも庇いました。ルナに免じて許していただけませんか?リゲル君、君は殿下と同じクラスは相応しくないようだね?廊下にいる護衛騎士の方、リゲル君を理事長室に連れて行ってくれないか?私が彼のクラス替えを要請していると伝えてくれ」
リゲルは荷物のように抱えて連れて行かれた。

残された、ピンクの奴はオロオロしている。お前は行かないのか?

「ルナ、大丈夫か?」
ずっと黙っていたレグルス様が、ルナを支えながらそう言った。

「レグルス殿。ルナと話したい」

近づいて来たアルファルド殿下が、ルナに話しかけた。

『ルナ。起きれるか?』
何語だ?グランデ語か?いや何か違う。聞き取れない。

『──アル?どうして?』

『約束だから。一緒の学園に通えたら嬉しいんだろ?それより、怪我は治してもらったのか?』

『ん。大丈夫みたい。ディーネ様ありがとうございます』

ルナがウンディーネ様を見て何か話かけている。

『リート様?怒ってますか?』
今度は、イフリート様に何か話かけた。イフリート様がルナの側に来て頭を撫でている。
『ルナ痛みは?平気か?無茶をするな』
精霊のイフリート様達に言葉の壁は無いようで、難なく会話が成り立っているみたいだ。

『平気です。上手く対応出来なくて、心配かけてごめんなさい。僕、今日から学園に通うの楽しみにしてて。だから、一旦戻っててもらえないでしょうか?心配なら夜に寮に来てもらってもいいので。怪我の治療もありがとうございました』
ルナと会話した後、2人とも優しい顔をして消えて行った。

フェルが、しょんぼりしているのは仕方がないだろう。結果的にルナに怪我をさせたのだから。
『大丈夫。フェルは、僕を守ろうとしてくれたんだよね?ありがとう。あの子を怪我させてフェルを悪者にしたくなかったんだ。ごめんね』
フェルも言葉が理解出来たのか、ルナの胸の所に飛び乗っている。
ルナは、レグルス殿下に抱えられている事に慌て始めた。
『もう、大丈夫ですから』

「ルナ、悪い。グランデ語なら分かるんだが…少し違うみたいで、所々聞き取れないんだ」
殿下が困った様にルナに聞いている。

驚いたルナが、慌てて答えた。
「あ、支えていただいてありがとうございました。もう、大丈夫です」

そう言って、ゆっくりと立ち上がった。

「ねぇ。ルナ、何語を話してたんだ?」
近づいて来たカストルに話しかけられている。

「あ、グランデ国の言葉だと思います。アルは、グランデ国の出身で教えてもらってたので」
 
カストル様が首を振り、
「グランデ語とは、少し違う。似ているけど、グランデの古語かな?所々しか聞き取れない。すごいな」

「古語?アル、グランデの丁寧な言葉って言わなかった?」

「ルナには、を学んでて欲しかったからな。そっちも教えていただけ」
さっきの表情とは違う。ルナを見る目が柔らかいものになる。

グランデ王国の古語は、伝統的な式典等で使う言葉だ。かなり難しく、通訳もほとんどいない。
なぜ?そんな言葉をルナに教えているんだ?

そしてルナがようやく肝心なことに気がついた。 

「アルって、アルファルド・グランデ王子殿下なの?」


ルナの親友【アル】がアルファルド・グランデだなんて、最悪だろう。



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