【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第4章 学園入学準備

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「あ、ああ。少し、ルナ君を借りるよ」

こちらについて来る様にと、促される。
腕の中のフェルが、アルデバラン先生をじーっと見つめているのが分かる。

シルフィ様が僕の髪留めを見ていた。
「イフリートの加護か……ずるいな」
そんな事を言ってる。

本当にごめんなさい。みんな色々持って来るんだけど、これ以上モブの僕は、目立ちたくないんです。

「シルフィ様達の加護付きのイヤーカフも気に入ってます!」

そう言うと、耳元にキスが降ってきた。

ひぁぁぁ。

「ルナが、そう言ってくれるなら良い」

温度が、下がっている!

殿下と目が合うと、可哀想な者を見る目をしている。

「アルデバラン先生。半刻(30分)で返して下さい。そうしないと、物理的に寮が凍ってしまう。シリウス、談話室の前で待っててやれ。怪しい時は、いつでも入室していいぞ」

そう言って、殿下は手を振り部屋に戻って行く。
カストル様とソレイユ様は、シルフィ様が気になるようだけど、殿下の後に続き、ドアが閉まった。

「では、アルデバラン先生、早く終わらせましょう」

え?それ僕のセリフだよね?
シス兄様、シルフィ様とお話しする機会今度計画するから、落ち着いて!


談話室は、一つ下のフロアだった。
こぢんまりした部屋にテーブルと4人分の椅子がある。

促され、アルデバラン先生と向かい合わせに腰掛ける。シルフィ様は何故か手を僕の肩に置いて後ろに立っている。フェルは、僕の膝上に座りテーブルに両前足を乗せて、先生をガン見する形だ。

「その、アルデバラン先生はじめまして、ルナ・フォレストです」

先生は、少し考え込んでて──

「もう、気が付いているのか?」
そう、言った。

ああ、やっぱり。転生者なのだ!
じゃあ、安心だね。

「シルフィ様、これから話す事みんなに内緒にしてくれる?」

後ろを振り向いて、シルフィ様を見上げる。

「誰に?イアソ様には、筒抜けだ」

あー。そうだよね。精霊様を従える立場の方だもの。

「イアソ様には、嘘はつきたくないから平気。シリウス様とか殿下達に内緒にしてくれる?」

「ルナ以外の人間には興味がないから言わない、大丈夫だよ」

頭を撫でられる。
そして、シルフィ様が防音の魔術を精霊の力でかけてくれた。これは、シリウス様が気が付かない様にする為だ。

そして、先生に向かい合う。

よし!
と、気合いを入れて思いの丈を口にした。

「先生も転生者なんですね!
だから、スピカを心配しているんでしょう?分かります!
僕は、モブなんですけど、殿下達の幼馴染のポジションで、だからとっても美味しい役どころなんです。あ、意味分かりませんよね?
あの?腐男子って知ってますか?
腐女子は分かります?男同士の恋愛小説とか漫画を好む女子達の事なんですけど。さらに妄想して喜びを感じる人達で、年齢が上がると貴腐人になるみたいです!
あっBLは分かりますよね?男同士故に切なかったりする恋愛です。あ、激しいのもありますけど…それは、まだ苦手で。
あの僕もその…男の人の方が好きなんですけど。自分の事よりも素敵な人達が恋愛しているのを、読むのが好きだったんです。
今は、小説の世界に転生しているでしょう?近くで目撃出来るんですよ!幸せなんです!だからモブ最高!って思っててですね──
でも、幼馴染だから妙に大切にされちゃって。
すっごい、幸せな場所に転生出来たんです。お兄様達が、僕の事大切にしてくれてるし。
転生して来たなら先生もこの小説のファンなんでしょう?
大丈夫です。攻略対象の方とかの邪魔はしません。3年学んだら、領地に帰ります。
ん?転生したなら仲間ですよね?そっか先生も腐男子?
誰推しとかあるんですか?スピカを心配するって事は、スピカ推しですか?あ、今世スピカと恋愛したい人ですか?」

半刻しかないし、シス兄様が飛び込んで来ても困るから、一息に早口で話す。

先生が、びっくりした顔をしている。

もしかして、スピカ推しってバレたくなかった?

「あ、先生ってもしかして、隠しキャラだったりするんですか?イケメンだし。先生と生徒って組み合わせも、ドキドキしますね!
所々、記憶が曖昧なんです。
この小説悪役いましたっけ?
あ、僕は、なんの害もありません。小説に出てたメガネの幼馴染ですよ。
学園は3年間通わないとだめだから、その間大人しく見守るだけなので。本当に、邪魔する気はありません!
寮の部屋が気になるんですよね?だったら、一般寮で良いですよ!安心して下さい!!」

これで、良いかな?
思った事は全部言えたかな?




ずっと黙ってた先生が、突然吹き出した。お腹を抱えて笑う。

イケメンって得。涙目で、笑っているのが……可愛く見えたり、かっこ良くも見えるなんて、ちょっとずるい。

「君は、本当にモブになりたかったんだね」

え?
それって……
「君の幸せは、主人公スピカになる事だと思っていたんだけど……ね。
そっか、なら、3年間見守らせてもらおうか。クジを奪った子に何かされたら嫌だからさ。そうだ、そのメガネは魔道具だよね?俺はかなり魔力が強いんだが…上手く顔を誤魔化してるよね?素顔見せてくれる?」


この人もしかして……知っているのかな、ぼくの顔。
だったら、良いかな?

メガネを外してみた。

「ああ、その顔だ」

先生がにっこり笑う。

「私の使い魔黒ネコを助けてくれた子だね。確信出来て良かったよ」

「黒ネコ?あ、事故の時の?」 

その事故自体、曖昧。
前世の自分の顔もだんだん薄れてて、ほとんど忘れてる。忘れたい事は消えてくれないけど。
前世の顔って、メガネを外した顔に似てたのかな?

──俺が、応援するのは君だけだ。

「え?なんですか?」

「いや、殿下達に嫌われたら、担任から外されそうだから、ルナモブを認めるよ。困った事があったら言いにおいで。寮もそのままの方が、腐男子の君には、良いはずだね。俺は、別に腐男子じゃないよ?スピカも興味ないから」

クツクツと笑った後、一度息を吐く。


僕をジッと見た。
「行こうか?」
そう言って立ち上がった。

転生者じゃなくてナビゲーターさんだった。クジの事心配して、僕の様子を見に来てくれたんだ。

あ、半刻ギリギリ?
ドアが、思いっきり開いた時は、驚き過ぎて気を失いそうだった。


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