【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第3章 隣の幼馴染

6閑話☆激闘釣り大会

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いつもは、ルナ様の護衛が私の担当だ。今日は、フォレスト家の貴賓を総力をあげて護衛する事になった。

領主のセス様は、大自然の中にある透明度の高い湖の一角に別邸を持っている。
そこが目的地だ。
馬車の中には、我らがルナ様と兄のダレン様、シリウス様、そしてレグルス殿下だ。

セス様とロイド様は、馬に乗り馬車と並走している。

そして、殿下の護衛と辺境伯の護衛が囲んでいる。
鉄壁の護りだ。

メガネをかけっぱなしのルナ様が残念でならないが、王子の毒牙から守るには、致し方無いのだ。


どうやら湖で釣りを競うらしい。
シリウス様とルナ様。
ダレン様と殿下。
ロイド様と護衛の誰か。
この組み合わせで勝負するそうだ。

ここは、ルナ様に勝って欲しいものだ。


そう思っていたのだ。

まさか、俺が、ロイド様のペアに選ばれるなんて。

本来なら、ルナ様か殿下に花を持たせるべきだ。
本来ならば!!


だが、セス様がおっしゃったのだ。

チーム戦のご褒美は、豪華な食事。
だが、個人戦は願いを叶えると。

叶えたい願いの条件は、暴力行為は禁止。
相手の嫌がる事を強要するのも禁止。
希望を言ってそれが害のない物なら許可するとの事だ。

ならば、俺の願いは一つだ。

釣りが始まる前に、希望をそれぞれ言う事になった。

まずは、殿下から。子供5人で庭で良いからキャンプがしたいとおっしゃった。
子供らしいな。それに、ルナ様が手を挙げて同意した。

次に、シリウス様。ルナ様と2で、領地観光をしたいそうだ。
そうきたか……
何やら、ルナ様の耳元で話している。風魔術で声を拾うと『その時はメガネ外してね』って──う、羨ましい内容だ。

次は、ダレン様だ。
3人で夜更かししたい。
いわゆる、パジャマパーティだな。それには、ロイド様も同意した。仲の良い兄弟だな。

セス様が久しぶりにルナを独り占めしたい。そう言った。
ルナ様が、嬉しそうにしている。

お、俺の番だ。

「ルナ様の、専属護衛として一緒に王都に行きたいです!」
言った。言うだけなら、タダだ!

セス様の刺すような視線に、冷や汗がダラダラと流れる。

ダメなのか?思わず、ルナ様を見る。

少し驚いた顔をしたルナ様が、にっこり笑う。
「あの。お名前教えて」

「お、私は、ユーリです」
ルナ様に、名前を聞かれるなんて!!
「ユーリ。専属に決まったら、魔術とか教えてね」

ズッキューン♡うはぁぁぁ。勝ちます。絶対に勝ちます。
「喜んでこの身を捧げます!!」

うおっ。セス様の視線が!
それより、殿下の護衛は意味が分からないだろうが(メガネのルナ様しか知らないからな)辺境の護衛達の嫉妬の視線が──痛い。
だが、絶対にこのチャンスを逃すものか!

そして、セス様からルールが発表された。


①相手に怪我や苦痛、恐怖を与える事は絶対にしない。

②釣り竿を破壊する、隠す、糸を切る、釣った魚を盗むのはダメ。
そして、必ず釣り糸で引き上げたものがカウントされる。


うんうん、ここまではまともだな。


③それ以外なら、お互い邪魔をして良い。

④勝たせたい者を応援して良い。
──つまり、負かせたい者を邪魔して良い。
見ているだけじゃ、暇だろう?


そう言って、控えていた護衛騎士達に悪魔の囁きをしたのだ。

要するに、ユーリの邪魔をするようにと言っている。

負けるものか!


それぞれ、釣りのポイントに分かれて今から2刻(2時間)ほど釣りをする。


の、だが……

やられた。目指していた場所に氷が張っている。
く、シリウス様か?いや、フェンリル様っぽいな。

ロイド様が、ニッと笑う。
「釣り上げれば良いのだろう?」
釣り糸を氷にくっ付けた。
そして、糸を強化し炎の剣で氷を円形に溶かし、氷の塊を釣り上げた。氷漬けの魚が10匹ほど釣れた。

これ、釣りなのか?

「よし、どんどん釣るぞ」
さすが、セス様の息子だ。

シリウス様は、どうやら殿下の邪魔をしているようだ。

氷の槍アイススピアを殿下達の釣り場にどんどん突き刺して、魚を寄せ付けない作戦のようだ。

ダレン様が、ニッと笑う。
氷の槍に驚いて飛び跳ねた魚を蔦を使い捕まえ始めた。
釣り針を魚の前に出して、魚に咥えさせる。
そして、ビュンビュンと高速で釣り上げ始めた。

まじか、この兄弟、凄まじいな。

殿下もびっくりしていたが、ダレン様に促され釣り針を魚の前に垂らして釣り始めた。


ルナ様は、シリウス様の横に座って釣りをしている。

ん?誰かいるな。水色の長身の男か?水がザァーと寄ってきて、その中に大漁の魚がいる。
まるで水槽に魚が集められたようになっている。
ルナ様が釣り針を垂らすだけで魚が食いつく。

もしかして、あれが水の精霊 ウンディーネ様?その方が手を貸しているのか!

シリウス様もどんどん釣り始める。


不味い。
人を見ている場合じゃない。
よし、竿を握り、水面に向かって糸を投げ入れようとした。
なんだ?やけに重い。後ろを振り返ると、釣り針が巨大化している!いつの間に!誰だ、術者を探す。ルナ様付き護衛のシオンとマークか!

俺に釣りをさせない気だな。
このデカい針に魚が食いつくわけがない。俺は糸と針を沢山結び付け、絡まないように風魔術で空間を保持する。デカ針は飾りだ。外せないから仕方がない。

肉体強化だ!!!唸れ筋肉!!
ぐぉぉぉぉぉぉぉ、ふんぬっ。
ドンと勢いよく釣り針を水中に投げ入れる。
引き上げれば、通常サイズの複数針の方に魚が釣れる。
だが、引き上げるのが、さらに重い。うぬぬぬ…。

しかーし!ルナ様の側にいる為だ!!

まだまだぁ───、うりゃぁ!
ふははははっ!何度か繰り返す。

釣りながら、ふとセス様はどうしているのか気になった。
あれか?湖の上に立っている。

セス様は、土属性が強かったな。
グググと土が盛り上がり、円形の窪みが徐々に狭まっていく。

もしや、これも水槽状態にするのか!

俺を見て、ニッと笑った。凄まじい殺気を感じる。この親子態度が同じだな!

負けるものかぁぁ!ふんぬっ!!
くそう、もう腕がパンパンだ。
ようやく、釣りが終わった。結果は、結果はどうなったのだ?

チーム戦は、ルナ様とシリウス様だ。

セス様は個人戦のみだが…本当に大人気ない。
1位がセス様だなんて。
2位はシリウス様だ。ルナ様と何か話しているようだ。
3位が──俺だ。


セス様が、今日は一緒にお風呂に入って、背中を洗ってくれるかい?そして一緒に寝ようか。と嬉しそうにルナ様を抱き上げた。ルナ様も嬉しそうだから、いいか。

そして、明日テントを張ってキャンプをして良いと笑った。5人から歓声が上がった。さすが父親だな。

俺は中途半端で、なんだか申し訳なくなって。ルナ様に謝ったのだ。

ルナ様が笑った。
「ユーリ。これからも僕の専属でいてくれる?」

「もちろんです!」
ルナ様!一生ついて行きます!!










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