【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

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第2章 パルムの樹と精霊

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パルムの樹の前で、出逢ったのはたぶん精霊ですよ。
そう、フォレスト辺境伯が言った。

あれが、精霊か──。
人型を取れるなら、高位精霊なのか?
俺の事を知っていたのも、そのせいか?

でも、何か、引っかかるんだが。
それらしい人物は、いないしな。

あれだけ儚げで可愛いのなら
人外も納得か。

俺を抱きかかえた護衛も、に見えたと言っていた。俺の顔が真っ赤になっていたから驚いて出てきたらしい。

人外か……

パルムの樹は精霊が集まる場所らしい。俺が精霊の森の治療院に行く許可が出たそうだ。それってあの子が俺を認めたのか?

なんで、こんなに気になるんだ?
俺は、治療しに来ただけなのに。
森に行けば、逢えるかも知れないなんてどうかしている。



駄目だ。まずは、ルナの体調は戻ったのかどうかを確認しないと。

夕食も終わらないうちに連れ出されていたし、今朝も顔を見せなかったな。
エントランスホールに集まる事になっているが、無理しなくてもいいんだが。
ただ一言、謝りたい。 

今日は、フォレスト辺境伯が案内してくれればそれで済むだろうし。

「殿下、道幅が狭く馬車では奥に進めません。途中から馬に2人乗りで行きます。精霊の森には許可を得た者しか入れませんので少数ですが、安心して下さい」

まだ、俺は馬に1人では乗れないから仕方がない。

「ロイド達は?」

「ロイドとダレンは、邸に残ります。ルナは同行します」

あの、チビ……
いや、ルナだな。ルナが行くのか?

「既に、護衛と共に馬上で待機しています」

「ルナは、途中まで馬車ではないのか?」
まだ体調が良くないんじゃないのか?

「問題ありません。ぜひにとが言うので。さぁ、まいりましょう」

不思議に思いながら、後ろをついて行く。

馬上に、それは美しい真紅の髪が見えた。陽の光を浴びて、炎のようだ。
視線を合わせると瞳も真紅で人とは思えない。
ただ、その造形美に圧倒される。

精霊──?


なるほど、あの子もやはり精霊の子なのだと、納得する。

その美形の前にルナが座っていた。しかし、本当に辺境伯にそっくりだな。

何か、護衛に声をかけて降ろしてもらっている。

近くに寄って来た。
どこからか現れた、白銀の毛玉を抱きかかえて、にっこりと笑う。

「ル、ルナ。当てるつもりは無かったんだ…すまない」

頭を下げようとした時、ルナに止められる。

「僕に、頭を下げる必要はありません。その。レグルス殿下、名前を呼んでいただき、光栄です」

そして、毛玉を俺に差し出して
「最強の護衛です。馬車に共に乗って下さい。フェルと言います」

「は?」

これが?

訝しげにその塊を見た後、辺境伯を見れば頷かれた。

「この中で1番強いので、殿下の護衛にお願いしています。
ただ、基本ルナの命令しかききませんので」

もう一度、その塊を見ると耳と尻尾が分かった。

「犬? が、護衛?」

「氷の精霊です」

そして、馬車に乗せられた。
護衛と言われたフェルは、ジッとしてぴくりともしない。
不機嫌な態度のままだ。可愛げがない。



しばらくして、馬車が止まった。

そして、扉を開けられたそこは、
なんだここは───

パルムの樹と呼ばれた同じ樹が群生している。蔦が巻きついているものや、苔むした場所もある。光が葉や枝の隙間から降り注いでいる。

空気が違う。

「殿下は私の馬に」
辺境伯が手を差し伸べる。グッと引き上げられて前の方に乗せられた。

ここから先は、3頭のみだ。
辺境伯と俺。ルナと真紅の奴。
護衛が1人だ。他の護衛達は馬車の側に残るようだ。

そして、さっきの毛玉が、ジッとルナを見ている。
真紅の奴が何かルナの耳元で話すとルナが手招きをした。
千切れんばかりに尻尾を振り、ピョーンと大地を蹴りポスンとルナの腕に治まった。

「手綱をしっかり持て。追い風が来る」真紅の奴の一言で、馬が軽やかに駆け始める。
景色が深い緑一色に染まる。
かなりのスピードが出ているのだろう。
恐ろしく速い───と思う。
だが、呼吸など苦しくも何もない。精霊によるものなのか?

長く駆けていた気もするし、一瞬のようにも思える。

そして、馬がゆっくりとスピードを落として止まる。

その先の光が差し込んでいる場所は、そこだけ枝葉がなくぽっかりとあいた空間から空が見える。
白亜の神殿の様な建物に光が降り注いでいるかのようだ。

風が動く。
一瞬目を閉じてしまった。
あ、なんだ?

ルナの側に水色の長身の男とブラウンの短髪でガタイの良い男。明るい緑色の長い髪の華奢な…男?
が集まっている。
真紅の男が、ルナを抱きかかえ馬上から飛び降りた。



「オリヴィの子だな。ああ、そっくりだな。愛しい子よ」

そう言って、真っ黒の服を身に纏い、瞳も黒布で隠した小柄な外見だけは少年のような、だが恐ろしい空気を纏ったが現れた。













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