【本編完結】イケメンの皆様、主人公はあちらですよ。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
10 / 129
第2章 パルムの樹と精霊

1

しおりを挟む

さっさと解呪させないと、俺の立場が悪くなるんだ。
メガネちびじゃなくて、ルナだったな……

小さいくせに歯向かうから、ムカついた。

だからって、怪我をさせたかったわけじゃない。

呪いを受けてから、魔術が暴走するようになった。魔力量が安定せずに急激に減って枯渇しそうになる。
呪い痕に激痛が走ると手が痺れてコントロールが効かない。

精霊の目で診てもらえるように、父上が頼んでくれたんだ。
フォレスト辺境伯に学園生の頃、父上は護衛兼側近をしてもらっていたそうだ。
歳が近かった為、兄のような存在なのだと、言っていた。
口が堅く最も信頼出来る友だからこそ、預けられたのだ。
第1王子が呪われているなど知られてはならない。とりあえず、体調不良での療養になっている。
治療が出来ないか?一縷の望みをかけて辺境まで来る事になった。

フォレスト領は、思った以上に整備されていて綺麗だった。
港もあるからか、活気に満ちていて王都に比べれば小さいけど、治安の良さが際立つ。隣接領のフォーマルハウト侯爵とも関係が良く息子同士も交流している。

それにしても……
『ルナは可愛いから手を出さないで下さいね』
なんて念押しされて、シリウスのに会うのを楽しみにしてたのに、フォレスト辺境伯そっくりで、揶揄われたと気付いて腹が立つ。
可愛い要素がない。
辺境伯にそっくりなんだから、騎士になったら、凛々しくカッコよくなる気はする。
他の兄弟に比べて小さくて華奢な手足とかが可愛いのだろうか?
確か、俺より3歳上のシリウスはルナの兄ダレンと同い年だ。
だから、弟みたいに可愛く感じるのかな?

シリウスは、第1王子の側近候補で俺とも交流がある。
治ったら帰りにフォーマルハウト家に寄って文句言ってやるからな。


ダメだ、やっぱり気になる。
背中は、打身くらいだから、大丈夫って言ってたけど……熱が高いから昨日は会わせてもらえなくて。
謝る事が出来なかった。

それに、血を見た時の異常な反応。胸を締め付けられる様な悲鳴。護衛が、あっという間に抱きかかえて連れて行ってしまった。

馬車の事故の件を聞いた。
トラウマ……だよな。
当たり前か、血だらけの死んだ母親に抱き締められて発見されるまで2日位かかったと言っていた。


あーもう、なんでこんなに気になるんだ。

元気になったら、は優しくしてやるか。

俺の方がデカいんだし。

なんか、落ち着かない。
行き損ねたパルムとか言う樹の所に行ってみるか。

見えているから迷うわけないしな。
部屋に篭っているのも、俺らしくない。

よし、そうと決まれば気分転換だ。


従者も護衛もいらない。
多分、距離を空けてついてくるだろう。

ドアを開けて、フォレスト辺境伯に一言伝えてもらうことにした。
「庭を散策する」

余計なことは、言わなくて大丈夫だろう。


本当に、デカい樹だな。見えてるのに遠い。
チビのくせに案内するとか余計な事言うなよな。
そしたら、怪我なんて……

「はぁ。俺のせいだな」


ようやく樹に近づく。
誰かいる──

光沢のある白いシャツに黒のゆったりとしたズボン。
ズボンは腰帯で巻かれてて、細さが際立つ。

ミルクティー色の柔らかそうな髪に光が当たって、艶やかだ。
肩より長い髪が風に揺れる。


なんだ?
周りが、キラキラしている。

精霊か?

俺は、王家の中でも珍しく宝石眼って呼ばれるサファイアブルーの瞳だ。
王家は青色の瞳が多い。
透明度の高い澄んだ色味を宝石に例える。宝石眼は、見た目だけで無く精霊などの気配を感じ取ることが出来る、特別な瞳の総称だ。他にもルビー、アメジスト、ガーネット色等もある。

あいつの周りの空気が澄んでいて、光の粒がキラキラと見える。

使用人?なわけないな。
騎士見習い?魔術師でもないか。

大樹の側だから小さく見えるのかと思ったけど、実際小さいな。

「おい。そこで何をしているんだ?」

つい、声をかけた。

一瞬肩をビクッとさせ、慌てて振り返った。

色白で──
少しだけ垂れ目の大きな瞳。
エメラルドグリーン──宝石眼だ。

顔が少しだけ紅潮していた。
薄いピンク色の可愛らしい唇。





一瞬で俺の方が真っ赤になった。
ヤバい、なんで俺。顔が熱い。

か、可愛い!!!
誰だ?こんな可愛い子を見た事がない。


俺を見て、目を見開き、慌てて走ってきた。

「レグルス殿下!顔が真っ赤です。どこか具合でも悪いのですか!?」

「なんで、俺の名前を?」
驚いた。なんで俺の事を知っているんだ!?

「当たり前です。王子様なんだから。それより、誰か──早く来て!」
どこからともなく、ザッと護衛が3人姿を現す。

うおっ。

驚いたじゃないか、ビビらせるな。

オロオロしている間に、抱きかかえられた。

「ちょ、ちょい待っ」
なんで、横抱き?お姫様抱っこされてしまった。

「殿下、失礼致します。医務室へ参ります」

護衛がその一言で、この子に一礼をして、ダッシュで邸に向かって走りだした。

うそ。名前、名前が知りたい。

このヤロー離せ!!

あまりのスピードに意識が飛びそうだ。胃が圧迫される。苦しい。

また、会いたい。
可愛い、名前をって──

駄目だ、本当に気持ちわるい……








しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...