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第1章 思い出した!
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♯トラウマ回です。
苦手な方は、回避をお願いします。
『あんたなんて、産まなきゃ良かった──』
頭の中が掻き回されて、激しく揺さぶられているような気がする。
目が回る。
嫌だ。もう、やめて───
身体が、ガクガクと震え始めた。
胃の中から気持ち悪さが込み上げる。
おかあさんが──いる。
すぐ、怒られる。
頬を叩かれた。
唇が切れた。泣いたらもっと叩かれるから。声を出さないように、泣かないように必死に堪える。
『月、あんたさえいなければ!あの人に捨てられなかったのよ!邪魔ばっかり、私の人生返してよ!あんたなんか、あんたなんか!!
産まなきゃ、良かった!!』
腕を引っ張られて、またベランダへ追い出される。
でも、今日は嫌だ。
だって、雷が鳴ってる。
鍵をかけられた。
窓を必死に叩く。雑に閉められたカーテンの隙間から部屋の明かりが漏れている。
激しい雨。横風と共に打ちつけて
パジャマは、ぐっしょりと濡れてしまう。
ドォォォォ──ン
轟音とともに閃光が走る。
怖い、怖い、怖い──
寒いよ、入れて。お母さん部屋に入れて。
良い子にするから。
部屋の隅で何も音を立てないようにするから。
嫌だっ。何で真っ暗になったの?
電気を消したの?
玄関のドアから光が漏れてまた閉じる。
うそだ。室内から出てった?
あ。
慌てて、道路の方を見ると車に乗り込むお母さんが見えた。
3階だから、飛び降りる事も出来ない。
怖い。助けて。置いてかないで。
おかあさん───!!
いやだ、捨てないで。
これは、僕の前世だ。
おかあさんに、捨てられた日の事だ。
翌日……隣の人の通報で、施設に保護された。
なんで、思い出させるの?
映像が切り替わる──
馬車の外から聞こえる雷の轟音。叩きつけるような雨が降り続く。
震えが止まらない。雷は嫌い。
そうだ。近くの木に雷が落ちたんだ。馬が怯え、暴走した。
身体が一瞬浮き上がり、お母様が僕を抱き締めた。馬車が転げ落ちて行ってるのだろう、右や左にバウンドして狭い壁に叩きつけられる。
どれだけ時間が経ったのか分からなかった。
ようやく、振動が止まった事に気がついた時、お母様は全く動かなかった。
お母様の額から流れる鮮血。
服も真っ赤に染まっている。
何か、刺さってる?
嫌だ。嫌だ。
お母様──置いていかないで。
お父様早く早く助けに来て──。死んじゃう、お母様が──。
だって、今世のお母様は僕の事大好きって言ってくれたんだ。
僕は、産まれて来ない方がいい子だったのに。
あの時、転生させてもらったせい?
僕の命をお母様にあげて下さい。
誰か、助けて。
そう願った後のことは記憶が曖昧だった。
でも、お母様は助からなかった。
「ルナ!!」
さっきまで寒かったのに熱くて苦しくて、全身が汗でびっしょりになってて。
息が、苦しい。
思わず手を伸ばす。誰か。
握り返してくれる大きな手は…
「お、おとう、さま?」
「そうだよ。ルナ。熱が高い。
汗もひどいから、一度クリーンをかけるよ?」
ふわって優しく魔術の風に包まれる。ベトベトの体から汗が消える。
冷たいタオルがおでこに乗せられる。
あ、レグルス殿下の怪我…
「殿下…の怪我は?」
「殿下は、怪我はしてないよ。
ルナを庇ってたけど、その上を護衛が防いだ。その彼が、腕を切ってね。その血が殿下にかかったんだ。
レグルス殿下が頭を怪我したと思ったんだろ?大丈夫だよ。もちろん護衛の怪我も治療済みだ」
優しくゆっくりと、お父様が話してくれる。
本当に大丈夫なんだ。
良かった──
「大丈夫。朝までここにいる。
安心して寝なさい」
「手を、離さないでお父様」
「ああ」
前世の僕は、存在してはいけなかった。
でも、今世はお父様やお兄様がいてくれる。
お母様を助けられなかったけど──僕が死んでお母様が生きてた方がきっと良かったんだろうけど…これは、小説のストーリーで避けられない過去なんだと思う。
確か殿下達と幼馴染の僕は、事故のせいで血と雷が怖くて臆病な役だった。
本当に、避けれなかったのかな?
もっと早く記憶が戻れば例え助けられなくても、もう少しお母様と一緒にいられたんじゃないかな?
回避しても、何処かで修正力とか強制力が働く?
転生して、記憶が戻る意味は──抵抗しろって事じゃないのかな。
だったら、これからは出来る事なんでもする。お父様とお兄様それに、幼馴染達の役に立ってあげたい。
それで、傷つくのが僕ならいいんだ。
誰かが犠牲にならなきゃいけないなら、お母様に助けてもらった命で、役に立ちたい。
だから、お父様。僕の事捨てないで。
お父様の大きな手。
安心すると、目を開けていられなくてまぶたを閉じた。
ちゃんと、思い出そう。
レグルス殿下は、攻略対象だから。
苦手な方は、回避をお願いします。
『あんたなんて、産まなきゃ良かった──』
頭の中が掻き回されて、激しく揺さぶられているような気がする。
目が回る。
嫌だ。もう、やめて───
身体が、ガクガクと震え始めた。
胃の中から気持ち悪さが込み上げる。
おかあさんが──いる。
すぐ、怒られる。
頬を叩かれた。
唇が切れた。泣いたらもっと叩かれるから。声を出さないように、泣かないように必死に堪える。
『月、あんたさえいなければ!あの人に捨てられなかったのよ!邪魔ばっかり、私の人生返してよ!あんたなんか、あんたなんか!!
産まなきゃ、良かった!!』
腕を引っ張られて、またベランダへ追い出される。
でも、今日は嫌だ。
だって、雷が鳴ってる。
鍵をかけられた。
窓を必死に叩く。雑に閉められたカーテンの隙間から部屋の明かりが漏れている。
激しい雨。横風と共に打ちつけて
パジャマは、ぐっしょりと濡れてしまう。
ドォォォォ──ン
轟音とともに閃光が走る。
怖い、怖い、怖い──
寒いよ、入れて。お母さん部屋に入れて。
良い子にするから。
部屋の隅で何も音を立てないようにするから。
嫌だっ。何で真っ暗になったの?
電気を消したの?
玄関のドアから光が漏れてまた閉じる。
うそだ。室内から出てった?
あ。
慌てて、道路の方を見ると車に乗り込むお母さんが見えた。
3階だから、飛び降りる事も出来ない。
怖い。助けて。置いてかないで。
おかあさん───!!
いやだ、捨てないで。
これは、僕の前世だ。
おかあさんに、捨てられた日の事だ。
翌日……隣の人の通報で、施設に保護された。
なんで、思い出させるの?
映像が切り替わる──
馬車の外から聞こえる雷の轟音。叩きつけるような雨が降り続く。
震えが止まらない。雷は嫌い。
そうだ。近くの木に雷が落ちたんだ。馬が怯え、暴走した。
身体が一瞬浮き上がり、お母様が僕を抱き締めた。馬車が転げ落ちて行ってるのだろう、右や左にバウンドして狭い壁に叩きつけられる。
どれだけ時間が経ったのか分からなかった。
ようやく、振動が止まった事に気がついた時、お母様は全く動かなかった。
お母様の額から流れる鮮血。
服も真っ赤に染まっている。
何か、刺さってる?
嫌だ。嫌だ。
お母様──置いていかないで。
お父様早く早く助けに来て──。死んじゃう、お母様が──。
だって、今世のお母様は僕の事大好きって言ってくれたんだ。
僕は、産まれて来ない方がいい子だったのに。
あの時、転生させてもらったせい?
僕の命をお母様にあげて下さい。
誰か、助けて。
そう願った後のことは記憶が曖昧だった。
でも、お母様は助からなかった。
「ルナ!!」
さっきまで寒かったのに熱くて苦しくて、全身が汗でびっしょりになってて。
息が、苦しい。
思わず手を伸ばす。誰か。
握り返してくれる大きな手は…
「お、おとう、さま?」
「そうだよ。ルナ。熱が高い。
汗もひどいから、一度クリーンをかけるよ?」
ふわって優しく魔術の風に包まれる。ベトベトの体から汗が消える。
冷たいタオルがおでこに乗せられる。
あ、レグルス殿下の怪我…
「殿下…の怪我は?」
「殿下は、怪我はしてないよ。
ルナを庇ってたけど、その上を護衛が防いだ。その彼が、腕を切ってね。その血が殿下にかかったんだ。
レグルス殿下が頭を怪我したと思ったんだろ?大丈夫だよ。もちろん護衛の怪我も治療済みだ」
優しくゆっくりと、お父様が話してくれる。
本当に大丈夫なんだ。
良かった──
「大丈夫。朝までここにいる。
安心して寝なさい」
「手を、離さないでお父様」
「ああ」
前世の僕は、存在してはいけなかった。
でも、今世はお父様やお兄様がいてくれる。
お母様を助けられなかったけど──僕が死んでお母様が生きてた方がきっと良かったんだろうけど…これは、小説のストーリーで避けられない過去なんだと思う。
確か殿下達と幼馴染の僕は、事故のせいで血と雷が怖くて臆病な役だった。
本当に、避けれなかったのかな?
もっと早く記憶が戻れば例え助けられなくても、もう少しお母様と一緒にいられたんじゃないかな?
回避しても、何処かで修正力とか強制力が働く?
転生して、記憶が戻る意味は──抵抗しろって事じゃないのかな。
だったら、これからは出来る事なんでもする。お父様とお兄様それに、幼馴染達の役に立ってあげたい。
それで、傷つくのが僕ならいいんだ。
誰かが犠牲にならなきゃいけないなら、お母様に助けてもらった命で、役に立ちたい。
だから、お父様。僕の事捨てないで。
お父様の大きな手。
安心すると、目を開けていられなくてまぶたを閉じた。
ちゃんと、思い出そう。
レグルス殿下は、攻略対象だから。
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