4 / 129
第1章 思い出した!
2
しおりを挟む ……全部、こいつが手配したのか?
二人は政略結婚である。
アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。
しかし、その経緯は知らない。
両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。
どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。
それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。
……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。
そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。
これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。
「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」
ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。
「伯爵家から?」
アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。
「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」
ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。
カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。
伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。
「そういえば送られてきていたな」
アルバートはようやく思い出したようだ。
……嫌な予感がする。
ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
二人は政略結婚である。
アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。
しかし、その経緯は知らない。
両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。
どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。
それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。
……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。
そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。
これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。
「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」
ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。
「伯爵家から?」
アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。
「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」
ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。
カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。
伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。
「そういえば送られてきていたな」
アルバートはようやく思い出したようだ。
……嫌な予感がする。
ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
119
お気に入りに追加
5,768
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる