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時戻り後の世界
49.運命の日②
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扉の方へと一歩踏み出すと、今度は後ろから抱きしめられた。
「──もう。大丈夫です。男のΩだから嫌だったのだろうと思ってたんです。責務を果たそうとして下さってたこと、疑ってすみません。でもこれで……安心して戦いに出れます。──他国の方を巻き込みたくないので、Ωとかαじゃなく、ただこの国の王子として責務を果たしてきます」
ビクリと、体を震わせたエリオスの腕が緩んだ。腕から逃れて距離をとる。
彼女が運命でないのなら、他に運命の人がいるのかもしれない。どうかエリオス様が、新しい未来で幸せになって欲しい。
ライナは、いずれエリオス様に返そう。ノエルは、きっと双子の兄たちの護衛にも向くだろう。陛下も皇后も、安心してこの王国をアレクとレオンに託せるはずだ。
ここに戻って三年が過ぎてこの日を迎える。僕に残された二年で、世界を巡り姿を消そうか? ここに居てただ弱って衰弱死などしたら、過去に戻るとか言い出しかねない。
(でももう……そんなこと出来ないだろうけど)
時戻りに納得して、代償を知り契約したのはサフィラなのだ。そしてライナを犠牲にしないようにさらに、寿命を差し出した。それについては後悔はない。
一人で最期に魔の森に行ってみようかな。優しい金の双眸の魔女が迎えに来てくれるかも知れない。仕方がないと言って手を差し伸べてくれそうで思わず笑みがこぼれた。
ちらり……とエリオス様の表情を伺う。ここで死ぬ気はないけれど、突然の別れだってある。
だから……。
「──全部、忘れて下さい。婚約もなかったことに。僕は、Ωの妃になんてなりたくないから。さよなら……エリオス・ロナ・アベリア殿下」
声は震えていないと信じたい。少しは王子らしく振る舞えただろうか?
防御になる装飾品は、大切な人たちに渡してある。アレクとレオンは防壁の確認と、第二と第三を率いているはず。僕たちは陛下の部屋へ向かう。
「ライナ。カーティスとダンテの影たちを捕縛に行こう」
敵の援護阻止を成功したと、さらに別ルートの侵入者捕縛との連絡が入る。アレクもレオンも怪我などしていないらしい。 魔法を封じられることなく動けているようで、ホッとした。あの頃より、きっとずっと兄様たちは強い。
陛下の部屋の近くでは、近衛と第一騎士団長と精鋭部隊でフードの男たちが、混戦していた。
「なぜ、動ける!」
この声……覚えている。アレクとレオンを痛めつけた奴だ。身体の大きな熊男もいる。さらにそばにいるのは、カーティスだろう。陛下の剣が、豪快に振り下ろされた。熊男がぐぅっと唸り、剣を受け止める。
陛下は続けて、熊男の顎に蹴りを入れると、ドンっと壁の方へ奴を蹴飛ばした。
ライナが、一瞬で間合いをつめて、捕縛の魔法をかけ、サフィラ作った封魔具を手首に付けると熊男が意識を失った。
「な……」
バタバタと膝から崩れ落ちていくフードの集団を追い詰めていく。
「投降……しなくていいですよ。信用出来ないから拘束させてもらいます。ノエルそっちを捕まえて」
ノエルが、サフィラの言葉に反応してくれる。あの声の主でリーダー的な男を拘束した。カーティスは投降し膝をつくと、第一騎士団長から拘束されていた。ほぼ掌握したと皆が思った時、リーダー的な男が封魔具を解除したのか、サフィラの目の前に移動し押し倒された。
ダンッ!!!床に強く倒されて、サフィラは背中と頭をうちつけた。
「ゔっ……」
「サフィラ様!!」
「サフィーー」
「Ωは、道具だ……」
目が霞んで周りが良く分からない。必死にもがいたが、α相手では力の差は歴然だった。サフィラの腕に、何かが突き刺さり痛みが走る。
「いっ……。ああああ」
「αだらけの中で、犯されてしまえ」
抵抗をやめたサフィラが、ふッと笑う。
「何を笑って……?」
「僕も、貴方だけは許せないから」
目の前の男の顔が歪む。なぜ動けないか分かっていない。身に付けた装飾品は……単なる飾りじゃない。サフィラは刺された手をゆっくりと持ち上げて男の胸に当てる。
「魔法痕……死なない程度にね」
光が集まり繊細な魔法陣は、青炎を纏い一気に高温になり、肺の手前までを焼いた。
「グァァァァァァ……」
身をよじることも出来ずに絶叫する男。縫い付けられたかのように、ただ悶え続けている。
男の口から涎が落ちそうになり、突然現れた銀髪の騎士が、鞘付きの剣でサフィラの上にいた男を叩き飛ばした。
過去に兄王子達の肺を焼いた魔法痕、これだけは絶対に許せなかった。多少でも同じ目に合わせるために、油断させ接触したのだ。
(覚悟はしてたけど、毒と、強制発情薬……こっちは原液かも知れない)
毒耐性は人よりもある。簡単に死にはしないだろう。痛む腕は青く痣のようなものが浮き出ていた。サフィラは一気に上がる体温に震えが止まらない。
(不味い……αだらけか)
迷惑になる、早くここから……逃げよう。そう思ったのに誰かに抱きかかえられてしまう。
「サフィ」
名を呼ぶ人の銀糸の髪がアベリアブルーに戻っていた。
「エ、リオスさ……ま?」
「スノーリルの王。サフィラ殿下を連れていく。念の為に医師もすぐに手配してくれ。サフィラは本日を持って成人した。俺の番を妃として迎える」
「──つが……い?」
体は熱をもち、フェロモンが溢れていく。逃げたいのに、エリオスの香りが強くなり逃げることが出来なくなった。
「──もう。大丈夫です。男のΩだから嫌だったのだろうと思ってたんです。責務を果たそうとして下さってたこと、疑ってすみません。でもこれで……安心して戦いに出れます。──他国の方を巻き込みたくないので、Ωとかαじゃなく、ただこの国の王子として責務を果たしてきます」
ビクリと、体を震わせたエリオスの腕が緩んだ。腕から逃れて距離をとる。
彼女が運命でないのなら、他に運命の人がいるのかもしれない。どうかエリオス様が、新しい未来で幸せになって欲しい。
ライナは、いずれエリオス様に返そう。ノエルは、きっと双子の兄たちの護衛にも向くだろう。陛下も皇后も、安心してこの王国をアレクとレオンに託せるはずだ。
ここに戻って三年が過ぎてこの日を迎える。僕に残された二年で、世界を巡り姿を消そうか? ここに居てただ弱って衰弱死などしたら、過去に戻るとか言い出しかねない。
(でももう……そんなこと出来ないだろうけど)
時戻りに納得して、代償を知り契約したのはサフィラなのだ。そしてライナを犠牲にしないようにさらに、寿命を差し出した。それについては後悔はない。
一人で最期に魔の森に行ってみようかな。優しい金の双眸の魔女が迎えに来てくれるかも知れない。仕方がないと言って手を差し伸べてくれそうで思わず笑みがこぼれた。
ちらり……とエリオス様の表情を伺う。ここで死ぬ気はないけれど、突然の別れだってある。
だから……。
「──全部、忘れて下さい。婚約もなかったことに。僕は、Ωの妃になんてなりたくないから。さよなら……エリオス・ロナ・アベリア殿下」
声は震えていないと信じたい。少しは王子らしく振る舞えただろうか?
防御になる装飾品は、大切な人たちに渡してある。アレクとレオンは防壁の確認と、第二と第三を率いているはず。僕たちは陛下の部屋へ向かう。
「ライナ。カーティスとダンテの影たちを捕縛に行こう」
敵の援護阻止を成功したと、さらに別ルートの侵入者捕縛との連絡が入る。アレクもレオンも怪我などしていないらしい。 魔法を封じられることなく動けているようで、ホッとした。あの頃より、きっとずっと兄様たちは強い。
陛下の部屋の近くでは、近衛と第一騎士団長と精鋭部隊でフードの男たちが、混戦していた。
「なぜ、動ける!」
この声……覚えている。アレクとレオンを痛めつけた奴だ。身体の大きな熊男もいる。さらにそばにいるのは、カーティスだろう。陛下の剣が、豪快に振り下ろされた。熊男がぐぅっと唸り、剣を受け止める。
陛下は続けて、熊男の顎に蹴りを入れると、ドンっと壁の方へ奴を蹴飛ばした。
ライナが、一瞬で間合いをつめて、捕縛の魔法をかけ、サフィラ作った封魔具を手首に付けると熊男が意識を失った。
「な……」
バタバタと膝から崩れ落ちていくフードの集団を追い詰めていく。
「投降……しなくていいですよ。信用出来ないから拘束させてもらいます。ノエルそっちを捕まえて」
ノエルが、サフィラの言葉に反応してくれる。あの声の主でリーダー的な男を拘束した。カーティスは投降し膝をつくと、第一騎士団長から拘束されていた。ほぼ掌握したと皆が思った時、リーダー的な男が封魔具を解除したのか、サフィラの目の前に移動し押し倒された。
ダンッ!!!床に強く倒されて、サフィラは背中と頭をうちつけた。
「ゔっ……」
「サフィラ様!!」
「サフィーー」
「Ωは、道具だ……」
目が霞んで周りが良く分からない。必死にもがいたが、α相手では力の差は歴然だった。サフィラの腕に、何かが突き刺さり痛みが走る。
「いっ……。ああああ」
「αだらけの中で、犯されてしまえ」
抵抗をやめたサフィラが、ふッと笑う。
「何を笑って……?」
「僕も、貴方だけは許せないから」
目の前の男の顔が歪む。なぜ動けないか分かっていない。身に付けた装飾品は……単なる飾りじゃない。サフィラは刺された手をゆっくりと持ち上げて男の胸に当てる。
「魔法痕……死なない程度にね」
光が集まり繊細な魔法陣は、青炎を纏い一気に高温になり、肺の手前までを焼いた。
「グァァァァァァ……」
身をよじることも出来ずに絶叫する男。縫い付けられたかのように、ただ悶え続けている。
男の口から涎が落ちそうになり、突然現れた銀髪の騎士が、鞘付きの剣でサフィラの上にいた男を叩き飛ばした。
過去に兄王子達の肺を焼いた魔法痕、これだけは絶対に許せなかった。多少でも同じ目に合わせるために、油断させ接触したのだ。
(覚悟はしてたけど、毒と、強制発情薬……こっちは原液かも知れない)
毒耐性は人よりもある。簡単に死にはしないだろう。痛む腕は青く痣のようなものが浮き出ていた。サフィラは一気に上がる体温に震えが止まらない。
(不味い……αだらけか)
迷惑になる、早くここから……逃げよう。そう思ったのに誰かに抱きかかえられてしまう。
「サフィ」
名を呼ぶ人の銀糸の髪がアベリアブルーに戻っていた。
「エ、リオスさ……ま?」
「スノーリルの王。サフィラ殿下を連れていく。念の為に医師もすぐに手配してくれ。サフィラは本日を持って成人した。俺の番を妃として迎える」
「──つが……い?」
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