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時戻り後の世界

42.エリオ・ロナ・ブルーム①

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 銀髪の魔法師エリオ・ロナ・ブルームは、サフィラの研究室所属となった。そのことで、絡まれることが時々起きてしまう。


 すべては嫉妬に起因する。スノーリルの宝石と呼ばれるサフィラに憧れ近づきたい者は多い。

 アベリア帝国の皇太子と婚約をしていても、があるのなら隙があるかも知れないとでも勘違いするのだろう。
 今は王位継承権をなくしたが、αが生まれ子供の才能次第では復権できるかも知れない。確かに正統な血筋のサフィラは、後継者の一人に戻るのは間違いないのだから。


 エリオ・ロナ・ブルームは、研究室に行く前に呼び止められた。今は一般の研究員だから、無視するわけにはいかない。実際護衛は自国からの一人と、スノーリルからは二人ほど影をつけられていた。

 サフィラには、堂々といつもの二人が護衛としてついている。
 ノエルがαなのは気に入らないが、ライナからの信頼がなぜか高くなっていてエリオスも納得するしかない。確かに実力は底知れない。

(何か、あったのかもしれない)


「おい、無視するなよ。エリオ・ロナ・ブルーム。どのような卑怯な手を使って、サフィラ殿下の研究室に入ったんだ」

 ブルームの家名は、遠縁の魔法師一族の伯爵家のものだ。孤児を養子縁組をした書類も作成しているので、調べられても問題がない。

 ただロナというのは、アベリア帝国皇族としてエリオスがセカンドネームとして名付けられたものだ。
『エリオス・ロナ・アベリア』が正式な名前だ。『ロナ』と呼んで欲しい人は、サフィラただ一人。特別な人にだけ許す大切な名前。

 呼んで欲しさゆえに、留学中の名前にしたのだが、他人に呼び捨てられると不快しかない。

「──卑怯な手とは?」
「か、金を積んだとか。裏で手を回したのだろう?隣国の伯爵家風情が、サフィラ殿下に近づくなどありえない」

 そう声をあげた青年は、後ろに三人も従えてに言いがかりをつけにきたのだ。どちらが卑怯か傍目に分かるものなのに、呆れて話す気にもならない。

「試験の実力以外に、理由はないだろう。ああ、専攻の毒性薬物の研究資料をスノーリル教授が気に入ってくれたとも聞いている。それのどこが卑怯なのかな?」

「それは……サフィラ殿下は、研究員を取らないと言って、すべて断っていたからだ」

「興味があれば、変わるんじゃないか?研究者として、追求心は止められない。それに、お金を積んだ研究員をとるような人じゃないことを、否定するのか?」

「そう言う意味ではない。生意気だなお前!Ωの殿下とあわよくばと、狙っているのだろう!!」

 青年の魔力の流れが、手の先に集まって行くのがわかる。避けるべきか、さてどうしようかと思った時、ノエルが現れてその青年の手首を押えた。

「えっ、あ……近衛のロスクーノ団長」
「何をしてるのかな?」

 ノエルは笑顔に見えるが、目は笑っておらず圧が強い。

「なんでもありません。留学生の態度が悪く注意をしただけです」

 青年は、ノエルにも敵意をむき出しにしたままだ。辺境伯爵の子息相手に怖い者知らずで驚いてしまう。

「ブルーム、本当?」
 知っていて聞いてくるのが、忌々しいが、ここは素直にエリオスは一度頷いた。

「ですが、団長。第三者に判定してもらわないと公平さを欠くかもしれません」

 サフィラにもらったペン型の魔導具をポケットから取り出した。

「ああ、それ再生機だね。サフィラ殿下の新作の魔導具」

 キョトンとした顔をした青年が、再生機?と呟いた。

「試作品から、最近製品化したそうですよ。音声と画像を撮りためてくれるんです。軽く二日分記録します。講義の録画用だったんですけどね。せっかくなので見ましょう」

「えっ……」

 カチッとペンをノックすると、壁に先ほどの様子が映し出された。どんどん青年と他の三人顔色は悪くなっていく。

コツコツと足音が聞こえて、近くで止まった。

「研究者として、研究のためにブルームには、許可をしたんだ。」

 困った顔をしたサフィラが、ライナと戻ってきた。相変わらず可愛いなと見つめると、エリオスからの視線をずらされてしまった。

 青年たちも、研究室に入りたいと言ったが、専攻も違うのでサフィラは断った。それでもしつこく言いよってきたので、サフィラが一つ提案をする。

「学ぶものが違うからと言っても納得してくれないのかな? なら、毒草の味見の実験の被検体になって欲しい。それならいつでも歓迎する。死ぬ一歩手前の量とか、飲み合わせの研究につきあってくれる? 失敗しても構わないって、同意書にサインをしてね」

 彼らは、慌てて去って行った。

   正直、被検体と言うのは本心かも知れないと、サフィラを見た。困ったように笑う顔は……どちらなのか?
   押しかけたのは否めないが、研究室では、思いのほか楽しい時間を過ごしている。サフィラを守る為に来たのに、こんなに長くそばにいられることが、幸せでしかたがないのは、不謹慎かも知れない。
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