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時戻り後の世界
26.王女の帰国
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その部屋には、王女が連れて来ていた特使や文官、侍女たちが既に集められていた。護衛騎士たちは、外で第一騎士団の練習場に集められて、身分証と手荷物を確認をされている最中らしい。
ジェシカと付添人と護衛が合流し、スノーリル王国の文官にレオン、エリオスによって今後の対応の話が進んでいく。
「一体、何を理由にこのような……」
特使が、突然のことに驚いている。ジェシカは、この瞬間に誰を切り捨てるか判断し始める。
専属護衛は腕が立つ。暗部からの引き抜きでジェシカの犬のような存在。これを取られるのは惜しい。
ある程度権力が無ければ、薬や魔導具を揃えられない事を考慮するなら……中堅に罪を擦り付けるのがいい。主人の為に死ねば、残された家族に功労金を渡す。それ用の侍女や従者はそばにいる。
「私を疑っているのですか? 私自身Ωです。ネックガードに抵抗があり、抑制剤を多く飲んでこちらに参加いたしました。どうしても、皇太子殿下にお会いしたかったからです」
「なら、なぜ魔法を封じる魔導具を持っているのでしょうか? 発情の抑制剤ではなく、促進剤を付添人が持っている理由も確認しないといけません。我々が不正しないように記録媒体で録画をします。──冤罪は作りませんので安心して下さい」
スノーリル王国の宰相閣下の隣りにいる、宰相補佐の青年がそう言った。
ジェシカは、扇で慌てて口元を隠した。カーティスを見て笑いそうになってしまったから。帝国やダンテだったなら、有無を言わせず怪しきは全員斬首だろう。
(良かった、なんて甘い。武力の国と争いは避けたいのね。これなら最低限の犠牲で上手くいく)
結果──王女の恋を実らせようとした侍女達の暴走と認定。
処分は以下の通りに決まった。禁止薬剤や封魔具を持ち込んだ付添人と侍女二人が、罪人として帝国の法により処分される。
ダンテ王国に不可侵条約の見直しの提言の為、帝国に現国王の強制来訪命令。王女についてはスノーリル王国とアベリア帝国への公式非公式を問わず、この先二十年間謁見及び入国禁止となった。
「そんな……」
侍女たちの処分は想定内。まさか不可侵条約の見直しと、二十年先まで謁見禁止だとかありえない。有期刑の様な恩赦的要素はあるが、番として皇妃どころか、そんな年齢では側妃にもなれない。
「私と皇太子殿下と二人で話す時間を……いただけませんか?」
「断る──Ωの発情を促して誘惑されたら迷惑だ」
「ち、違います。それは誤解なんです。私を思って……気を利かせた者たちです。ここは異国の王国の法に従い、付添人もこちらの法で裁くのも納得しました。ですが、私の気持ち……」
「なら解決した。早く帰国の準備をすればいい」
「待って下さい。二十年も間謁見禁止などと……。私の気持ちは、届いてないのでしょうか? ですからその話を二人で」
「なぜ? 二人なる必要がある? 噂は聞いているだろう? 俺とサフィラの婚約はもうすぐ発表になる。わざわざ誤解を招く気もない」
ジェシカは扇で顔を隠し、唇をきつく噛んだ。
「お、男のΩなんて、皇太子殿下に相応しくありません。皆、私の方が良いと言っています」
その一言を発した後、ジェシカは後悔する。空気が凍るくらいに冷たい視線が、エリオスだけではなく、レオンからも送られていた。
「皆?レオン殿下、サフィラ殿下は俺に相応しくないか?ここにいる近衛騎士や宰相閣下もそう思うか?」
「王女は何か誤解をしているが逆だ。相応しいどころか、もったいないくらいだ。アレクもそう言うはずだ」
「──可能なら、連れて行かないで欲しいものです」
宰相閣下の言葉に騎士達も同意を示すように頷く。
「自国の者の意見など参考になりません。それで──私が劣るというのですか?」
「劣るでしょう。貴方の方が良いという自国の者意見を参考にしているのですから」
ライナの言葉に吹き出す者もいて、王女は羞恥で顔を歪ませた。
「俺は傲慢な者はいらない。自分にとって一番大切な人を選んだ。この先邪魔をし、サフィラを傷付けるようなら容赦はしない」
「分かりましたわ。エリオス殿下が後悔されませんように」
ジェシカは、見事なカテーシーを見せてこの場を後にする。
早朝、スノーリル王国の陛下と宰相閣下に挨拶後、速やかに帰国した。
ジェシカと付添人と護衛が合流し、スノーリル王国の文官にレオン、エリオスによって今後の対応の話が進んでいく。
「一体、何を理由にこのような……」
特使が、突然のことに驚いている。ジェシカは、この瞬間に誰を切り捨てるか判断し始める。
専属護衛は腕が立つ。暗部からの引き抜きでジェシカの犬のような存在。これを取られるのは惜しい。
ある程度権力が無ければ、薬や魔導具を揃えられない事を考慮するなら……中堅に罪を擦り付けるのがいい。主人の為に死ねば、残された家族に功労金を渡す。それ用の侍女や従者はそばにいる。
「私を疑っているのですか? 私自身Ωです。ネックガードに抵抗があり、抑制剤を多く飲んでこちらに参加いたしました。どうしても、皇太子殿下にお会いしたかったからです」
「なら、なぜ魔法を封じる魔導具を持っているのでしょうか? 発情の抑制剤ではなく、促進剤を付添人が持っている理由も確認しないといけません。我々が不正しないように記録媒体で録画をします。──冤罪は作りませんので安心して下さい」
スノーリル王国の宰相閣下の隣りにいる、宰相補佐の青年がそう言った。
ジェシカは、扇で慌てて口元を隠した。カーティスを見て笑いそうになってしまったから。帝国やダンテだったなら、有無を言わせず怪しきは全員斬首だろう。
(良かった、なんて甘い。武力の国と争いは避けたいのね。これなら最低限の犠牲で上手くいく)
結果──王女の恋を実らせようとした侍女達の暴走と認定。
処分は以下の通りに決まった。禁止薬剤や封魔具を持ち込んだ付添人と侍女二人が、罪人として帝国の法により処分される。
ダンテ王国に不可侵条約の見直しの提言の為、帝国に現国王の強制来訪命令。王女についてはスノーリル王国とアベリア帝国への公式非公式を問わず、この先二十年間謁見及び入国禁止となった。
「そんな……」
侍女たちの処分は想定内。まさか不可侵条約の見直しと、二十年先まで謁見禁止だとかありえない。有期刑の様な恩赦的要素はあるが、番として皇妃どころか、そんな年齢では側妃にもなれない。
「私と皇太子殿下と二人で話す時間を……いただけませんか?」
「断る──Ωの発情を促して誘惑されたら迷惑だ」
「ち、違います。それは誤解なんです。私を思って……気を利かせた者たちです。ここは異国の王国の法に従い、付添人もこちらの法で裁くのも納得しました。ですが、私の気持ち……」
「なら解決した。早く帰国の準備をすればいい」
「待って下さい。二十年も間謁見禁止などと……。私の気持ちは、届いてないのでしょうか? ですからその話を二人で」
「なぜ? 二人なる必要がある? 噂は聞いているだろう? 俺とサフィラの婚約はもうすぐ発表になる。わざわざ誤解を招く気もない」
ジェシカは扇で顔を隠し、唇をきつく噛んだ。
「お、男のΩなんて、皇太子殿下に相応しくありません。皆、私の方が良いと言っています」
その一言を発した後、ジェシカは後悔する。空気が凍るくらいに冷たい視線が、エリオスだけではなく、レオンからも送られていた。
「皆?レオン殿下、サフィラ殿下は俺に相応しくないか?ここにいる近衛騎士や宰相閣下もそう思うか?」
「王女は何か誤解をしているが逆だ。相応しいどころか、もったいないくらいだ。アレクもそう言うはずだ」
「──可能なら、連れて行かないで欲しいものです」
宰相閣下の言葉に騎士達も同意を示すように頷く。
「自国の者の意見など参考になりません。それで──私が劣るというのですか?」
「劣るでしょう。貴方の方が良いという自国の者意見を参考にしているのですから」
ライナの言葉に吹き出す者もいて、王女は羞恥で顔を歪ませた。
「俺は傲慢な者はいらない。自分にとって一番大切な人を選んだ。この先邪魔をし、サフィラを傷付けるようなら容赦はしない」
「分かりましたわ。エリオス殿下が後悔されませんように」
ジェシカは、見事なカテーシーを見せてこの場を後にする。
早朝、スノーリル王国の陛下と宰相閣下に挨拶後、速やかに帰国した。
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