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時戻り後の世界
23.違和感②
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「夜遅くまで引き留めてごめんなさい。リナリル茶を飲んだらよく眠れるみたいだよ」
このままいたら、きっと嫌な顔をしてしまう。早くエリオスを帰らせようと勧めたお茶で、サフィラの方が眠くなり、うとうとしてきた。
(眠い……リナリル茶を久しぶりに飲んだから効いてる?)
今寝てもきっとまたすぐに目が覚めてしまう。寝るのが怖い。必死に眠気と戦っていると向かい合わせから隣に移動してきたエリオスに自然に抱きかかえられて、膝の上に横抱きにされてしまう。あわあわしていると、さらに密着するように抱き込まれ良い香りに包まれた。
(エリオス様の香りって、何の香水なんだろう。真似してみたけど、やっぱり違う。本当に香水じゃないのかな?)
妙に安心する体温に脱力した体を預けてしまえば、まぶたを開けておく力も残っていなかった。
「おやすみ。サフィ」
──心地よい声が聞こえたのに、返事一つ返せない。
エリオスの体温と心臓の音。落ち着く香りに包まれて、静かに意識が沈み始める。発情した時、もしかしたら奪い取ったかもしれないエリオス様の服からも同じ香りがした。
(落ち着く、気持ちいい。今日は……悪夢を見なくて済むかもしれない)
眠りに落ちていく中で、色んな気持ちが巡る。幼なじみで何かと構われて来た。一度は、和平の為と婚約を受け入れた人。側妃は作らない。皇妃は一人だけだと言ってくれたのは本当に嬉しかった。隣に立つ為に、少しでもふさわしくなるようにと、必死で努力をした日々を思い出す。
時戻りをした為に、今世ではまだ経験してないことも体に染み込んでいる。特に女性側のダンスは、エリオスの恥にならない様に必死で覚えたから、身についたままなのかも知れない。
あの時。運命の二人が結ばれただけ。それを応援するつもりが、身を守るアイテムならばと理由をつけてエリオスの用意したネックレスを身につけた。
僕が身につけるべきじゃないのに。
それでも綺麗なアベリアブルー色を皆に見せてしまったら、王女に取られてしまいそうで隠すようにしてたんだ。まさか輝石にキスを落とすなど想像するわけがない。王女の付添人も、もしかしたらそれを見て行動を起こそうとしたのかも知れない。
(でも二人は、運命じゃないの? )
過去と違う。その違和感にどうしたらいいのか分からなくて、戸惑うばかりだ。サフィラの行動が違うから周りも違ってきているのなら……何が正しいのだろう。
今を変える行動は必要である。変えてはいけない行動があるとしたなら、エリオスとの婚約を素直に受け入れた方がいいのだろうか? 同じ婚約内容を受けいれて、王女とエリオスの中を割く悪者になる方が、かえって盛り上がり二人は結び付くのかもしれない。
(だとしても嫌だな。あんな思い……二度もしたくないのに)
なら……いっそサフィラが運命の人を見つけたことにしたらどうだろう? 頭の中に過るのは、ライナとノエルだった。
(──ライナは駄目。今でも、エリオス様を尊敬しているのが分かるもの)
双子の兄の亡骸を、陛下と皇后の姿を朱に染まったあの場を……変えるためにここにいるのだ。あの最悪の誕生日を無事にこえたら運命が変わる。
運命の日までに、信頼できる者を味方に付けたい。
(巻き込んでも……いいのかな?多分ノエルは、事情を汲んでくれそう)
Ωの王子であるサフィラにも王位継承権を平等に与えた陛下にも、それを反対することなく見守って支えてくれた皇后にも感謝している。
兄たちと共にスノーリル王国と国民を守り発展させて行くのは、生まれた時からの使命だ。
だから王国の為なら政略結婚でも構わない。それでも、エリオスなら同じ様に王国を愛してくれて、サフィラをΩの道具として扱わないでいてくれると婚姻に期待をしてしまった。
αとΩは本物の運命には逆らえないのに。
「──エリオス様が、運命の人と未来で幸せになれますように」
声になったのか、夢の中なのか……ぼんやりとした時間だった。ギュッと抱きしめられていて、エリオスの香りを感じてしまう都合のいい夢の中。
サフィラはもう何も考えられないくらい、幸せな香りに包まれて身を委ねる。
「俺の運命は、サフィラなんだ」
その声は、サフィラには届かなかった。
このままいたら、きっと嫌な顔をしてしまう。早くエリオスを帰らせようと勧めたお茶で、サフィラの方が眠くなり、うとうとしてきた。
(眠い……リナリル茶を久しぶりに飲んだから効いてる?)
今寝てもきっとまたすぐに目が覚めてしまう。寝るのが怖い。必死に眠気と戦っていると向かい合わせから隣に移動してきたエリオスに自然に抱きかかえられて、膝の上に横抱きにされてしまう。あわあわしていると、さらに密着するように抱き込まれ良い香りに包まれた。
(エリオス様の香りって、何の香水なんだろう。真似してみたけど、やっぱり違う。本当に香水じゃないのかな?)
妙に安心する体温に脱力した体を預けてしまえば、まぶたを開けておく力も残っていなかった。
「おやすみ。サフィ」
──心地よい声が聞こえたのに、返事一つ返せない。
エリオスの体温と心臓の音。落ち着く香りに包まれて、静かに意識が沈み始める。発情した時、もしかしたら奪い取ったかもしれないエリオス様の服からも同じ香りがした。
(落ち着く、気持ちいい。今日は……悪夢を見なくて済むかもしれない)
眠りに落ちていく中で、色んな気持ちが巡る。幼なじみで何かと構われて来た。一度は、和平の為と婚約を受け入れた人。側妃は作らない。皇妃は一人だけだと言ってくれたのは本当に嬉しかった。隣に立つ為に、少しでもふさわしくなるようにと、必死で努力をした日々を思い出す。
時戻りをした為に、今世ではまだ経験してないことも体に染み込んでいる。特に女性側のダンスは、エリオスの恥にならない様に必死で覚えたから、身についたままなのかも知れない。
あの時。運命の二人が結ばれただけ。それを応援するつもりが、身を守るアイテムならばと理由をつけてエリオスの用意したネックレスを身につけた。
僕が身につけるべきじゃないのに。
それでも綺麗なアベリアブルー色を皆に見せてしまったら、王女に取られてしまいそうで隠すようにしてたんだ。まさか輝石にキスを落とすなど想像するわけがない。王女の付添人も、もしかしたらそれを見て行動を起こそうとしたのかも知れない。
(でも二人は、運命じゃないの? )
過去と違う。その違和感にどうしたらいいのか分からなくて、戸惑うばかりだ。サフィラの行動が違うから周りも違ってきているのなら……何が正しいのだろう。
今を変える行動は必要である。変えてはいけない行動があるとしたなら、エリオスとの婚約を素直に受け入れた方がいいのだろうか? 同じ婚約内容を受けいれて、王女とエリオスの中を割く悪者になる方が、かえって盛り上がり二人は結び付くのかもしれない。
(だとしても嫌だな。あんな思い……二度もしたくないのに)
なら……いっそサフィラが運命の人を見つけたことにしたらどうだろう? 頭の中に過るのは、ライナとノエルだった。
(──ライナは駄目。今でも、エリオス様を尊敬しているのが分かるもの)
双子の兄の亡骸を、陛下と皇后の姿を朱に染まったあの場を……変えるためにここにいるのだ。あの最悪の誕生日を無事にこえたら運命が変わる。
運命の日までに、信頼できる者を味方に付けたい。
(巻き込んでも……いいのかな?多分ノエルは、事情を汲んでくれそう)
Ωの王子であるサフィラにも王位継承権を平等に与えた陛下にも、それを反対することなく見守って支えてくれた皇后にも感謝している。
兄たちと共にスノーリル王国と国民を守り発展させて行くのは、生まれた時からの使命だ。
だから王国の為なら政略結婚でも構わない。それでも、エリオスなら同じ様に王国を愛してくれて、サフィラをΩの道具として扱わないでいてくれると婚姻に期待をしてしまった。
αとΩは本物の運命には逆らえないのに。
「──エリオス様が、運命の人と未来で幸せになれますように」
声になったのか、夢の中なのか……ぼんやりとした時間だった。ギュッと抱きしめられていて、エリオスの香りを感じてしまう都合のいい夢の中。
サフィラはもう何も考えられないくらい、幸せな香りに包まれて身を委ねる。
「俺の運命は、サフィラなんだ」
その声は、サフィラには届かなかった。
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