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時戻り後の世界
18.初めての夜会①
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双子王子の為の夜会が王家主催で開かれる。
過去にエリオスが、番になったダンテ王国の王女も招待している。以前見た王女はネックガードをしていなかったので、ずっとαだとサフィラは思い込んでいた。
確かにネックガードを付ければ余計に目立ち、絡まれる可能性もある。ただサフィラの場合は、婚約の打診があったことでΩとバレているので、身につけていない方がより危険だった。
Ωの王女には、過去に酷い扱いを受けた。嫉妬から来る嫌がらせと考えれば、さっさとエリオスを薦めてくれば問題ない。
(今回は初めから二人で過ごさせればいいよね)
「サフィラ様……本当にこちらの服にしなくていいのですか?」
エリオスから送られた夜会用の服は、アベリアブルーをベースに銀の刺繍が繊細に施されている。それに合うようなネックガードやアクセサリーも用意されていた。独占欲の塊の様な服。過去を知らなければ誤解してしまいそうな衣装に、サフィラは胸を痛めた。
「婚約はまだ先だよ。打診があっただけで、まだ確定してないことも皆知っているから。今は着る必要ないから」
「ですが。せっかくなのに」
「婚約式があるまでは、着るつもりはないって伝えてる。兄たちと合わせたデザインの衣装を着るから、エリオス様にも失礼にはならないから問題ないって」
「ならネックガードは、どうしますか?」
「深緑の……陛下からのプレゼントを身につけるよ。それに今日のメインは兄様たちだから。気にしなくていいんだよ」
エリオスの元従者のライナにとっては、不服があるのは分かっている。でもライナもあの場面を見ていたのだから。サフィラが選ばれる日は来ないことは分かっているはずだ。
(エリオス様を幸せにするのは、僕じゃないんだよ)
今から兄たちの部屋へ行かないといけない。ライナも警護の為に傍にいてくれる。万が一の為に、深緑の輝石付イヤーカフを渡した。これから、陛下にも封魔具解除のアクセサリーを渡す予定だ。もちろん、本当のことは言えない。ただ防御用なので身につけて欲しいとだけ伝える予定でいる。
(何があるか分からない。用心しておかないと)
サフィラもイヤーカフと指輪にして身に付けている。無難に深緑にするのは、婚約はまだだと会場の来客に分かりやすくする為だった。
「サフィラ様、このアクセサリーだけでもしませんか? これ……かなりの防御魔法が付与されてますから」
アベリアブルー色の輝石が付いた銀のチェーンネックレスを見せられて、その美しさに見惚れてしまう。
「防御魔法付与なら……せっかくだものね」
深緑のネックガードと服のえりで隠れるため、輝石はそれほど目立ちそうになくてホッとする。
兄達と少しづつデザインの違う夜会服。これなら、三兄弟が合わせたと納得して貰えるので特に、エリオスを傷付けることもない。そう思いつつも、貰ってしまった夜会服を処分する訳にもいかずクローゼットに仕舞い込んだ。
部屋に入ると、エリオスが兄たちと話をしていた。
「サフィラ!」
二番目の兄が嬉しそうにそばに来ると、サフィラを抱き寄せる。
「レオン兄様。素敵です。ご令嬢たちが見惚れてしまいますね」
「そうか? 今日のサフィラより美しい令嬢がいるとは思えないけどな」
「レオン兄様、美しいはご令嬢に言ってあげて。兄様は身内贔屓過ぎるから。アレク兄様も素敵な出会いがあると良いですね!」
「どうかな……俺たちよりエリオス狙いの様な気がするよ。帝国の皇太子が、夜会に参加とか……本当に困る。来なくていいのに」
「そうだよ。せっかくの出会い邪魔されそう。相手はここにいるのにな」
レオンが、さらにギュッと抱きついてきた。
「もちろんだ。俺の運命は、ここにいるのに。兄弟揃えた衣装だから我慢するが……次は送った服を着て欲しい」
「まだ……婚約者じゃありませんから。王家として揃えるのも最後の記念になるので、嬉しいです」
騒いでいるうちに、エリオスに近くにと呼ばれて逃げられそうにない。レオンに押し出されるとエリオスが、なぜかサフィラの後ろに立った。
「なら、せめてこれを」
髪を一つに結んでいたリボンをするりと外される。
「え、待って」
器用にサフィラの髪に、別のリボンが結ばれた。
最後に何かを取り付けたようにも思ったが、背中側なのでサフィラには見えない。なぜか、ご機嫌になった双子の兄とライナが頷いたように見えた。
「あの……」
「ただの、お土産だから。それくらい付けて欲しい」
そのまま、エリオスにエスコートされてスノーリル王家が揃って入場することになり、そわそわして落ち着かない。
そんな拍手で迎えられる貴族たちの中で、見覚えのある令嬢の姿があった。
過去にエリオスが、番になったダンテ王国の王女も招待している。以前見た王女はネックガードをしていなかったので、ずっとαだとサフィラは思い込んでいた。
確かにネックガードを付ければ余計に目立ち、絡まれる可能性もある。ただサフィラの場合は、婚約の打診があったことでΩとバレているので、身につけていない方がより危険だった。
Ωの王女には、過去に酷い扱いを受けた。嫉妬から来る嫌がらせと考えれば、さっさとエリオスを薦めてくれば問題ない。
(今回は初めから二人で過ごさせればいいよね)
「サフィラ様……本当にこちらの服にしなくていいのですか?」
エリオスから送られた夜会用の服は、アベリアブルーをベースに銀の刺繍が繊細に施されている。それに合うようなネックガードやアクセサリーも用意されていた。独占欲の塊の様な服。過去を知らなければ誤解してしまいそうな衣装に、サフィラは胸を痛めた。
「婚約はまだ先だよ。打診があっただけで、まだ確定してないことも皆知っているから。今は着る必要ないから」
「ですが。せっかくなのに」
「婚約式があるまでは、着るつもりはないって伝えてる。兄たちと合わせたデザインの衣装を着るから、エリオス様にも失礼にはならないから問題ないって」
「ならネックガードは、どうしますか?」
「深緑の……陛下からのプレゼントを身につけるよ。それに今日のメインは兄様たちだから。気にしなくていいんだよ」
エリオスの元従者のライナにとっては、不服があるのは分かっている。でもライナもあの場面を見ていたのだから。サフィラが選ばれる日は来ないことは分かっているはずだ。
(エリオス様を幸せにするのは、僕じゃないんだよ)
今から兄たちの部屋へ行かないといけない。ライナも警護の為に傍にいてくれる。万が一の為に、深緑の輝石付イヤーカフを渡した。これから、陛下にも封魔具解除のアクセサリーを渡す予定だ。もちろん、本当のことは言えない。ただ防御用なので身につけて欲しいとだけ伝える予定でいる。
(何があるか分からない。用心しておかないと)
サフィラもイヤーカフと指輪にして身に付けている。無難に深緑にするのは、婚約はまだだと会場の来客に分かりやすくする為だった。
「サフィラ様、このアクセサリーだけでもしませんか? これ……かなりの防御魔法が付与されてますから」
アベリアブルー色の輝石が付いた銀のチェーンネックレスを見せられて、その美しさに見惚れてしまう。
「防御魔法付与なら……せっかくだものね」
深緑のネックガードと服のえりで隠れるため、輝石はそれほど目立ちそうになくてホッとする。
兄達と少しづつデザインの違う夜会服。これなら、三兄弟が合わせたと納得して貰えるので特に、エリオスを傷付けることもない。そう思いつつも、貰ってしまった夜会服を処分する訳にもいかずクローゼットに仕舞い込んだ。
部屋に入ると、エリオスが兄たちと話をしていた。
「サフィラ!」
二番目の兄が嬉しそうにそばに来ると、サフィラを抱き寄せる。
「レオン兄様。素敵です。ご令嬢たちが見惚れてしまいますね」
「そうか? 今日のサフィラより美しい令嬢がいるとは思えないけどな」
「レオン兄様、美しいはご令嬢に言ってあげて。兄様は身内贔屓過ぎるから。アレク兄様も素敵な出会いがあると良いですね!」
「どうかな……俺たちよりエリオス狙いの様な気がするよ。帝国の皇太子が、夜会に参加とか……本当に困る。来なくていいのに」
「そうだよ。せっかくの出会い邪魔されそう。相手はここにいるのにな」
レオンが、さらにギュッと抱きついてきた。
「もちろんだ。俺の運命は、ここにいるのに。兄弟揃えた衣装だから我慢するが……次は送った服を着て欲しい」
「まだ……婚約者じゃありませんから。王家として揃えるのも最後の記念になるので、嬉しいです」
騒いでいるうちに、エリオスに近くにと呼ばれて逃げられそうにない。レオンに押し出されるとエリオスが、なぜかサフィラの後ろに立った。
「なら、せめてこれを」
髪を一つに結んでいたリボンをするりと外される。
「え、待って」
器用にサフィラの髪に、別のリボンが結ばれた。
最後に何かを取り付けたようにも思ったが、背中側なのでサフィラには見えない。なぜか、ご機嫌になった双子の兄とライナが頷いたように見えた。
「あの……」
「ただの、お土産だから。それくらい付けて欲しい」
そのまま、エリオスにエスコートされてスノーリル王家が揃って入場することになり、そわそわして落ち着かない。
そんな拍手で迎えられる貴族たちの中で、見覚えのある令嬢の姿があった。
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