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時戻り後の世界
14.悪夢と現実② side エリオス
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影を伴い、密かにスノーリル王国に向かう。
転移門と馬を使いなるべく最短ルートで移動する。一番の最短ルートは魔の森経由だが、夢見のせいもあり、そこは躊躇われた。もちろん影にも反対されてしまった。
あの森を経由するのは死にたい奴だけですよ。「ありえません」止めて下さい。と酷く冷たく言われて冷静になった。
なら何故?あんな所に彼らはいたのだろう?その疑問はずっと残っている。
「影でさえありえないと言った場所だ。単なる悪夢ならいいが、未来視だったら……」
あの朱色の混ざった金色の魔法陣が、本物の血を使っていたとしたら……生きているとは思えない。
サフィラが死んでしまう未来?
夏にライナを護衛騎士として、サフィラにつけた。その後なぜかサフィラは、剣の訓練を中心に魔法を強化している。相変わらず薬師としての研究も続けていると報告が来る。
鬼気迫る物がありますねと、別の影からも言われ更に不安になった。
「俺は、サフィラを失いたくない」
離れていてこんなに不安になるのは、夢のせいだと思い。スノーリル王国が冬ごもりになる前に慌てて来たのだ。だから有名な王都市場でサフィラへのプレゼントを買って会う口実にしたかった。
護り刀が不吉に思えたからと言う理由もある。それでも俺色の輝石を護りとして身につけて欲しい。そんな独占欲のまま、訪れた市場でサフィラに偶然に会うとは思っていなかった。
「その、お忍びですか?いつこちらに?って、お忍びなのに聞いてはいけませんね。ライナ……帰ろうか? 邪魔をしたらいけないから」
会いたかった愛しい人は、よそよそしく距離をとる。変装をばれたくなかったのだろうか?
王宮外で会ったせいなのか、何故か一線を引かれている感じだった。
「──邪魔じゃない。大陸でもスノーリルの王都市場は有名なんだ。スノーリル王国の中でも貴重な魔石が出回ると聞いていた。どうしても、この目で見たくて……少数で転移しながらここまで来たんだ」
困った顔をするサフィラは、夏の時と雰囲気が違っている。
サフィラも誰かに輝石を買うつもりだったのだろうか?アレク達の可能性が高い。自惚れで、もしかしたらと思った時ライナにイヤーカフをと言った。
「じゃあ、金色が嫌なら深緑の輝石にする?」
しかも……深緑の輝石。いや最初は金色と言ったのだから、サフィラにそんな恋愛的な意図はないはずだ。
「せっかくなので、エリオス様に剣の紐飾りとか……お揃いを交換すれば記念になりますよ!」
ライナが気を使ったのか、二人で輝石を交換したらどうか言う提案までしてきた。
それをサフィラは軽く流してしまった。
見限られた?
なぜ?あれは、サフィラを助ける為の仕方がない提案だった。
(何を? 俺はサフィラに何をした?)
ハッキリとは分からない。でも、何かをしたのだ。そんな罪悪感で吐きそうな気持ち悪さになっていく。
「転移でお疲れですか? 今夜はどちらに泊まられるのですか? もし良かったら王宮の方で治療を受け……」
サフィラが、心配そうに声をかけてくれたことで我に返った。
「も、申し訳ありません。お忍びなのに。余計なことをいいました。ライナすぐ選ぶから……待ってて」
慌ててサフィラが輝石を買っている様子を、何も言えずにライナと見ていた。
「ライナ……サフィラは」
「ありえません」
「だが、深緑の輝石をお前に」
「過酷な労働の報酬とでも思ってください」
思わず黙ったエリオスに、厳しい口調でライナが言った。
「あの方が不安になるようなことを、絶対にしないで下さい。勝手に信じてくれるなどと思い込んで、仕方がないことだからと傷付けたら、二度目はありません」
何故か買い物が済んだサフィラが先に帰ると言いだした。
「サフィ……俺は、君に会いにきたんだよ」
エリオス自身が、思わずこぼした言葉に驚いてしまう。
そうずっと会いたくて仕方がなかった。触れたくて、失って味わった絶望感が蘇っていく。
思わずサフィラの頬に触れてしまう。
(サフィラは生きている)
突然震え出したサフィラを受け止めたが「ライナ、薬を」そう言ってエリオスから逃げようとする。サフィラから、強く溢れ出すリナリルの香りが、発情が来たことを教えてくれる。
(俺から逃げないで)
「大丈夫だサフィ。αの抑制剤は飲んでる。王宮まで俺が連れていく」
抱き締めると、腕から抜け出そうと抵抗されてしまう。
「俺が側にいないと、他のαが来てしまう。ごめん我慢してサフィ」
「ライナ……薬を頂戴!」
ライナから受けとった丸薬は、サフィラの震える手から簡単に床へと落ちていく。
「水と薬を!」
そう言って、サフィラを支えるように引き寄せると唇を重ねて薬を流し込んだ。
転移門と馬を使いなるべく最短ルートで移動する。一番の最短ルートは魔の森経由だが、夢見のせいもあり、そこは躊躇われた。もちろん影にも反対されてしまった。
あの森を経由するのは死にたい奴だけですよ。「ありえません」止めて下さい。と酷く冷たく言われて冷静になった。
なら何故?あんな所に彼らはいたのだろう?その疑問はずっと残っている。
「影でさえありえないと言った場所だ。単なる悪夢ならいいが、未来視だったら……」
あの朱色の混ざった金色の魔法陣が、本物の血を使っていたとしたら……生きているとは思えない。
サフィラが死んでしまう未来?
夏にライナを護衛騎士として、サフィラにつけた。その後なぜかサフィラは、剣の訓練を中心に魔法を強化している。相変わらず薬師としての研究も続けていると報告が来る。
鬼気迫る物がありますねと、別の影からも言われ更に不安になった。
「俺は、サフィラを失いたくない」
離れていてこんなに不安になるのは、夢のせいだと思い。スノーリル王国が冬ごもりになる前に慌てて来たのだ。だから有名な王都市場でサフィラへのプレゼントを買って会う口実にしたかった。
護り刀が不吉に思えたからと言う理由もある。それでも俺色の輝石を護りとして身につけて欲しい。そんな独占欲のまま、訪れた市場でサフィラに偶然に会うとは思っていなかった。
「その、お忍びですか?いつこちらに?って、お忍びなのに聞いてはいけませんね。ライナ……帰ろうか? 邪魔をしたらいけないから」
会いたかった愛しい人は、よそよそしく距離をとる。変装をばれたくなかったのだろうか?
王宮外で会ったせいなのか、何故か一線を引かれている感じだった。
「──邪魔じゃない。大陸でもスノーリルの王都市場は有名なんだ。スノーリル王国の中でも貴重な魔石が出回ると聞いていた。どうしても、この目で見たくて……少数で転移しながらここまで来たんだ」
困った顔をするサフィラは、夏の時と雰囲気が違っている。
サフィラも誰かに輝石を買うつもりだったのだろうか?アレク達の可能性が高い。自惚れで、もしかしたらと思った時ライナにイヤーカフをと言った。
「じゃあ、金色が嫌なら深緑の輝石にする?」
しかも……深緑の輝石。いや最初は金色と言ったのだから、サフィラにそんな恋愛的な意図はないはずだ。
「せっかくなので、エリオス様に剣の紐飾りとか……お揃いを交換すれば記念になりますよ!」
ライナが気を使ったのか、二人で輝石を交換したらどうか言う提案までしてきた。
それをサフィラは軽く流してしまった。
見限られた?
なぜ?あれは、サフィラを助ける為の仕方がない提案だった。
(何を? 俺はサフィラに何をした?)
ハッキリとは分からない。でも、何かをしたのだ。そんな罪悪感で吐きそうな気持ち悪さになっていく。
「転移でお疲れですか? 今夜はどちらに泊まられるのですか? もし良かったら王宮の方で治療を受け……」
サフィラが、心配そうに声をかけてくれたことで我に返った。
「も、申し訳ありません。お忍びなのに。余計なことをいいました。ライナすぐ選ぶから……待ってて」
慌ててサフィラが輝石を買っている様子を、何も言えずにライナと見ていた。
「ライナ……サフィラは」
「ありえません」
「だが、深緑の輝石をお前に」
「過酷な労働の報酬とでも思ってください」
思わず黙ったエリオスに、厳しい口調でライナが言った。
「あの方が不安になるようなことを、絶対にしないで下さい。勝手に信じてくれるなどと思い込んで、仕方がないことだからと傷付けたら、二度目はありません」
何故か買い物が済んだサフィラが先に帰ると言いだした。
「サフィ……俺は、君に会いにきたんだよ」
エリオス自身が、思わずこぼした言葉に驚いてしまう。
そうずっと会いたくて仕方がなかった。触れたくて、失って味わった絶望感が蘇っていく。
思わずサフィラの頬に触れてしまう。
(サフィラは生きている)
突然震え出したサフィラを受け止めたが「ライナ、薬を」そう言ってエリオスから逃げようとする。サフィラから、強く溢れ出すリナリルの香りが、発情が来たことを教えてくれる。
(俺から逃げないで)
「大丈夫だサフィ。αの抑制剤は飲んでる。王宮まで俺が連れていく」
抱き締めると、腕から抜け出そうと抵抗されてしまう。
「俺が側にいないと、他のαが来てしまう。ごめん我慢してサフィ」
「ライナ……薬を頂戴!」
ライナから受けとった丸薬は、サフィラの震える手から簡単に床へと落ちていく。
「水と薬を!」
そう言って、サフィラを支えるように引き寄せると唇を重ねて薬を流し込んだ。
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