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時戻り後の世界
13.悪夢と現実① side エリオス
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エリオスは、いつからか繰り返し見る夢に魘されるようになった。そんな折にライナから懇願されたのだ。
「どうかサフィラ様の護衛に任命して下さい。時間がありません。殿下の代わりに他のα達から守らせて下さい」
サフィラがΩである可能性。それは成長と共に少しづつ確信に変わってきていた。サフィラから香るリナリルの爽やかで優しい香り。それが分かるのはエリオスだけだ──双子達もαの騎士も誰も気が付いていない。だからこそ自身の番だと本当は言ってしまいたい。
バース性の判定前に、サフィラのαでありたいと願う気持ちも否定したくなかった。諦め始めていることも知っていたが、Ωと確定するまでは、そっとしてあげたかった。
狡いかも知れないが、βのライナならサフィラを安心して任せられる。元々考えていたことだったが、契約を交し絶対に守り抜くという、その覚悟にエリオスは感謝した。
そして、また繰り返される夢の中にいる。
国境付近の魔の森は、人が踏み入ることはほとんどない。
魔獣が潜んでいるからだ。
それでも、アベリア帝国とスノーリル王国の境界に位置する為、不法侵入者が死を覚悟で現れたりする場所でもあった。
エリオスは思考に靄がかかったような状態で、魔の森の近くに立っていた。
(また、これか……)
誰かに会いに行かなければ、そう思うのに身動きが取れない。夢とは思えない現実感があった。夢の中で見たものが、現実の何かと繋がっているようにも感じる。
単なる夢であって欲しい、そうエリオスは願う。
魔の森を遠めに見ていると、突然魔力が膨れ上がり、金色の光の柱が天まで立ち上がり拡散して消えた。
夢らしく場面が切り替わって、雪の中に浮かんだ魔法陣が朱金に輝いている。
恐ろしいほどに美しい魔法陣がそこにあった。姿がないのに、愛しい人の魔力がここにあるかのような不思議な光景。その中心に近い場所には、見覚えのある護り刀が落ちていた。アベリアブルーの輝石と王家の印まで刻まれている。
ただ持ち手には血の痕があった。
なぜ俺の刀が魔法陣の中に落ちていたのだろう?あれは……誰かに奪われたのか? そんなはずはない。目が覚めれば、枕元にそれはあるのだ。
いずれは番になる者へ渡す刀だ。どう見てもこの魔法陣は儀式の後だった。魔法陣の中、誰かが捧げられたのだろうか?小柄な人型のような窪みと血痕がある。
ただ認めたくないだけ。ただ違うと思いたいだけかも知れない。そうしなければ、心が押し潰されそうだからだ。
向こうを見れば大きな木の根元に、ローブに包まれた人らしき物がある。雪が軽く積もっているが動かない。もう死んでいるようだった。
また少し離れた方には誰かを埋葬した後があり、名前さえ刻まれていない石が二つあった。
ローブを剥がすと魔法痕が胸の所にあった。肺を焼かれ呼吸が一瞬で止まってしまう。
帝国の魔法痕……誰に処刑されたんだ?何が起こっている? 魔法陣の主なのか、別の者なのか?ただここには、処刑された男。死んでしまった誰か二人分の墓があるだけで。魔法陣の主らしい人物はいない。
そして、生贄にされた者の……残された懐かしい魔力。
(もう止めてくれ!)
いつもはここで終わる夢。
なぜか終わらない夢の続き。
「間に合わなくて、すまない……」
そう言って泣いてるのは、エリオス自身の姿だった。
護り刀を握り締めて、魔法陣の中で泣き狂う自身の哀れでみっともない姿だ。
「サフィラ……!俺の前からいなくなるな!」
がばりと、体を起こす。びっしょりと汗をかき、手が小刻み震えている。差し出したその手を握り返してくれる者はいない。
「はぁ、はぁ……。いったい、何を見せられている?」
(サフィラが生贄になる未来?)
頭の中が、ガンガンと警告音を鳴らす。
「一体なんなんだ!!」
何度か見ているが、今回は続きを見せられているようにも思う。名前まで呼んでいる。
「刀はまだここにある。これを渡さなければ……いいのか?だが、婚姻前には渡す物だ」
おかしい。涙が溢れ出て止まらない。
これは本当に夢なのか?
俺は……大切な何かを忘れている気がする。
サフィラに会いたい。
今は無事を確かめたい。そして、王国に密か向かったのだ。
「どうかサフィラ様の護衛に任命して下さい。時間がありません。殿下の代わりに他のα達から守らせて下さい」
サフィラがΩである可能性。それは成長と共に少しづつ確信に変わってきていた。サフィラから香るリナリルの爽やかで優しい香り。それが分かるのはエリオスだけだ──双子達もαの騎士も誰も気が付いていない。だからこそ自身の番だと本当は言ってしまいたい。
バース性の判定前に、サフィラのαでありたいと願う気持ちも否定したくなかった。諦め始めていることも知っていたが、Ωと確定するまでは、そっとしてあげたかった。
狡いかも知れないが、βのライナならサフィラを安心して任せられる。元々考えていたことだったが、契約を交し絶対に守り抜くという、その覚悟にエリオスは感謝した。
そして、また繰り返される夢の中にいる。
国境付近の魔の森は、人が踏み入ることはほとんどない。
魔獣が潜んでいるからだ。
それでも、アベリア帝国とスノーリル王国の境界に位置する為、不法侵入者が死を覚悟で現れたりする場所でもあった。
エリオスは思考に靄がかかったような状態で、魔の森の近くに立っていた。
(また、これか……)
誰かに会いに行かなければ、そう思うのに身動きが取れない。夢とは思えない現実感があった。夢の中で見たものが、現実の何かと繋がっているようにも感じる。
単なる夢であって欲しい、そうエリオスは願う。
魔の森を遠めに見ていると、突然魔力が膨れ上がり、金色の光の柱が天まで立ち上がり拡散して消えた。
夢らしく場面が切り替わって、雪の中に浮かんだ魔法陣が朱金に輝いている。
恐ろしいほどに美しい魔法陣がそこにあった。姿がないのに、愛しい人の魔力がここにあるかのような不思議な光景。その中心に近い場所には、見覚えのある護り刀が落ちていた。アベリアブルーの輝石と王家の印まで刻まれている。
ただ持ち手には血の痕があった。
なぜ俺の刀が魔法陣の中に落ちていたのだろう?あれは……誰かに奪われたのか? そんなはずはない。目が覚めれば、枕元にそれはあるのだ。
いずれは番になる者へ渡す刀だ。どう見てもこの魔法陣は儀式の後だった。魔法陣の中、誰かが捧げられたのだろうか?小柄な人型のような窪みと血痕がある。
ただ認めたくないだけ。ただ違うと思いたいだけかも知れない。そうしなければ、心が押し潰されそうだからだ。
向こうを見れば大きな木の根元に、ローブに包まれた人らしき物がある。雪が軽く積もっているが動かない。もう死んでいるようだった。
また少し離れた方には誰かを埋葬した後があり、名前さえ刻まれていない石が二つあった。
ローブを剥がすと魔法痕が胸の所にあった。肺を焼かれ呼吸が一瞬で止まってしまう。
帝国の魔法痕……誰に処刑されたんだ?何が起こっている? 魔法陣の主なのか、別の者なのか?ただここには、処刑された男。死んでしまった誰か二人分の墓があるだけで。魔法陣の主らしい人物はいない。
そして、生贄にされた者の……残された懐かしい魔力。
(もう止めてくれ!)
いつもはここで終わる夢。
なぜか終わらない夢の続き。
「間に合わなくて、すまない……」
そう言って泣いてるのは、エリオス自身の姿だった。
護り刀を握り締めて、魔法陣の中で泣き狂う自身の哀れでみっともない姿だ。
「サフィラ……!俺の前からいなくなるな!」
がばりと、体を起こす。びっしょりと汗をかき、手が小刻み震えている。差し出したその手を握り返してくれる者はいない。
「はぁ、はぁ……。いったい、何を見せられている?」
(サフィラが生贄になる未来?)
頭の中が、ガンガンと警告音を鳴らす。
「一体なんなんだ!!」
何度か見ているが、今回は続きを見せられているようにも思う。名前まで呼んでいる。
「刀はまだここにある。これを渡さなければ……いいのか?だが、婚姻前には渡す物だ」
おかしい。涙が溢れ出て止まらない。
これは本当に夢なのか?
俺は……大切な何かを忘れている気がする。
サフィラに会いたい。
今は無事を確かめたい。そして、王国に密か向かったのだ。
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