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時戻り後の世界

2.忠誠をもう一度

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 十四……歳?でも十五歳になる年にいるのだから大丈夫。ただどうして、この時点でライナがここにいるのかが分からない。

「ライナ……あの」

「ちょっと待ってて下さい。このサボり魔達を追い出します。サフィラ様は熱で倒れましたが、寝て休養をとれば治るといいましたよね? 」

「わ、分かったから」
「心配なんだから仕方ないだろう!!」
 兄達が慌てだした。ライナの手元から小さな白い鳥が現れて窓を通過して飛んで行ってしまった。

 それはとても美しい魔法で、キュンとしてしまったのはサフィラだけ。双子の顔色が悪くなっていく。

「待てライナ……今のはもしかして」
「ええ、騎士団長に特別訓練をお願いしておきました。早く行った方がいいですね」

「嘘だろ……」
 絶望的な二人の顔に、ライナはさらに冷たく言葉を続ける。

「嘘ではありません。訓練場までさっさと行って下さいね。早く行かないと、騎士団長がキレちゃうかも」

 慌てて部屋から出て行く兄達の姿をサフィラは不思議な気持ちで見送り、ライナの方に体の向きを変えた。

「ライナは……」
「サフィラ様。お帰りなさい」

 ああ、やはりあの事件クーデターは本当にあったのだ。皇后の赤黒く染まった服も、剣に貫かれた陛下の最期もサフィラは見ていた。
何よりサフィラをおびき寄せる為に、拷問されたアレクとレオンの最期の姿は忘れることなど出来ない。

 頬を伝い落ちる涙は、止めることが出来ずさらに溢れていく。しゃくり上げて、叫んでしまいそうだった。慌てて支えてくれたライナが、背中を摩ってくれる。

「ゆ、夢じゃなかった……本当に……皆死んだんだ」
「俺も体験しました。サフィラ様は、よく耐えましたね」

 ライナの防音の魔法が、僕の泣き声を閉じ込めて隠してくれた。ひとしきり泣いて、腫れてしまったまぶたにライナの手がふれる。冷たくてスッキリしていく。

「目が腫れてたら、また殿下達が寄ってきてしまいますから」
「あはは。ライナ……ありがと」
サフィラの前にお茶が用意されて、見た目の悪さに薬草茶だと気が付いた。

「あ……美味しい」
「特訓しましたから、美味いでしょ?」

 ライナに確認しなければ、目が覚めてから既に僕の記憶と違うのだ。


「ライナ本当に成功したの?」
「ええ。サフィラ様の魔力の帯びた血をあれ程使わせてもらって失敗なんて出来ませんから」

過去まえと護衛になる時期が違うのはなんで? 窓の外は雪さえ降ってない。冬ごもりの準備の時に、初めて発情ヒートを起こしたから。今はまだ、Ωの判定されてないのにどうして護衛騎士になっているの?」

「それは、俺がサフィラ様より先に過去まえを思い出したからです」

「先に思い出した?」
「昨年避暑地に遊び来て……サフィラ様を見た時、一気に経験したことや記憶が流れて来ました。それからすぐに、行動を起こしたので」

「行動? 特に変わったことはしてなかったんじゃ……?」

「主に、エリオス様にです。サフィラ様がΩの判定をもらう前に、βの俺が護衛につくべきだと訴えました。だから今年こちらに来てから、護衛騎士として付いてます」

 その言葉通り……この体が経験して来たことが記憶として混ざり合ってきた。過去まえ現在いまの自分の中で記憶が一つになっていく奇妙な感じがする。

「もしかして、そのせいで熱が出て倒れたの?」
「まあ、二つが一つになるのですから。俺も珍しく気を失いかけましたから」

「そうなんだね。じゃあ兄様達に、騎士団長に剣を習うように言ったのもライナなんだ。封魔具……であんなことにならない様に?」

「ええ。封魔具を解除する道具も必要ですが、身を守る手段はいくらあってもいいですからね」
「──ライナ。本当に、ありがとう」

「言いましたよね? 一生忠誠を誓うと」
「でも、僕の時間はあまりないから。エリオス様の所に戻っていいんだよ? クーデターを回避出来なければ同じ道を辿るかも知れないから」

 ライナから優しい表情が抜け落ちて、ベッドの方に近づいて来た。ギシリと、ベッドに膝が沈み両手で頬を挟まれてライナと間近で向かい合う。

「見捨てるつもりなら、あんな魔法は使わない。命を削る覚悟で来たサフィラに最後まで付き合うから」

「──いいの?」
「ええ。敵を絶対に許す訳にはいきませんから。ただサフィラ様は戻ったばかりです。今日はもう眠って下さい」

 何か魔法が使われて、その言葉通りサフィラは力が抜けて深い眠りに落ちていった。

















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