【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru

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52.浄化同行⑤

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「好きな人なら、目の前にいる。ずっとずっと変わらずに……愛してる」

 変わらずに、愛してる。
 いつから? 
 ジェイドが結の記憶を引き継いだ時、俺が忘れてる事があるって言った。
 俺は何を忘れてる?

 ジェイドは結として、俺のそばにいた。その時から選んでくれてたのかも知れない。俺も家族を捨てでも、目の前の人を選んだ。

 何故?
 お兄ちゃんだから?
 違うもっと、深い所で俺たちは繋がってる気がする。
   これは、家族愛? それとも──?

「──護衛とか、そう言う意味じゃなくて。一番大切なのはジェイドだよ」

 辛そうな顔をしてるジェイドを見つめる。

「でも、もしも誰かが死にそうなら助けたいと思う。セ……セックスは、無理でもキス位はすると思う」

 少し驚いた顔をしたジェイドに口を塞がれる。
 今度は、優しい。甘く溶けそうに求められた。

「琥珀……俺が死にそうな時もしてくれないんだ?」
 そんな、狡いことを言われてしまう。
「そんなの。言わなくても……分かってるよね?」

「言葉にして欲しい。俺が死にそうなら?セックスしてくれる? 聖女が死にそうな時はする?」
「聖女とは……しない。絶対にしない!好きでもないのに。何か他の方法を考える」

「俺とは?」
「──そんなの決まってる。ここまで追いかけて来たんだ。ジェイドを助ける為なら……セックスだってなんだって出来る」

「セックスは俺となら出来るの?」
「結を……ジェイドのことを助ける事が出来るなら」
  押さえられていた手の力が、緩んだ。拘束から離れた手で、ジェイドの頬に触れた。

「琥珀にとって、その行為は助けるためだけのものってこと? 気持ちはない?」

  今、俺たちは血が繋がっていない。でも兄弟として育った記憶も残っている。
     愛している、その気持ちに応えるのは本当に許されるのだろうか?
  魔力循環を度々してる。正直に言えば、気持ちがいいと思う。

もしも元の世界のままなら、血の繋がりを理由に……駄目だって頑なに拒んだと思う。
    だけどジェイドと結は同じではなく、結として生きた記憶の欠片があるだけ。

 この世界なら許されるのだろうか? 
狡いけど……ずっと大切にして来たのだ。両親と日常を捨てて、ここまで来たんだ。
 それは、きっと───でも。今こんな状況でそれを伝えたら、ジェイドが俺を優先してしまう。命を投げ出すんじゃないか?
 特に、明日は……何が起きるか分からないのだ。

「──記憶を無くしても、求めてしまうのは、琥珀だけだった。に嫉妬するくらいに、誰にも渡したくない」

  その言葉に、俺の方が泣きそうになってきた。だけど……今は許してほしい。

「ジェイド。俺、ちゃんと考えるから。もう少しだけ時間が欲しい」

狡いかも知れない。それでも今の精一杯だから。

「──明日は、建前として聖女のそばにいる。でも、優先は琥珀だ。聖女の護衛はエドワード殿下達とも共有する。それでいい? くれぐれも囮はやめて欲しい」

「約束する」
 服を整えられて腕の中に、引き寄せられた。
「無茶して、死んだりしたら追いかける」
「そんな、ジェイドは死んじゃだめだ。ここの世界で必要な人だから」

「俺の世界で必要なのは、琥珀だけだ。他は、要らない。閉じ込めたいくらいだよ。琥珀の全てが欲しい」

 その意味する事に、視線を逸らしてしまう。覚悟を決めないと、平和な世界ではないのだ。 いつ失うか分からない。
  食獣植物カーニヴォラスみたいな、人も獣も好んで食べる魔物が平気で現れ襲ってくるかも知れない。いつ別れが来るかなんて誰にも分からない。

「明日、聖女様にチートが現れるか分からないけど……絶対皆で生きて帰ろう」
  そして、あの甘いキスに溶かされながら、眠りについたのだ。


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