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47.チート?

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「神使様、聖女様が浄化に行くことになりました」

 困り顔のエドワード殿下の隣、ミカエル様は笑顔でそう言った。

 寝てしまった俺の代わりに、ジェイドが対応したはずだった。俺に直接話したいとエドワード殿下とミカエル様が、翌日出直して来たのだ。

「そうなんですね」
 なんて答えるのが、正解か分からない。ただそうなるだろうとは、思っていたけど。

「そこで、神使様にも同行して頂きたいのです」

 隣に座っているジェイドの方をチラリと見ると、不機嫌を通り越して無表情だ。
 目の前の二人も対称的な表情で座っている。ミカエル様の笑顔とエドワード殿下の申し訳無さそうな困り顔。これは、かなり揉めたのだろうか?
 気になるのは、神官長様だ。

「神官長様は、なんて言ったんですか?」

「神使様がライゼ神の恩恵を受け、チートに目覚めたと」

 思わずむせた。紅茶を口にしてなくて良かった。

「ええ……」
 チート?になるのかな?

「聖女様と神官長様と魔法師長が、行けば問題ないと思いますが?」
 ジェイドの声のトーンが低い。確かにその方が良いと思う。それに聖女が俺と行きたいと言いそうにない。

「──聖女様が行って、浄化が出来ない場合。死人が出るかも知れません。ご本人は、やる気に満ち溢れています。ですが、神官長以外で、聖女様にチートが起きるとは思っていないのです」

 ミカエル様は、なんの感情も出さない。笑顔のまま、報告してくる。
『見捨てるのですか?』
 そう言われている気がした。

 俺のいた世界の本では、彼女はヒロインで聖女で間違いない。
 でも、俺がその力を奪ったのだとしたら?

 この世界のライゼ神が、来瀬らいぜさんと何かあるとしたら……何か別の話にする替わっていってるのかもしれない。

 ジェイドが弟として存在してた理由も分からない。あの本が、正しいのかも分からない。ここに俺達を連れて来る為の、存在しない本の話だとしたら……。

 彼女が聖女と言うのが、刷り込まれたなら……浄化によって彼女が死ぬ未来も有り得る。

 例えばそれが、彼女を元の世界に戻す確証があるのならいいけど。本当に消滅するかも知れない。

「琥珀様。断って下さい。体調が悪いと言って下さい。貴方が無理をしてしまっては、それこそこの王国は駄目になってしまう。もう召喚など出来ません」

 エドワード殿下の言い分も分かる。せめて片方は生き残って欲しいはずだ。

「聖女様は、俺が行く事を嫌がってないのですか?」

「琥珀……さま。行かなくても」
 ギュッとジェイドの手を握り締めると、口を閉ざした。

「ジェイド……安全な浄化に行ったはずが、血牙の大熊ブラッディファングだっけ? 魔物が出た訳だし、何が起こるか本当に分からないよね?」

 ジェイドに話しかけた後、エドワード殿下達の方を見る。

「もしも……チートが出なかったら? 魔法師長や神官長がどうにか出来そうですか?」

「聖女様曰く、危険あってこそ目覚めるのがチートらしいので。現に神使様がからこそ目覚めたと言っております」

「ミカエルそれは、違うだろ! 皆を助ける為にわざと怪我して囮になったんだ!!」
 ジェイドが言い返したが、ミカエルは淡々と答えた。

「陛下や神官長にして見れば、結果が全てです」

「ミカエルやめろ。琥珀様。王国としては、聖女様に聖属性に目覚めて欲しいのです。それでも、次の浄化に行かせるべきじゃない。まだ彼女では無理だ。魔法の訓練も初歩の彼女がチートに目覚めても、カークの魔法にも及ばないと思うのに。皆何かあれば、琥珀様に助けて貰おうとしているのが嫌なのです。貴方ばかり犠牲にするようで、すみません」

 そんな思いで、ずっと庇って貰ってたんだ。王国の為じゃなくて俺の心配してくれてるんだ。

 最初の浄化は、聖女に行かせても他の皆で対応が出来るレベルだったのかもしれない。なのに今度は、欲がでて危険なの所のような気がする。

「ミカエル様。俺は、目立たぬようについて行けって事ですよね?」

 ジェイドが、俺の手を握り返した。

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