【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru

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59.二人 sideエドワード

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 琥珀様が怪我をしなくて良かった。
 だが、思ったより深く肩を触手に貫ら抜かれた。

 激痛に意識を持っていかれそうになる。ここで馬上から落ちてしまえば、琥珀様を守れなくなる。
 ジェイドがこの役目を担う事は、頭ではわかっているのだ。
 でも、ジェイドのものだと分かっていても、そばにいたいのだ。

 俺が落ちないように抱きつき、支えようとしてくれた。その思いに愛おしさが増す。この手が俺を選んでくれないだろうか?

 そんな想いが過っては消え、自嘲気味に笑ってしまう。

 せめて、この世界にいて下さい。俺は貴方に仕えたい。
 聖女ではなく、琥珀様がいいのです。

 傷が深すぎて意識を保つのが、やっとだった。琥珀様が触れてくれている。優しい魔力に包まれて、痛みを忘れてしまう。柔らかな感触に、それが琥珀様の唇だと気がついた。

 身体中に、馴染んでいく。
 この方こそ、本物なのだ。ただこれだけの傷を治すには、魔力をかなり使ったはずだ。琥珀様を前に移動させて、その華奢な体を片手で抱きしめた。

 愛おしい──少しだけ。ほんの少しだけ、腕のなかに閉じ込める。

 俺のものには、ならないから。

 聖女が、こちらを見ていた。琥珀様の力を見たからか、馬から降ろすように言っているようだ。

 祈るから、守れと言うような言葉だ。
 ジェイドは、冷めたような目で見ている。

 まだ、触手魔獣ローパーも倒していないのに。
 何か手立てがあるのだろうか?

 琥珀様が、あの時のように両手を組んだ。
    触れている手に、清廉な空気を感じる。その魔力を追うと聖女の方へ向っている。

 聖女に力を貸すのか?だが、俺の治癒をしたばかりだ。
 無茶をし過ぎだ。

 そう思っでも、それを止める事が出来ない。聖女の所から波打つように浄化の力が波紋のように拡がった。

 巨大な触手魔獣ローパーは、消失し、魔石が転がった。飛龍ワイバーンまでは倒せなかったが、ここから逃げるように離れてしまった。

 歓声が上がったが、琥珀様が俺に寄り掛かって動かない。

 ジェイドが、ミカエル達に聖女を頼むと言ってこちらに来た。
「琥珀様を返して下さい」
 心配そうに、琥珀様を抱きしめている。
 なぜ、その役目は俺じゃないのだろう。琥珀様は無意識にジェイドを探す。それが、一番辛いのだ。

 きっと、魔力循環をジェイドはする。その約目も全部、ジェイドのものだ。聖女は、何か言いたげに二人を見ている。

 大丈夫だろうか? チートを得たようには見えなかった。全てが、琥珀様から得たものにしか見えなかった。

    多分、魔法師長もミカエルも気付いているだろう。



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