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35.魔法訓練の裏側で
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「琥珀様、ソファで寝ないで。ほら、ベッドに……」
「疲れて、動きたくない。風呂も入ったし、もうここで寝る」
魔塔での訓練が、中々堪えて来た。魔力の扱いは、頭では分かっている。呪文も頭に入っている。これでも難関大学を現役合格した身だ。
言語チートがあるとは言え、暗記は実力のはずだ。
それにしてもエコな魔力消費は出来ないのだろうか?ごっそり魔力を持っていかれて、こんな有様である。
「琥珀様は、華奢だから」
と言われると、無性に腹が立つ。
「なら、騎士団に鍛えて……」
「駄目です!!」
この時のジェイドの顔は、寒気がする程怖かった。
邪魔にしかならないのは、分かっている。本気で怒らないで欲しい。
ベッドで一人になると、何故か不安に駆られて眠れなくなってしまう。つまりただの睡眠不足だ。
ジェイドが居るうちにここで、うたた寝させて欲しい。ちょっとだけでも安心して寝たい。
「もしかして、眠れてないとか?」
(やっぱり、鋭い)
「疲れ過ぎてるだけだよ。ジェイドも、もう少ししたら帰っていいから。それより家族の所には、帰らなくて大丈夫?」
ずっとそばにいてくれる。でも家族と引き離してるみたいで申し訳ないのだ。
「侯爵家に?」
「家族が心配してるんじゃない?」
「ないですね。弟と母は、領地の方に戻ってます。父は、忙しく領地とこちらを行き来してますから、わざわざ行くと、鬼の形相になりますね。自分の役目をこなせと言われるだけです」
「それなら、甘えてていいのかな?」
「大事な役目なので。離れません──まぁ風呂は駄目ですが、添い寝はしてあげましょうか?」
添い寝?
「俺がいたら眠れるのでしょう?」
目の前で書籍や書類が、綺麗に片付けられていく。その作業を目で追っていると目の前に手が伸びて来た。
「歩きたくないのなら、抱えますね」
簡単に縦に抱きかかえられて、ベッドに連れて行かれる。この扱いは恥ずかしいが、今日は腕一つでも動かすのが億劫なのだ。もういいや。甘えてしまえ。そんな気持ちなって、身を委ねた。
ジェイドに視線を送ると、柔らかい結の笑顔と重なる。
「そばにいます。ただちょっと待ってて下さい。鍵の確認と、飲み物くらいは用意しときますね」
優しくベッドに乗せられる。背中を見送ると落ち着かなくて、座ったままジェイドを待った。
「横になってて良かったのに」
ずるずると重い体を横にしていると、ジェイドがベッドに上がってきた。
「体を解しましょうか?」
腕から始まって、肩をほぐされていく。背中のマッサージは溶けてしまいそうだった。
「ジェイドの手、気持ちいい」
「そう……ですか?」
しばらくして、足の方をゆっくりと揉まれていく。
足の裏から、順に脛、ふくらはぎ。
「もう、十分だよ」
ジェイドも横にと、勧めるのに。
「もう少し、魔素が滞ってるので解します」
「それって、俺がヒール掛けたら治る?」
「魔素が上手く魔力の元になればいいのですが、上手く循環してない状態なので。今魔力を使ったらまた余計なものが残ってしまう。寝付きの悪い琥珀様には良くないと思う。もっと上手く扱えるようになったら、凝りが残らないようになるはず」
「そう、なんだ」
マッサージが気持ち良くて、ぼけっとしてしまう。
「琥珀様。聞いても?」
何だろう?回らない頭で返事をした。
「何?」
「ユイ……様を、探さなくていいのですか?」
「──魔法、身につけてから考える」
「王家に頼めば……何か分かるかも」
「いいんだ。きっと、俺しか見つけられないから。この事は俺の問題」
俺がジェイドの記憶を呼び起こす為に、何かをしなければいけないんだ。
「ごめん。ジェイドだって記憶の事があるから。俺の事より、自分のこと優先して」
マッサージの手は止まらないのに、少し間が空いた。
「──召喚事故で、この世界から消えた後どう過ごしていたのかは、まだ分からない。ただ戻って来たこの場所に対しての違和感は、減ってきてます」
「そっか」
追いかけて来た俺が、この世界のイレギュラーになってる気がする。
「家族の絵を見て、ここで過ごしていたのも間違いないのに……何か足りない。その理由を知りたい」
ジェイドは十八歳で召喚に巻き込まれてる。それなのに俺にあるのは、結との子供の時からの記憶だ。
「俺も調べたい。でもごめん。今日は少し、このままでいて。あまり眠れてなくて……なんか、ジェイドの匂い落ち着く。このまま添い寝して欲しいか……も」
「もしも……ユイ様を見つけたら、元の世界に戻るのですよね?」
三度の召喚の儀式。足りない魔法石と魔力。
戻れないだろうな。
両親も、俺を産んでない事になってるのかな?
「今は、魔法を自分の物にして……それから、ここで生きる術も探すとか?おれ……が寝たら、帰っていい……」
瞼が落ちて、ジェイドの返事があったのかも分からない。
その後は、朝まで深い眠りに落ちた。
「疲れて、動きたくない。風呂も入ったし、もうここで寝る」
魔塔での訓練が、中々堪えて来た。魔力の扱いは、頭では分かっている。呪文も頭に入っている。これでも難関大学を現役合格した身だ。
言語チートがあるとは言え、暗記は実力のはずだ。
それにしてもエコな魔力消費は出来ないのだろうか?ごっそり魔力を持っていかれて、こんな有様である。
「琥珀様は、華奢だから」
と言われると、無性に腹が立つ。
「なら、騎士団に鍛えて……」
「駄目です!!」
この時のジェイドの顔は、寒気がする程怖かった。
邪魔にしかならないのは、分かっている。本気で怒らないで欲しい。
ベッドで一人になると、何故か不安に駆られて眠れなくなってしまう。つまりただの睡眠不足だ。
ジェイドが居るうちにここで、うたた寝させて欲しい。ちょっとだけでも安心して寝たい。
「もしかして、眠れてないとか?」
(やっぱり、鋭い)
「疲れ過ぎてるだけだよ。ジェイドも、もう少ししたら帰っていいから。それより家族の所には、帰らなくて大丈夫?」
ずっとそばにいてくれる。でも家族と引き離してるみたいで申し訳ないのだ。
「侯爵家に?」
「家族が心配してるんじゃない?」
「ないですね。弟と母は、領地の方に戻ってます。父は、忙しく領地とこちらを行き来してますから、わざわざ行くと、鬼の形相になりますね。自分の役目をこなせと言われるだけです」
「それなら、甘えてていいのかな?」
「大事な役目なので。離れません──まぁ風呂は駄目ですが、添い寝はしてあげましょうか?」
添い寝?
「俺がいたら眠れるのでしょう?」
目の前で書籍や書類が、綺麗に片付けられていく。その作業を目で追っていると目の前に手が伸びて来た。
「歩きたくないのなら、抱えますね」
簡単に縦に抱きかかえられて、ベッドに連れて行かれる。この扱いは恥ずかしいが、今日は腕一つでも動かすのが億劫なのだ。もういいや。甘えてしまえ。そんな気持ちなって、身を委ねた。
ジェイドに視線を送ると、柔らかい結の笑顔と重なる。
「そばにいます。ただちょっと待ってて下さい。鍵の確認と、飲み物くらいは用意しときますね」
優しくベッドに乗せられる。背中を見送ると落ち着かなくて、座ったままジェイドを待った。
「横になってて良かったのに」
ずるずると重い体を横にしていると、ジェイドがベッドに上がってきた。
「体を解しましょうか?」
腕から始まって、肩をほぐされていく。背中のマッサージは溶けてしまいそうだった。
「ジェイドの手、気持ちいい」
「そう……ですか?」
しばらくして、足の方をゆっくりと揉まれていく。
足の裏から、順に脛、ふくらはぎ。
「もう、十分だよ」
ジェイドも横にと、勧めるのに。
「もう少し、魔素が滞ってるので解します」
「それって、俺がヒール掛けたら治る?」
「魔素が上手く魔力の元になればいいのですが、上手く循環してない状態なので。今魔力を使ったらまた余計なものが残ってしまう。寝付きの悪い琥珀様には良くないと思う。もっと上手く扱えるようになったら、凝りが残らないようになるはず」
「そう、なんだ」
マッサージが気持ち良くて、ぼけっとしてしまう。
「琥珀様。聞いても?」
何だろう?回らない頭で返事をした。
「何?」
「ユイ……様を、探さなくていいのですか?」
「──魔法、身につけてから考える」
「王家に頼めば……何か分かるかも」
「いいんだ。きっと、俺しか見つけられないから。この事は俺の問題」
俺がジェイドの記憶を呼び起こす為に、何かをしなければいけないんだ。
「ごめん。ジェイドだって記憶の事があるから。俺の事より、自分のこと優先して」
マッサージの手は止まらないのに、少し間が空いた。
「──召喚事故で、この世界から消えた後どう過ごしていたのかは、まだ分からない。ただ戻って来たこの場所に対しての違和感は、減ってきてます」
「そっか」
追いかけて来た俺が、この世界のイレギュラーになってる気がする。
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「俺も調べたい。でもごめん。今日は少し、このままでいて。あまり眠れてなくて……なんか、ジェイドの匂い落ち着く。このまま添い寝して欲しいか……も」
「もしも……ユイ様を見つけたら、元の世界に戻るのですよね?」
三度の召喚の儀式。足りない魔法石と魔力。
戻れないだろうな。
両親も、俺を産んでない事になってるのかな?
「今は、魔法を自分の物にして……それから、ここで生きる術も探すとか?おれ……が寝たら、帰っていい……」
瞼が落ちて、ジェイドの返事があったのかも分からない。
その後は、朝まで深い眠りに落ちた。
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