【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
27 / 81

26.聖女と神使の魔力①

しおりを挟む
 魔法師長に会うために、王宮から少し離れた、魔法師の塔がある。本当は、ジェイドの魔法で早く移動出来るらしい。それでも、倒れてばかりの俺が外を見たくて歩いて移動してもらっている。

 いわゆる研究機関でもあり、新しい魔法の開発、魔石採取に魔道具の作成などしているそうだ。

 そんな話を教えてもらいつつ、王宮の建物を外から眺められるのは、海外旅行にでも来てる気分だ。ラノベのような世界だから、舞台はヨーロッパに近い異国感だった。

 庭園というか、緑も多い。平和そのものに見えるのに。聖女が必要なのだと思うと、やっぱりここから出るには魔法は、不可欠なんだと改めて思う。

 全員が魔力や魔法力が高いわけでもないから、補う必要はあるらしい。火属性が得意でも、別のは全く駄目だったりもあるあるの話みたいだ。

 魔法師長は、四つのエレメント(火・地・風・水)全てを同じ力量で扱える人らしい。
 そう言う意味でも、指導をして貰えるのは……本当に特別みたいだ。

「ね、ジェイドは、どれが得意なの?」
 手はまだ繋がれている。

「俺? 一通り出来るだけど。雷属性と風属性が、感覚としては得意ですね」

「雷? へぇ。強そう」

「そう言う、琥珀様は……水晶を壊す勢いだった訳だから……最強かも知れない」

 人目があるので、様つきで呼ばれるのは仕方がない。それでもかなりラフな話し方が嬉しい。ついつい話しかけてしまう。

「あれは、何故か手が離れなくて。掃除機みたいにぐんぐん吸い取られたんだよ~。自分で放出した訳じゃないから」

「掃除機? なんですそれ? 吸い取られるのも危ないから。そう言うのも、訓練しないと駄目ですね」


「掃除機は、ごみとか埃を吸い取って集めてくれる機械、魔道具みたいなものだよ。魔法の訓練ってさ、運動とか割と得意だからなんとかならないかな? そう言う事ではない?」

「琥珀様の所にも魔道具……みたいな物があるんですね。運動? 体力ありそうに見えない」

「足はかなり、早いよ」

 ようやく辿り着いた魔塔は、それっぽい建物だった。

 ただ、様子がおかしい。門の前で人だかりが出来ていた。

「──聖女様だ」

「何故ここに? 神殿の方でカークが、見るはずでは……」

 ジェイドには、何も知らせが来てなかったって事だ。

「ジェイド様! 私もこちらで一緒に訓練させて下さい」

 聖女の後ろに、神官長とカークがいた。カークが申し訳無さそうに頭を軽く下げた。

「魔法師長は、いませんか?」
ジェイドの声掛けに、魔法師長がスッと現れた。

「お待ちしてました。神使様」
「ちょっと待って。私も訓練するって言ってるでしょう?」

割って入って来たのは、聖女だ。練習嫌いで、チート頼みだったのに。やっぱり、俺にジェイドが付いたからかな?

「今まで、が無かったのに……ですか? なら明日、指導します」

「まあまあ、魔法師長……今日は大目に見て上げて下さい。きっと神使様ともお近づきになりたいのですよ」
そう言ったのは、神官長だ。この人も大変だ。
せっかくやる気になったから、なんとかしたいんだな。

「俺、構いませんよ。一緒にやる方が効率が良ければそれで良いです。別の方が指導しやすいって分かったら、別にしましょう。聖女様もですよね?」

ちょっとだけ、嫌味をつけてやった。
ジェイドが、顔を背け少し笑った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

(完)実の妹が私を嵌めようとするので義理の弟と仕返しをしてみます

青空一夏
ファンタジー
題名そのままの内容です。コメディです(多分)

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...