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4.聖女召喚①

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   ページを捲った先に、書かれていたのは召喚の儀式の話。その場にいるかのように映像として頭に入ってくる。

 神殿から神託が降りた報告が、王家に伝えられていた。
「本当に召喚の儀式は、必要ですか?」
 金髪の人は、この国の第一王子エドワードだ。彼が質問していた。

「この王国の歴史からも、魔物を殲滅しながら浄化をする場合、異世界からの聖女は不可欠です」
    他の神官より豪華な衣装を着ているこの人は、神官長のようだ。

「陛下。元の世界に戻せないのに、召喚し続ける必要があるのでしょうか? 自分達の世界は、自分達でどうにかすべきです」

  元の世界に帰す方法がない。この世界に呼ばれたら、戻れなくなるんだ。王子は、優しい人みたいだ。

  神官長が、少し顔を歪ませたのが分かった。

「陛下。我々だけでは、浄化は無理なのです。聖女様の特別な力が必要なんです。召喚された歴代の聖女様達は、浄化が終わった後この世界の者と婚姻されています。報奨金によって生活を補償もします。お相手の方にとっても条件は良いかと。結果、この地で幸せに暮らした記録があります」

「神殿が神託を受け、聖女を召喚してきた。今までと同じように……この世界を守る。反対すべきではない。聖女の意思は尊重されるべきた。今後の事は、エドワードが責任を持ち進めなさい」

   陛下の言葉で、召喚が決まったみたいだ。
   聖女様のが優先されるみたいだ。確かに彼女は全てを犠牲にするのだから。
    物語の中なのに、まるで現実世界のようだった。
不思議な感覚のまま、この世界を体感している。
彼らの気持ちが、入り込んでくる。


「エドワード殿下、本当に召喚するようにと神託があったのでしょうか?」
    
   ジェイドだ……顔が結にそっくりなのだ。違うのは、髪の毛と瞳の色が濃紺なのだ。ファンタジーの世界だ。

「別の世界で幸せに生きてたんだ。恋人や家族を残してくるかも知れない。神は、本当に呼べと言うのだろうか?疑問でしかないな」

「我々には、神の声は聞こえませんから何ともいえませんね。魔法師達も、聖女を戻す方法を今までも研究してきたと思います。総力を上げて、聖女を帰す方法を見つけましょう」

   召喚された側……その残された家族にとって、突然家族が、消えてしまうのだから。神隠しにあったのと同じだ。

   結が消えた時、存在を忘れたのは……召喚されたからだろうか? 失った痛みを感じさせないために、記憶が消されたのだろうか? そんな風に思ってしまった。

◇◇◇

 いよいよ召喚の儀式が行われるみたいだ。
 神官長と魔法師、そのそばに魔法騎士も配置された。
「召喚が失敗して、魔物が召喚された時はすぐに対応しろ!」

そして魔法師達の詠唱が始まる。

 異様な雰囲気に緊張感が走る。長い詠唱の後、魔法陣が淡く光り輝いた。
 だが……光が一気に沈んでいく。

「駄目だ……魔力が足りない。護衛の魔法騎士も魔力を魔法陣に向かって放出しなさい!」

「神官長……無理をするな」
  王子が、召喚を止めようとしたのだが、神官長がそれを制した。

「途中でやめてはいけません!そちらの魔法騎士殿は、ジェイド・コーディエライト……あの家の方でしたね。召喚の失敗は許されないのです。ほら、他の魔法騎士も殿下の為に協力して下さい」

「──分かりました」
 彼は、殿下の護衛を他の魔法騎士に頼み、神官長のそばに行った。

 魔法剣を抜き、魔力を込めて神官長の合図を待っているようだ。

 そして、魔力を放出した。
 魔法陣が光を取り戻し輝き始める。先程より多く、光が溢れていく。

「もう、止めていいです。コーディエライト殿。もうこれ以上は……今度は多過ぎだ。魔力が暴走してます。断ち切って下さい!」

 神官長が慌てて止めている。これは失敗?

「繋がりが切れ無いんだ!!何か、何かに呼ばれて……こ……」

「聖女様と繋がっているのですか? 召喚するまでどうか、コーディエライト殿! 持ち堪え下さい!!」

 魔力が膨らみ過ぎてる。
王子がジェイドのそばにやって来た。

「ジェイド────やめろ」
「殿下……呼ばれているみたいです。行かないと……」
  結の優しい笑顔と重なった。やっぱり結かも知れない。

 ドン。と空気の圧がかかった。不思議とその圧が、俺の体にもかかった気がした。
 霧が一気に皆の視界をうばう。そして、薄れて漸く魔法陣の中を見た。この世界にはないだろう、セーラー服を着た黒髪の少女が現れた。

 皆の歓声が上がる中……王子が神官長に詰め寄った。

「ジェイドは?ジェイドはどこだ!!」

 現れた聖女の代わりに魔法騎士のジェイド・コーディエライトの姿が消滅した瞬間だった。


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