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第5章
8.覚醒①
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side エミリオ・ブルーローズ
心臓が煩い。
その音が、外にまで漏れ聞こえるのではないか?
そんな不安と、緊張の中…溢れ出る冷や汗にこの世の終わりを感じてしまう。
無事に帰してくれるだろうか?
落ち着いた家具だが相当な高級品であるのは間違いない。
趣味の良いアンティーク調な部屋の主は、宰相ハリス・カーマイン公爵様だ。
目の前のソファに座っている。
金髪の前髪を撫でつけている姿は、大人の色気を撒き散らしている。
その横に第1王子 アルバート殿下がいる。
叔父と甥とは言え陛下とは、歳の差のある王弟だ。
横に座るアルバート殿下とは、兄弟に見えなくもない。
さらにジェイス・ヴァーミリオン侯爵、息子であるレオン様までいる。
アルバート殿下の婚約者であるキース様も一緒だ。
誰を見たらいいのか、もはや石になってしまいたいし…温室に行ったのがまずかったとしか言いようがないけど。
「──君は、エミリオ・ブルーローズ男爵令息で間違いないよね?」
ハリス閣下が、ようやく口を開いた。
「ひゃい…は、はひ。」
「叔父上、落ち着いて下さい。それに、ヴァーミリオン侯爵達も魔法が漏れ出て、室内が寒くなってますよ?」
アルバート殿下が、嗜めてくださっている。
うおおおおおおおー、アルバート殿下…あんなに迷惑をかけたのにっ。優しい、優しすぎる。
もぅ、お2人の邪魔はしません!
心の中で土下座を繰り返す。
「なら、なぜ温室にいたんだい?しかも、あの青い花を盗ろうとした?」
だって、あれは。
物語の中で重要な花だから。
銀色の魔女の──
「ライムエード王国からの友好の証だ。陛下や王族でも触れてはいけないんだ。知らなかったからでは、許されない。学園に置かれた理由は知らないとは言え、生徒は、禁止事項として説明を受けているはずだ。」
いえ、全部知ってます。
魔法王国のライムエード。クーデター後に賢王セディリオが、亡き最愛のイリア妃の為に改革をした話。
そのイリア妃の大切にしていた青い花。星型に見えるから今では、ブルースターと呼ばれている。
でも、本当の花の名前は…
「──青い花の名は、イリア。
花弁の多い特別な青い花は、薔薇の蕾のようだと…星ではなく、ブルー薔薇と言われています。」
イリアの青い薔薇。
だから、僕はエミリオ・青い薔薇なのだ。
奇跡の魔女の花の名前。
主人公は、その花によって魔法を覚醒させるからだ。
誰も攻略とかしてないけど、ゲームの世界なら…温室にあると思ったからだ。
実際、その花を見た時に震えが来た。
この世界は、ゲームとは似て非なる世界だと分かったけど、青い花を見たかった。
覚醒したら、どうなるのか興味もあったからだ。
結果的には、何も起こらなかったわけだし。まさか騎士に拘束されてこんな所に連れてこられるとは思っていなかった。
これで、僕のやり直しの人生は終わったのかな?
「──ハリス。頑丈な結界を張ってくれ。」
1番恐ろしい顔をしていたヴァーミリオン侯爵様が、宰相閣下にそう言った。
閣下の方が身分が高いのに、呼び捨てしていいの?なんて現実逃避をしていたら、完全防音の結界がハリス様によって展開された。
「エミリオだったね。」
「は、はひ。」
「今は、なりふり構ってられないんだ。セドリック殿下とレイリアが魔法陣の中に消えた。」
「へ?」
「自分達で行ったんじゃない。2人とも引き込まれた。君に聞きたい事があるんだ。」
魔法陣に引き込まれたって、何それ?
「そ、それと僕が何の関係があるのですか?あ、青い花を見てただけで…」
「サフィアは、未来視が出来たんだ。青い花を求めに来る者が鍵になると。何の事か分からなかったが…2人が消えた後に温室に現れた君に意味があるのだと思う。」
「未来視?」
そんな話あったっけ?
ゲーム攻略してないから、分からない事ばっかりだ。
「俺の魔道具でレイリアの居場所は、ライムエードだと分かった。まだ外交問題は起きていないが、迎えに行く手段がない。転移も弾かれる。そこに、君が現れた。ジェイスとも話して…君と話す事にしたんだ。知っている事を全部教えてほしい。」
青い花のこと?
ゲームなんてどう言ったら良いのか分からないけど。
イメージを浮かべた瞬間に、目の前のテーブルの上に青い花の咲いた植木鉢が現れた。
「な?なんで?」
花が一気に増えて蔦が伸び始めた。
心臓が煩い。
その音が、外にまで漏れ聞こえるのではないか?
そんな不安と、緊張の中…溢れ出る冷や汗にこの世の終わりを感じてしまう。
無事に帰してくれるだろうか?
落ち着いた家具だが相当な高級品であるのは間違いない。
趣味の良いアンティーク調な部屋の主は、宰相ハリス・カーマイン公爵様だ。
目の前のソファに座っている。
金髪の前髪を撫でつけている姿は、大人の色気を撒き散らしている。
その横に第1王子 アルバート殿下がいる。
叔父と甥とは言え陛下とは、歳の差のある王弟だ。
横に座るアルバート殿下とは、兄弟に見えなくもない。
さらにジェイス・ヴァーミリオン侯爵、息子であるレオン様までいる。
アルバート殿下の婚約者であるキース様も一緒だ。
誰を見たらいいのか、もはや石になってしまいたいし…温室に行ったのがまずかったとしか言いようがないけど。
「──君は、エミリオ・ブルーローズ男爵令息で間違いないよね?」
ハリス閣下が、ようやく口を開いた。
「ひゃい…は、はひ。」
「叔父上、落ち着いて下さい。それに、ヴァーミリオン侯爵達も魔法が漏れ出て、室内が寒くなってますよ?」
アルバート殿下が、嗜めてくださっている。
うおおおおおおおー、アルバート殿下…あんなに迷惑をかけたのにっ。優しい、優しすぎる。
もぅ、お2人の邪魔はしません!
心の中で土下座を繰り返す。
「なら、なぜ温室にいたんだい?しかも、あの青い花を盗ろうとした?」
だって、あれは。
物語の中で重要な花だから。
銀色の魔女の──
「ライムエード王国からの友好の証だ。陛下や王族でも触れてはいけないんだ。知らなかったからでは、許されない。学園に置かれた理由は知らないとは言え、生徒は、禁止事項として説明を受けているはずだ。」
いえ、全部知ってます。
魔法王国のライムエード。クーデター後に賢王セディリオが、亡き最愛のイリア妃の為に改革をした話。
そのイリア妃の大切にしていた青い花。星型に見えるから今では、ブルースターと呼ばれている。
でも、本当の花の名前は…
「──青い花の名は、イリア。
花弁の多い特別な青い花は、薔薇の蕾のようだと…星ではなく、ブルー薔薇と言われています。」
イリアの青い薔薇。
だから、僕はエミリオ・青い薔薇なのだ。
奇跡の魔女の花の名前。
主人公は、その花によって魔法を覚醒させるからだ。
誰も攻略とかしてないけど、ゲームの世界なら…温室にあると思ったからだ。
実際、その花を見た時に震えが来た。
この世界は、ゲームとは似て非なる世界だと分かったけど、青い花を見たかった。
覚醒したら、どうなるのか興味もあったからだ。
結果的には、何も起こらなかったわけだし。まさか騎士に拘束されてこんな所に連れてこられるとは思っていなかった。
これで、僕のやり直しの人生は終わったのかな?
「──ハリス。頑丈な結界を張ってくれ。」
1番恐ろしい顔をしていたヴァーミリオン侯爵様が、宰相閣下にそう言った。
閣下の方が身分が高いのに、呼び捨てしていいの?なんて現実逃避をしていたら、完全防音の結界がハリス様によって展開された。
「エミリオだったね。」
「は、はひ。」
「今は、なりふり構ってられないんだ。セドリック殿下とレイリアが魔法陣の中に消えた。」
「へ?」
「自分達で行ったんじゃない。2人とも引き込まれた。君に聞きたい事があるんだ。」
魔法陣に引き込まれたって、何それ?
「そ、それと僕が何の関係があるのですか?あ、青い花を見てただけで…」
「サフィアは、未来視が出来たんだ。青い花を求めに来る者が鍵になると。何の事か分からなかったが…2人が消えた後に温室に現れた君に意味があるのだと思う。」
「未来視?」
そんな話あったっけ?
ゲーム攻略してないから、分からない事ばっかりだ。
「俺の魔道具でレイリアの居場所は、ライムエードだと分かった。まだ外交問題は起きていないが、迎えに行く手段がない。転移も弾かれる。そこに、君が現れた。ジェイスとも話して…君と話す事にしたんだ。知っている事を全部教えてほしい。」
青い花のこと?
ゲームなんてどう言ったら良いのか分からないけど。
イメージを浮かべた瞬間に、目の前のテーブルの上に青い花の咲いた植木鉢が現れた。
「な?なんで?」
花が一気に増えて蔦が伸び始めた。
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