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第4章☆前世の2人編
13.絶望と後悔と禁忌②
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セディの後盾と言う宰相が、隷属の首輪を持ってきたのは、あれから3日後だった。
魔法を封じられた私には、それを拒む事は出来ない。
私には不釣り合いな、純白の衣裳に着飾られる。
髪にまで、高価そうな宝石を付けられた。
謁見の間に連れて行かれ、他の貴族や護衛騎士がこちらを見る。
視線がいたい。息を呑む者、舐め回す様にコチラを見る者。
きっと、首輪を見ているのだろう。
人として見てくれる者は、ここにはいない。
銀色の魔女。名前ばかり先行して、万能の魔女だと思い込んでいるんだよね。彼の人だって万能じゃない。
本物は、この地にはいないのに。
セディの隣りには、あの令嬢がいた。汚いものを見るように私を見ている。
「魔女を私の専属魔法師として護衛につかせます。隷属の首輪付きなので、決して裏切りません。セディリオ陛下にご許可をいただので、見せにきましたよ。」
宰相の専属…分かりやすい。
男娼にでもしたいのだろうね。
私の顔は、そういつ奴に好まれやすい。笑いが出そうだ。
銀の魔女がそんなに欲しいのだろうか?
だから、彼の人は…1人で消えたのかな。
「お前も、1人になる。」
1人になってたよ。つい手を伸ばしたんだ。
万能な力が有れば、ここにいないよ。
不死薬を作れるとか、材料そのものになるとか、そんなのあったら…仲間は皆生きているだろう?
殺してきたあんた達が、1番理解出来るんじゃないのかな。
宰相さんは、クーデターを起こし、この国を変えたかった人なのに不死薬の噂でおかしくなったみたいだ。
ないよ。そんなもの。
「──ああ。」
セディ…の声に我に帰る。
「ありがたき幸せです。お前は壁の方に待機しておけ。」
面白がっているのだろう。嫌な笑いをする。
セディは本当にその子に好意があるのだろうか?
可愛くて、大好きだった。
『黒猫セディ』
懐かしく呟く。
私の大好きなセディ。
一度でも好きって言えば良かったのかな?
言わなく手良かったんだ。
「余計な事を話すな!」
バシンっと、宰相に叩かれる。よろけて他の騎士にぶつかる。
コイツもニヤニヤして、気持ち悪い。
「──待て。」
セディの声で、室内はシーンと静かになった。
「セディリオ陛下、これは貴方を見つけた私への褒美ですよ?」
「煩い。お前は、だまれ。」
ズカズカと目の前にやって来て、立ち止まる。
「もう一度。さっき何と言った。」
「──」
「おい宰相…隷属の首輪で喋れないようにするな。」
「はい。」返事の前に宰相が、舌打ちをしたのが分かった。
「もう一度、さっきの言葉を言ってくれ。」
「黒猫…セディ」
セディの顔が歪む。
「なんて、無礼なの!」
令嬢が駆け寄って来た。
もう、嫌だ──面倒。
終わりにしたい。
早く、早く、お願い。
「セディと呼んで許されるのは、私だけよ。」
令嬢が手を振りかざし…また叩かれると思ったのに。
セディが私を庇う。
背の高いセディの顔には当たらず胸の辺りを叩く。
「あ、そんな。も、申し訳ありません。この下賤の者が馴れ馴れしいのがいけないのです!」
セディが耳元を触り、小さなそれを何事か呟き外して見ている。
「セディ、さ、ま?私からのプレゼントを外さないで下さい。」
令嬢が何か慌てている。
セディは、それを床に落とした。思いっきり踏み付けた。
その音が室内に響いた。
「くそ。魔道具、魅了か。
よりにもよって、誤認識の機能つきか!似ても似つかないお前を、イリア様と勘違いさせていたのか。」
私を抱き寄せ、隷属の首輪を簡単に外す。
それが取れたとしても、魔力を奪われている。逃げる力はないよ。
「俺は、この国なんてどうでもいい。お前らが勝手に統治すればいい。」
抱き寄せる力がギュッと強くなった。
「セディ様。私と一緒になると誓ったではありませんか。
それに、抱いて下さいました。」
思わず、セディを見上げる。
抱いたの?
その顔は、歪み苦しそうにする。
「媚薬を盛っただろう?違和感に気付き、追い出した。イリア様に見えるのに、拒絶反応が起きたからな。何かがおかしいと思うのに情け無い。
自分の魔法の能力の低さにうんざりだ。
すぐに追い出したのは、従者も騎士も知っている事だ。」
「嘘です。純潔を奪ったのに…無かったことにするのですか?」
「茶番はやめろ。お前自身の姿を隠して迫って来たくせに?とんだ商売女だな。」
涙で訴えていた令嬢の顔は、みるみる歪んでいく。
彼女が好きだった訳じゃないんだね。
そっか。
私に見えたりしてたのか。
ちょっとだけ、嬉しい。
そんな事いわないけどね。
だってもうすぐ終わるもの。
もう、こんな世界嫌なんだよ。
ゴフッ。
ボタボタと血が流れる。
やっと、効いてきたんだ。
足に力が入らず立っていられなくなった。思わず縋り付くけれど、手の力も入らない。
ズルズルと崩れて行く私を支えようとしてくれる。
「な、イリア…
宰相──お前…何をした。
一体イリアに何をしたんだ!!」
「首輪をはめただけで他には何も…」
宰相も驚愕している。
玩具にし損ねて、残念って感じだよね。
純白の衣裳が赤く赤く染まっていく。
「セディは、王様なんだから。この人達をどうにかして。」
「こんな国、勝手に滅びる。」
「ほんと、人間扱いされた事、なかった。
──私は、この国の王族が嫌い。
えらそうな貴族が嫌い。
やっぱり、1人がいい。」
この毒の良いところは、痛みがない事。
死に対する恐怖を緩和してくれるんだ。
いつも、追われる立場だった私達一族の唯一の自己防衛。
仮死の薬だけは、教えてあげた。
でもこの毒だけは、教えたく無かった。だってセディは、陽の光の中へ戻れるはずって思ってたから。
でもね。この毒には呪術が施されている。
痛みを感じさせない代償は、生まれ変わったとしても、短命になること。寿命で代償を払うんだって、言ってた。
それが、何度続くかなんて分からない。
試した人に会った事ないからね。
でも輪廻はあるって、彼の人は言ってた。
「イリア。何を飲んだんだ?
何の毒を飲んだ!」
そんなに、心配しなくて大丈夫だよ。痛くないもの。
ただ、身体が毒に侵蝕され続ける。全ての細胞が毒と呪いに侵されていく。その結果、時折血を吐いてしまう。
見た目は、重症に見えるよね。
この血の量じゃまず助からない。
「離して。
1人が、いいの。
浮気者に触られんのやだ。
誰にも触られたくない。
私の身体は毒に侵蝕されたし、呪い付きになったんだよ。死んでまで身体を暴いたりしたら、巻き添えになるからね。」
「呪いの毒…?そんなの作り方も解毒剤も知らない!」
「魔女の身体は、呪術の贄になるから。それを防ぐため。だって死んでまで道具になんてなりたく無いんだよ。これ以上…生きてきたことを後悔なんて、したくないから。」
「解毒を!教えて下さい。
嫌だ。死ぬな。俺も一緒に…」
「──嫌。
歳下なんて、大嫌い。
後追いする弱虫も嫌い。
浮気する奴も、嫌い。
生まれ変わっても、君には会いたくない。(本当は会いたい。)
信じられないから。
(また裏切られたくない。)
私は、1人で生きるんだ。
それでも、隠れて生きるなんて、嫌。
今度は日の下で、堂々と生きていきたい。
出来なかった、事を、沢山するんだ。
短くても、精一杯生きて…いきて、」
視界が、どんどん狭くなり真っ黒な闇の世界が広がった。
最期にセディの顔をちゃんと見れたら良かったね。
魔法を封じられた私には、それを拒む事は出来ない。
私には不釣り合いな、純白の衣裳に着飾られる。
髪にまで、高価そうな宝石を付けられた。
謁見の間に連れて行かれ、他の貴族や護衛騎士がこちらを見る。
視線がいたい。息を呑む者、舐め回す様にコチラを見る者。
きっと、首輪を見ているのだろう。
人として見てくれる者は、ここにはいない。
銀色の魔女。名前ばかり先行して、万能の魔女だと思い込んでいるんだよね。彼の人だって万能じゃない。
本物は、この地にはいないのに。
セディの隣りには、あの令嬢がいた。汚いものを見るように私を見ている。
「魔女を私の専属魔法師として護衛につかせます。隷属の首輪付きなので、決して裏切りません。セディリオ陛下にご許可をいただので、見せにきましたよ。」
宰相の専属…分かりやすい。
男娼にでもしたいのだろうね。
私の顔は、そういつ奴に好まれやすい。笑いが出そうだ。
銀の魔女がそんなに欲しいのだろうか?
だから、彼の人は…1人で消えたのかな。
「お前も、1人になる。」
1人になってたよ。つい手を伸ばしたんだ。
万能な力が有れば、ここにいないよ。
不死薬を作れるとか、材料そのものになるとか、そんなのあったら…仲間は皆生きているだろう?
殺してきたあんた達が、1番理解出来るんじゃないのかな。
宰相さんは、クーデターを起こし、この国を変えたかった人なのに不死薬の噂でおかしくなったみたいだ。
ないよ。そんなもの。
「──ああ。」
セディ…の声に我に帰る。
「ありがたき幸せです。お前は壁の方に待機しておけ。」
面白がっているのだろう。嫌な笑いをする。
セディは本当にその子に好意があるのだろうか?
可愛くて、大好きだった。
『黒猫セディ』
懐かしく呟く。
私の大好きなセディ。
一度でも好きって言えば良かったのかな?
言わなく手良かったんだ。
「余計な事を話すな!」
バシンっと、宰相に叩かれる。よろけて他の騎士にぶつかる。
コイツもニヤニヤして、気持ち悪い。
「──待て。」
セディの声で、室内はシーンと静かになった。
「セディリオ陛下、これは貴方を見つけた私への褒美ですよ?」
「煩い。お前は、だまれ。」
ズカズカと目の前にやって来て、立ち止まる。
「もう一度。さっき何と言った。」
「──」
「おい宰相…隷属の首輪で喋れないようにするな。」
「はい。」返事の前に宰相が、舌打ちをしたのが分かった。
「もう一度、さっきの言葉を言ってくれ。」
「黒猫…セディ」
セディの顔が歪む。
「なんて、無礼なの!」
令嬢が駆け寄って来た。
もう、嫌だ──面倒。
終わりにしたい。
早く、早く、お願い。
「セディと呼んで許されるのは、私だけよ。」
令嬢が手を振りかざし…また叩かれると思ったのに。
セディが私を庇う。
背の高いセディの顔には当たらず胸の辺りを叩く。
「あ、そんな。も、申し訳ありません。この下賤の者が馴れ馴れしいのがいけないのです!」
セディが耳元を触り、小さなそれを何事か呟き外して見ている。
「セディ、さ、ま?私からのプレゼントを外さないで下さい。」
令嬢が何か慌てている。
セディは、それを床に落とした。思いっきり踏み付けた。
その音が室内に響いた。
「くそ。魔道具、魅了か。
よりにもよって、誤認識の機能つきか!似ても似つかないお前を、イリア様と勘違いさせていたのか。」
私を抱き寄せ、隷属の首輪を簡単に外す。
それが取れたとしても、魔力を奪われている。逃げる力はないよ。
「俺は、この国なんてどうでもいい。お前らが勝手に統治すればいい。」
抱き寄せる力がギュッと強くなった。
「セディ様。私と一緒になると誓ったではありませんか。
それに、抱いて下さいました。」
思わず、セディを見上げる。
抱いたの?
その顔は、歪み苦しそうにする。
「媚薬を盛っただろう?違和感に気付き、追い出した。イリア様に見えるのに、拒絶反応が起きたからな。何かがおかしいと思うのに情け無い。
自分の魔法の能力の低さにうんざりだ。
すぐに追い出したのは、従者も騎士も知っている事だ。」
「嘘です。純潔を奪ったのに…無かったことにするのですか?」
「茶番はやめろ。お前自身の姿を隠して迫って来たくせに?とんだ商売女だな。」
涙で訴えていた令嬢の顔は、みるみる歪んでいく。
彼女が好きだった訳じゃないんだね。
そっか。
私に見えたりしてたのか。
ちょっとだけ、嬉しい。
そんな事いわないけどね。
だってもうすぐ終わるもの。
もう、こんな世界嫌なんだよ。
ゴフッ。
ボタボタと血が流れる。
やっと、効いてきたんだ。
足に力が入らず立っていられなくなった。思わず縋り付くけれど、手の力も入らない。
ズルズルと崩れて行く私を支えようとしてくれる。
「な、イリア…
宰相──お前…何をした。
一体イリアに何をしたんだ!!」
「首輪をはめただけで他には何も…」
宰相も驚愕している。
玩具にし損ねて、残念って感じだよね。
純白の衣裳が赤く赤く染まっていく。
「セディは、王様なんだから。この人達をどうにかして。」
「こんな国、勝手に滅びる。」
「ほんと、人間扱いされた事、なかった。
──私は、この国の王族が嫌い。
えらそうな貴族が嫌い。
やっぱり、1人がいい。」
この毒の良いところは、痛みがない事。
死に対する恐怖を緩和してくれるんだ。
いつも、追われる立場だった私達一族の唯一の自己防衛。
仮死の薬だけは、教えてあげた。
でもこの毒だけは、教えたく無かった。だってセディは、陽の光の中へ戻れるはずって思ってたから。
でもね。この毒には呪術が施されている。
痛みを感じさせない代償は、生まれ変わったとしても、短命になること。寿命で代償を払うんだって、言ってた。
それが、何度続くかなんて分からない。
試した人に会った事ないからね。
でも輪廻はあるって、彼の人は言ってた。
「イリア。何を飲んだんだ?
何の毒を飲んだ!」
そんなに、心配しなくて大丈夫だよ。痛くないもの。
ただ、身体が毒に侵蝕され続ける。全ての細胞が毒と呪いに侵されていく。その結果、時折血を吐いてしまう。
見た目は、重症に見えるよね。
この血の量じゃまず助からない。
「離して。
1人が、いいの。
浮気者に触られんのやだ。
誰にも触られたくない。
私の身体は毒に侵蝕されたし、呪い付きになったんだよ。死んでまで身体を暴いたりしたら、巻き添えになるからね。」
「呪いの毒…?そんなの作り方も解毒剤も知らない!」
「魔女の身体は、呪術の贄になるから。それを防ぐため。だって死んでまで道具になんてなりたく無いんだよ。これ以上…生きてきたことを後悔なんて、したくないから。」
「解毒を!教えて下さい。
嫌だ。死ぬな。俺も一緒に…」
「──嫌。
歳下なんて、大嫌い。
後追いする弱虫も嫌い。
浮気する奴も、嫌い。
生まれ変わっても、君には会いたくない。(本当は会いたい。)
信じられないから。
(また裏切られたくない。)
私は、1人で生きるんだ。
それでも、隠れて生きるなんて、嫌。
今度は日の下で、堂々と生きていきたい。
出来なかった、事を、沢山するんだ。
短くても、精一杯生きて…いきて、」
視界が、どんどん狭くなり真っ黒な闇の世界が広がった。
最期にセディの顔をちゃんと見れたら良かったね。
応援ありがとうございます!
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