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第4章☆前世の2人編

12.絶望と後悔と禁忌①

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「お迎えに上がりました。」
転移した先で、騎士や魔法師に囲まれた。

なぜ、この場所に転移をするとバレていたのだろう?

あの時の、視線。
ああ。全部…そうか。
嵌められんだ。

私が何者か知っているんだ。
魔女だと言うことも。
全部。


「貴方は、一体誰なんですか?」

少し白髪混じりの壮年の男性に質問を投げかける。


「そうですね。
立場でいえば、宰相のような者でしょうか?
殿が、最後に貴方にお会いしたいそうです。」


殿?」



「貴方がです。」


「まさか…セディ?」



「殿下を愛称呼びしないでいただきたい。婚約者もいらっしゃっています。一つ忠告です。婚約者様はとても嫉妬深い方です。変な誤解を招けば…処刑されても仕方がありません。身の程を弁えて下さい。」


婚約者?

ああ、そうか…

王子殿下なら、幼少期から婚約者がいてもおかしくないよね。

幼馴染とかだろうか?


宰相が前を歩く。
私の周りには、魔法師達が配置されている。

連れて行かれた先で、持ち物を検査された。
バッグは取り上げられたけれど、私の魔力じゃなければ、亜空間には繋がらない。
普通サイズの物にしか見えないだろう。中身は、僅かなお金とナイフが確認出来るだけだ。

もちろんナイフだけ取られて、バッグは返された。
このバッグが戻ってきた事に安堵する。


魔法師の1人が、腕輪を持って私に近づいてきた。

そして、殿に対して危害を与えないようにと…魔力封じの枷を付けられたのだ。

無機質なソレは、地味に身体に作用する。
じわじわと、魔力を吸われ続けるのだ。


もう、生きては帰れない。
そんな気がする。

優しいセディが国王になるのなら、この国もマシになるかな?

セディに会えるのも、きっと最後になるね。

大きな扉の前で、みな立ち止まる。
護衛が扉を開けると、ソファに座っていた…セディがいた。

隣に綺麗な青いドレスを身に纏い金色の美しい髪をハーフアップにした…とても可愛らしい令嬢が並んでいた。

ドレスもアクセサリーも全部…セディの色なんだ。

胸が締め付けられる。
『他に相応しい人がいるよ』と言い続けて来たのは、私自身なのに今さら後悔しているのだから。


未来の国王と王妃様…なんだ。
2人の輝かしい未来の中で私は、なんて邪魔な存在なんだろう。
なんで、ここに来てしまったんだろう?

──それは、会いたかったから。

おじさんが、逃げろって。
言ってくれたのに。
なんで、必要とされていると思ったんだろう?


──それは、自惚れただけ。

ほらね。赦される事なんて無かったんだ。幸せになんて、なってはいけないんだ。

一緒に居たから、手放したく無かっただけ。

──皆を見殺しにした罪人のくせに。


そんな言葉が、ぐるぐると巡っていく。


部屋の中、上品な服を着せられたセディは王子様にしか見えなかった。
「イリア様!無事で良かった。」

声をだしては、いけない。

首を垂れて、臣下の礼を取る。




「セディリオ殿下。ご自身より身分の低い者は、呼び捨てで良いのです。生存確認されたのなら、もうよろしいですね?

お披露目式まで時間がありません。メリーローズ嬢との打ち合わせの時間は、足りない位なのですから。」

「何を言っているんだ?とりあえず、ここで一緒に待つ様に言われただけだ。」
「セディ様。今日もいつもの様に…触れて下さいませ。」
被せるようにそう言って、メリーローズと呼ばれた少女がセディの耳にイヤーカフを付けた。

彼女の瞳色の石がついてある。

なんだろう?2人が見つめ合っている。

「セディ様は、やっぱり私の色が似合いますわ。」

「──あ、ああ。」

「この、ドレスを私の為に選んでくださったのですね?セディ様の瞳の色なんて、まるで包まれているようで…私、嬉しい。」

「──ああ。」

セディが彼女の方を見ている。


「では、別室に連れて行きます。事情聴取をしなければ、犯罪者かも知れませんので。」

「ああ。」
こちらも見ないまま、相槌を打っている。
どうしたんだろう?


「それでは、殿下を誑かした魔女は、地下牢に連れて行きます。」

「──そう、だ、な。」

様子が変?

「セディ…セディリオ殿下。
あの、」


「おい、コイツを連れて行け。」
宰相だと名乗った男に押されて、思わず膝をついた。


イヤーカフって…もしかして

顔を上げセディを見た瞬間…メリーローズ嬢が抱きついて、顔を寄せている。

キス…?


よく見えなかったけれど、令嬢が嬉しそうに笑った気がした。
引き摺られ、部屋を後にする。

魅了チャームの魔道具だとしても、ある程度好意がないと発動しないのでは?


薄暗く、悪臭の漂う地下に連れて行かれた。

木製のベッドには、マットレスもない。
硬いその上に座り、壁に上半身を寄せる。

冷んやりを通り越して、冷たい。

「──寒い。」


銀糸ネックレスのチェーンを指先でいじると、その先には小瓶が付いている。



「──魅了の魔法は、好意があってこそ完成する。」

魔女の言い伝えの一つだ。

ならば。私はもう必要ない。

「きっとセディに、危害を与える気はないんだ。
でも、私がセディに弱い事を知っている彼らは、あの子の人生を人質にするんだろうな。
魔女の力を悪用されるくらいなら。」



これを、使うしかない。

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