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第4章☆前世の2人編
8.セディの想い。
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腕の中で眠るその人は、銀色の美しい長い髪をしている。
おでこの所に一つ口付けて抱き寄せ、髪をすく。
子供扱いで、全く相手にしてくれなかった。8歳も違うのだから…仕方ないのかも知れない。
今の俺が10歳の子に好きだと言われたら、恋愛対象に出来ないよな。
黒猫姿で、キスされた時のイリア様の唇の柔らかさにドキドキしたんだ。
その後の優しく笑うその顔が忘れられなかった。
一緒に暮らして、憧れがすぐに恋情に変わったんだ。年上なのに、可愛くて仕方なかった。
料理は意外に大雑把だった。
部屋は、可愛い小物や雑貨が並んでいた。
「1人だから、あたたかな感じにしたかったんだ。女の子みたいかな?まぁ、誰にも見せる気無かったから…いい歳して恥ずかしいね。」
照れ笑いする。
そのまんまの、優しい雰囲気の部屋。
1人にされて、ぼろぼろになった俺に手を差し伸べてくれた人。
いつ殺されるのか?その不安の中で、誰も信じるつもりは無かったんだ。
その、優しさに触れる。溶かされていく自分がいる。
コロコロと変わる表情。
この人に護られるのではなく、護れる側になりたいと必死に魔法を覚えたし、身体を鍛えたんだ。
恋人を作れとか、そんな言葉なんて要らない。
「自分は、1人でいいんだよ。」その裏にあるものは…何ですか?
魔法に関しては、妥協無しで厳しく指導される。
それで良い。その方がいい。
甘やかされたくない。
必ず超えるから、頼って欲しい。
薬の調合の時は、穏やかな時間が流れる。
「繊細な作業が必要だからね。ゆっくりでも、丁寧にして。色々調合を変えて、導きだしたんだよ?今の所、このレシピが1番だと思っているんだ。
誰かを助ける事が出来るかも知れないって、嬉しいよね?
私が唯一誇れる仕事なんだ。」
居心地がいい。優しい時間。
なのに、1人になりたがる時がある。
1人でいる理由を教えてくれる事は、なかった。
そして、聞く事も出来なかった。
「ごめんね。今日は、1人になりたい。」
寂しげに笑う貴方は、何を抱えているのだろう。
魔法を使いこなせるようになると、イリア様が認識阻害をしているのが分かるようになった。
茶髪も茶色の瞳も、全部身を守る為だったんだ。
一緒にいても、本当の姿を教えてくれなかった。
それは、用心の為?
それとも、俺では信用出来なかった?そう思うと辛い。
繊細な糸のような銀色の艶やかな髪。
紫色の瞳に光が差し込めば…人とは思えない。
美しい人。
信頼を得るにはどうしたら良いのだろう?
1人になりたがる時の表情は、儚く散って消えてしまいそうで怖い。
「訳ありの私は嫌?」と聞かれた事がある。
自分も、そうだから。嫌ではない。
だけど、俺が大人になったら教えてくれますか?
消えてしまわないように。護らせてくれませんか?
一度だけ、帰って来なかったらと不安になって後をつけたことがある。
お酒の瓶とお菓子を持ってたはずだ。
山の奥深く。少し開けたその先に…膝の高さ位の石…だろうか?
木の根元に10数個、間隔を置いて並んでいる。その周りには青い色の花が群生していた。
静かに涙を流して、か細い声で「ごめん。ごめんなさい。ごめんなさい…。」
謝り続けている。
ここで、1人泣いているのですか?
──誰に謝っているのですか?
華奢な身体。
全て暴いた。
汗ばみ、頬が上気して…愛らしく啼く。
蕩けた紫の瞳が、『もっと奥に来て』と甘えてくる。
「愛している。」
何度も何度も繰り返して囁いても…この言葉を返してくれる事は無かった。
受け入れて欲しい。
認めて欲しい。
俺を信じて欲しい。
貴方の事を全部受け入れるから。
だから、俺の事も嫌いにならないで。
逃げようとしないで。
時間を忘れて貪り尽くした。
もう、手離せない。
くったりと、身を預け深く眠っている。
「愛しているんです。俺は…ただのセディです。貴方と生きて行きたい。」
イリア様の体温も寝息も心地よい。
抱きしめたまま、眠りについた。
起きたら…これからの事を話そう。
そして、数日後──
隣国、ライムエード王国でクーデターが起きた。
前国王が、1年前に病で亡くなった。
側妃(第2妃)の息子である第2王子が16歳の若さで国王となった。
後ろ盾の側妃の実家や側妃派の貴族達による度重なる増税や圧政が起きる。傀儡の国王が誕生したのだ。
前国王と事故で亡くなった前王妃の間に生まれた、行方不明の第1王子を未だに探しているという。
前王妃の実家──ウィンターミスト侯爵家が同志と共に起こしたクーデター。
──第1王子、セディリオ・ライムエードの名の下に。
──王子が生きている。その噂が、セディに伝わるのは…すぐの事だった。
おでこの所に一つ口付けて抱き寄せ、髪をすく。
子供扱いで、全く相手にしてくれなかった。8歳も違うのだから…仕方ないのかも知れない。
今の俺が10歳の子に好きだと言われたら、恋愛対象に出来ないよな。
黒猫姿で、キスされた時のイリア様の唇の柔らかさにドキドキしたんだ。
その後の優しく笑うその顔が忘れられなかった。
一緒に暮らして、憧れがすぐに恋情に変わったんだ。年上なのに、可愛くて仕方なかった。
料理は意外に大雑把だった。
部屋は、可愛い小物や雑貨が並んでいた。
「1人だから、あたたかな感じにしたかったんだ。女の子みたいかな?まぁ、誰にも見せる気無かったから…いい歳して恥ずかしいね。」
照れ笑いする。
そのまんまの、優しい雰囲気の部屋。
1人にされて、ぼろぼろになった俺に手を差し伸べてくれた人。
いつ殺されるのか?その不安の中で、誰も信じるつもりは無かったんだ。
その、優しさに触れる。溶かされていく自分がいる。
コロコロと変わる表情。
この人に護られるのではなく、護れる側になりたいと必死に魔法を覚えたし、身体を鍛えたんだ。
恋人を作れとか、そんな言葉なんて要らない。
「自分は、1人でいいんだよ。」その裏にあるものは…何ですか?
魔法に関しては、妥協無しで厳しく指導される。
それで良い。その方がいい。
甘やかされたくない。
必ず超えるから、頼って欲しい。
薬の調合の時は、穏やかな時間が流れる。
「繊細な作業が必要だからね。ゆっくりでも、丁寧にして。色々調合を変えて、導きだしたんだよ?今の所、このレシピが1番だと思っているんだ。
誰かを助ける事が出来るかも知れないって、嬉しいよね?
私が唯一誇れる仕事なんだ。」
居心地がいい。優しい時間。
なのに、1人になりたがる時がある。
1人でいる理由を教えてくれる事は、なかった。
そして、聞く事も出来なかった。
「ごめんね。今日は、1人になりたい。」
寂しげに笑う貴方は、何を抱えているのだろう。
魔法を使いこなせるようになると、イリア様が認識阻害をしているのが分かるようになった。
茶髪も茶色の瞳も、全部身を守る為だったんだ。
一緒にいても、本当の姿を教えてくれなかった。
それは、用心の為?
それとも、俺では信用出来なかった?そう思うと辛い。
繊細な糸のような銀色の艶やかな髪。
紫色の瞳に光が差し込めば…人とは思えない。
美しい人。
信頼を得るにはどうしたら良いのだろう?
1人になりたがる時の表情は、儚く散って消えてしまいそうで怖い。
「訳ありの私は嫌?」と聞かれた事がある。
自分も、そうだから。嫌ではない。
だけど、俺が大人になったら教えてくれますか?
消えてしまわないように。護らせてくれませんか?
一度だけ、帰って来なかったらと不安になって後をつけたことがある。
お酒の瓶とお菓子を持ってたはずだ。
山の奥深く。少し開けたその先に…膝の高さ位の石…だろうか?
木の根元に10数個、間隔を置いて並んでいる。その周りには青い色の花が群生していた。
静かに涙を流して、か細い声で「ごめん。ごめんなさい。ごめんなさい…。」
謝り続けている。
ここで、1人泣いているのですか?
──誰に謝っているのですか?
華奢な身体。
全て暴いた。
汗ばみ、頬が上気して…愛らしく啼く。
蕩けた紫の瞳が、『もっと奥に来て』と甘えてくる。
「愛している。」
何度も何度も繰り返して囁いても…この言葉を返してくれる事は無かった。
受け入れて欲しい。
認めて欲しい。
俺を信じて欲しい。
貴方の事を全部受け入れるから。
だから、俺の事も嫌いにならないで。
逃げようとしないで。
時間を忘れて貪り尽くした。
もう、手離せない。
くったりと、身を預け深く眠っている。
「愛しているんです。俺は…ただのセディです。貴方と生きて行きたい。」
イリア様の体温も寝息も心地よい。
抱きしめたまま、眠りについた。
起きたら…これからの事を話そう。
そして、数日後──
隣国、ライムエード王国でクーデターが起きた。
前国王が、1年前に病で亡くなった。
側妃(第2妃)の息子である第2王子が16歳の若さで国王となった。
後ろ盾の側妃の実家や側妃派の貴族達による度重なる増税や圧政が起きる。傀儡の国王が誕生したのだ。
前国王と事故で亡くなった前王妃の間に生まれた、行方不明の第1王子を未だに探しているという。
前王妃の実家──ウィンターミスト侯爵家が同志と共に起こしたクーデター。
──第1王子、セディリオ・ライムエードの名の下に。
──王子が生きている。その噂が、セディに伝わるのは…すぐの事だった。
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