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第4章☆前世の2人編
5.訳ありの2人②
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「セディ、買い出しついでに町で食事でもする?」
「イリア様は目立つので、買って何処かで食べましょう。」
「私じゃなくて、セディだろ。
女の子達の嗅覚はすごいよね。格好良い子をすぐ見つけるもの。
そろそろ、セディにも恋人出来ても良いと思うんだよねぇ。」
じーっとセディを見る。本当に格好良く育った。
身体も鍛えているみたいで、腕とか私より太くなっている。自己流で剣技のようなものも練習している。
時々、町の騎士団員の練習を覗いているのも知っている。
大勢の前で魔法を使うのは、貴族では無い私達には厳しい。使う事になる事態が起きたら、その後はもう逃げるしかない。
万が一に備えて身体を鍛えているのだろう。
でもその時は、何を犠牲にしてでも君を護るよ。
私に幸せな時間をくれたのだから。
もう一緒にお風呂とか、ベッドとかはやめてしまったのはちょっと残念。
たまに、黒猫セディにしたのが悪かったのかな?
でも1番のきっかけは、あれだなぁ。
12歳過ぎた頃に朝からお風呂に行っちゃったから、心配して覗いたらお湯をかけられてしまった。
濡れたついでに一緒にお風呂に入ろうと思ったんだ。
脱ごうとしたら、風魔法で乾かされて…追い出された。
顔を真っ赤にして、ひどく拒絶されてしまったんだよね。
ちょっと寂しいけど。
また視線が合わさる。
このまま、ここにずっとって訳には行かないよね。
5年の間にこの国の文字を完璧に覚えてしまったようだし。かなり難易度の高い歴史書も読めるまでになった。
薬草のレシピも、綺麗に書き起こしてくれたから。この先、私が死んでも…伝えられるのだろう。
いずれ、セディが弟子をとっても問題ないな。
こんなに優秀で、性格も良くて、顔もいいのだから。なりたいと立候補してくる者が多いかも知れない。本気の者を見つけるのは苦労しそうだ。
まぁセディなら、きっと優秀な先生になれる。
弟子を取らなくても、セディのパートナーになる人が学んでくれたら丁度いいのだけれど。
そんな事を考えていたら、ふいに
セディが声をかけてきた。
「どうしたんです?俺の顔に何かついてますか?」
軽く首を振って、違うよと伝える。
「──去年の春来祭の時にセディのフードがズレたんだよね。
顔見せしちゃったから、狙われ方が凄すぎ。
何人かが山に入り込んで迷子になってだろう?
そのせいで、変身魔法とか認識阻害とか上達したのは良い事だったのかな?」
クスクスと笑いながら、セディの様子を伺う。
ちょっと嫌そうな顔をする。
テーブルの上に紅茶が運ばれてきた。
なんだろう?落ち着く香りだ。
「──これは、いい香りだね。」
「気に入ってもらえましたか?」
褒めるとすぐに、柔らかい表情になる。自分だけが特別な存在な気がして嬉しくなる。
「うん──
ね、セディ。後2年位かな?」
前の席に座る様に促す。
素直に席に着いて、目を逸らさない。
「イリア様。後2年って、何の事ですか?」
「──君との暮らし。」
眉が歪む。
眉間に皺がよる。
「あと少し教えたら。卒業だって事だよ。
でも、17歳は超えてからが良いのかな。
18歳になったら婚姻可能だから…その前から相手を見つけたらいい気もするんだよね。」
「イリア様だって、婚姻もしてないし、相手もいないでしょ?
俺もまだまだ、習いたい事があるし、このままここに置いて下さい。」
「私の場合は…1人で良いんだよ。」
紅茶を一口。
美味しいなぁ。
「なら、俺も1人で良いです。」
なんで、そうなるかな。
「魔法使い…私の元々いた所では、弟子に全部渡したら…離れるんだ。それが習得の証。同じ所に魔法使いは2人いたら、ダメなんだよ。」
「──魔法師なら?いられますよね。」
「それは、屁理屈だよ。」
「なら、薬師の師弟です。魔法は町とか人前では、使わないのだから。関係ありません。」
お風呂は、嫌がるのに…なんでこんなに一緒にいたがるんだろう?
「そんなに、私といたいの?」
私みたいに隠れて生きなくても良いんだよ。あの頃の姿を覚えている人は町にはいなさそうだし。
私は、罪人なんだよ。
君を巻き込みたく無いんだ。
「当たり前でしょう?
イリア様以外の人は、誰も信じられないから。」
「そう言われちゃうとなぁ。まだ2年は先の話だもんね。
町の子達と、交流を図ろうね。」
ガタン
大きな音と共に、セディが立ち上がった。
「そんなの、必要ない。
俺は、イリア様と居られればいい。」
次の瞬間、側に来て座ったままの私を覆い被さるように抱きしめて来た。
「セディ?」
顔が見えない。もう一度名を呼ぶ。
「セディ。」
何も言わない。
「──ごめん。身体が私より大きいせいか…大人な気がするから。まだ15だもんね。18歳の成人になる日までは、一緒にいよう。」
「──大人になるまでですか?」
「その時また、考えよう?今は、修行をして…あ。
お昼、行きそびれた?」
「俺が作ります。」
本当に優秀だよ。君には、自由に生きて欲しいのに。
何処かで、一緒にいられる事が嬉しいんだ…ズルいよね、私は。
「イリア様は目立つので、買って何処かで食べましょう。」
「私じゃなくて、セディだろ。
女の子達の嗅覚はすごいよね。格好良い子をすぐ見つけるもの。
そろそろ、セディにも恋人出来ても良いと思うんだよねぇ。」
じーっとセディを見る。本当に格好良く育った。
身体も鍛えているみたいで、腕とか私より太くなっている。自己流で剣技のようなものも練習している。
時々、町の騎士団員の練習を覗いているのも知っている。
大勢の前で魔法を使うのは、貴族では無い私達には厳しい。使う事になる事態が起きたら、その後はもう逃げるしかない。
万が一に備えて身体を鍛えているのだろう。
でもその時は、何を犠牲にしてでも君を護るよ。
私に幸せな時間をくれたのだから。
もう一緒にお風呂とか、ベッドとかはやめてしまったのはちょっと残念。
たまに、黒猫セディにしたのが悪かったのかな?
でも1番のきっかけは、あれだなぁ。
12歳過ぎた頃に朝からお風呂に行っちゃったから、心配して覗いたらお湯をかけられてしまった。
濡れたついでに一緒にお風呂に入ろうと思ったんだ。
脱ごうとしたら、風魔法で乾かされて…追い出された。
顔を真っ赤にして、ひどく拒絶されてしまったんだよね。
ちょっと寂しいけど。
また視線が合わさる。
このまま、ここにずっとって訳には行かないよね。
5年の間にこの国の文字を完璧に覚えてしまったようだし。かなり難易度の高い歴史書も読めるまでになった。
薬草のレシピも、綺麗に書き起こしてくれたから。この先、私が死んでも…伝えられるのだろう。
いずれ、セディが弟子をとっても問題ないな。
こんなに優秀で、性格も良くて、顔もいいのだから。なりたいと立候補してくる者が多いかも知れない。本気の者を見つけるのは苦労しそうだ。
まぁセディなら、きっと優秀な先生になれる。
弟子を取らなくても、セディのパートナーになる人が学んでくれたら丁度いいのだけれど。
そんな事を考えていたら、ふいに
セディが声をかけてきた。
「どうしたんです?俺の顔に何かついてますか?」
軽く首を振って、違うよと伝える。
「──去年の春来祭の時にセディのフードがズレたんだよね。
顔見せしちゃったから、狙われ方が凄すぎ。
何人かが山に入り込んで迷子になってだろう?
そのせいで、変身魔法とか認識阻害とか上達したのは良い事だったのかな?」
クスクスと笑いながら、セディの様子を伺う。
ちょっと嫌そうな顔をする。
テーブルの上に紅茶が運ばれてきた。
なんだろう?落ち着く香りだ。
「──これは、いい香りだね。」
「気に入ってもらえましたか?」
褒めるとすぐに、柔らかい表情になる。自分だけが特別な存在な気がして嬉しくなる。
「うん──
ね、セディ。後2年位かな?」
前の席に座る様に促す。
素直に席に着いて、目を逸らさない。
「イリア様。後2年って、何の事ですか?」
「──君との暮らし。」
眉が歪む。
眉間に皺がよる。
「あと少し教えたら。卒業だって事だよ。
でも、17歳は超えてからが良いのかな。
18歳になったら婚姻可能だから…その前から相手を見つけたらいい気もするんだよね。」
「イリア様だって、婚姻もしてないし、相手もいないでしょ?
俺もまだまだ、習いたい事があるし、このままここに置いて下さい。」
「私の場合は…1人で良いんだよ。」
紅茶を一口。
美味しいなぁ。
「なら、俺も1人で良いです。」
なんで、そうなるかな。
「魔法使い…私の元々いた所では、弟子に全部渡したら…離れるんだ。それが習得の証。同じ所に魔法使いは2人いたら、ダメなんだよ。」
「──魔法師なら?いられますよね。」
「それは、屁理屈だよ。」
「なら、薬師の師弟です。魔法は町とか人前では、使わないのだから。関係ありません。」
お風呂は、嫌がるのに…なんでこんなに一緒にいたがるんだろう?
「そんなに、私といたいの?」
私みたいに隠れて生きなくても良いんだよ。あの頃の姿を覚えている人は町にはいなさそうだし。
私は、罪人なんだよ。
君を巻き込みたく無いんだ。
「当たり前でしょう?
イリア様以外の人は、誰も信じられないから。」
「そう言われちゃうとなぁ。まだ2年は先の話だもんね。
町の子達と、交流を図ろうね。」
ガタン
大きな音と共に、セディが立ち上がった。
「そんなの、必要ない。
俺は、イリア様と居られればいい。」
次の瞬間、側に来て座ったままの私を覆い被さるように抱きしめて来た。
「セディ?」
顔が見えない。もう一度名を呼ぶ。
「セディ。」
何も言わない。
「──ごめん。身体が私より大きいせいか…大人な気がするから。まだ15だもんね。18歳の成人になる日までは、一緒にいよう。」
「──大人になるまでですか?」
「その時また、考えよう?今は、修行をして…あ。
お昼、行きそびれた?」
「俺が作ります。」
本当に優秀だよ。君には、自由に生きて欲しいのに。
何処かで、一緒にいられる事が嬉しいんだ…ズルいよね、私は。
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