12 / 71
第1章
11.大切な弟
しおりを挟む
部屋に様子を見に行ったら、レイリアの気配がしない。
結界が張っている?
ベッドにいるのか?
なんだこれは?
「どう言う事だ?」
「レイリア様は寝てらっしゃるのですよ。お静かに。」
従者はそう言ったが、ただの枕だ。
「これは、枕だぞ?」
「何をばかな…」
従者の顔が青くなる。
「そ、んな。いや、だって。
レイリア様にしか見えなかったのに!!」
「俺が、枕だと言うまではレイリアに見えていたのか?」
「は、はい!」
認識阻害?
何かの術式?魔法でもかけていたのか?
どこに行ったんだ?
まさか、セドリック殿下に連れ去られたのか?
あの、クソガキ。
レイリアの魔力を探す。
邸内にいる。
だが──隠しているだろう魔力は
俺には、分かる。
俺や父上にしか掴めない位の僅かな…残り香の様なレイリアの魔力香。
良かった。
殿下が来ている訳じゃないな。
「レイリアの魔力香。こんなに緻密だったか?」
予定より早く小さく産まれた弟は、身体が弱かった。
その愛らしさに、負けた。
天使が我が家にやってきたのだ。
俺が一生護らなければと、誓ったのだ。
この世界は、女が少ない。遥か昔、創造神の怒りをかった為に生まれ難くなった希少種だ。
この世界を愛していた女神がこのままでは世界が滅びてしまうと嘆いた。
ならばと、憐れんだ女神がお互いを思いやり揺るぎない愛情を認められた夫夫のみに与えたのが、子を宿すための力を【恩恵】と言った。
それにより、王国民が減らずにこの国を支えている。
男同士でも真に愛し合っている事を神殿で認められたら子が成せるのだ。
だが兄弟では叶わない。
なぜ、血の繋がりがあるのだろう?これほど愛おしいのに。
自分の立場はよく分かっている。
それでも。
離したくないのだ。
だから、俺はレイリアを必ず幸せにする者にしか渡さない。
そう、心に決めている。
それでも、簡単には渡すつもりはない。俺の思う条件をクリア出来なければ、絶対に手離す気はない。
レイリアの敵を排除する為に俺は力をつける。
魔法も知識も…権力も全てレイリアを護る為に必要なのだから。
それでも、王家ともなると流石に排除するのは難しい。
民を蔑ろにするような王家だったならば、滅す事も躊躇わないが今の王は賢王と名高い。治安維持も隣国との関係も良好だ。
次代の王子は───アルバート殿下は、キースが並び立てばなんとかなるか?ガレスもいるし。
セドリック殿下はまだ、駄目だな。
学園で補佐する側近は王宮入りをする。アルバート殿下の為にガレスも王宮で生活している。慣例の為これも阻止出来ない。
王子の側にいたら、何かと巻き込まれてしまうのでないかと不安でならない。
レイリアが婚約者に選ばれなかったのは良かったが、側近にさせられた。
陛下と父上の間で取り決められたのだから諦めるしかない。
だが、レイリアを護るのは、俺の役目だ。
魔力香を追いかける。
レイリアは庭の奥に結界を張っているようだ。
一瞬羽が見えた。
天使か?
ああ、綺麗だ。
レイリアが魔法をどんどん繰り出して行く。
──久しぶりに笑顔が見える。
音声は、聞こえない。
一度空を見上げて、涙を流した。
何が、悲しいんだ?
何故、泣くんだ?
駄目だ。
これ以上、黙って見ているのは無理だ。
レイリアの結界に触れて…分解して行く。
泣き止んだ後は、夢中で魔法を試しているから、まだ俺に気がついていない。
中々、強固な結界だ。
いつの間にこんなことが出来るようになったのだろうか?
よくやく、全体を壊さずに人1人通り抜けるスペースを確保して結界の中に踏み込む。
レイリアの可愛い声が聞こえた。
だが、内容は全く可愛いものでは無かったのだ。
「うーん。体力作りのランニングに、腕の筋力も付けないとなぁ。魔法が使えない時の剣技に、隣国の言語も習わないと、冒険は難しいよね。卒業までに頑張らないと。」
冒険だと?
何故そんな話になっているんだ!
「頑張って、何処に行く気だ?」
びくりとした、レイリアが振り返る。
「──に、兄様?」
動揺しているのが分かる。
「療養中に何をしているのかな?レイリア?」
そんな、危険な所に俺が一人で行かせると思っているのか?
レイリアを抱き寄せて…
「一度部屋に戻ろう。」
話し合いが必要だな。
驚き固まっていたレイリアを縦抱きにして、邸に戻ることにしたのだ。
結界が張っている?
ベッドにいるのか?
なんだこれは?
「どう言う事だ?」
「レイリア様は寝てらっしゃるのですよ。お静かに。」
従者はそう言ったが、ただの枕だ。
「これは、枕だぞ?」
「何をばかな…」
従者の顔が青くなる。
「そ、んな。いや、だって。
レイリア様にしか見えなかったのに!!」
「俺が、枕だと言うまではレイリアに見えていたのか?」
「は、はい!」
認識阻害?
何かの術式?魔法でもかけていたのか?
どこに行ったんだ?
まさか、セドリック殿下に連れ去られたのか?
あの、クソガキ。
レイリアの魔力を探す。
邸内にいる。
だが──隠しているだろう魔力は
俺には、分かる。
俺や父上にしか掴めない位の僅かな…残り香の様なレイリアの魔力香。
良かった。
殿下が来ている訳じゃないな。
「レイリアの魔力香。こんなに緻密だったか?」
予定より早く小さく産まれた弟は、身体が弱かった。
その愛らしさに、負けた。
天使が我が家にやってきたのだ。
俺が一生護らなければと、誓ったのだ。
この世界は、女が少ない。遥か昔、創造神の怒りをかった為に生まれ難くなった希少種だ。
この世界を愛していた女神がこのままでは世界が滅びてしまうと嘆いた。
ならばと、憐れんだ女神がお互いを思いやり揺るぎない愛情を認められた夫夫のみに与えたのが、子を宿すための力を【恩恵】と言った。
それにより、王国民が減らずにこの国を支えている。
男同士でも真に愛し合っている事を神殿で認められたら子が成せるのだ。
だが兄弟では叶わない。
なぜ、血の繋がりがあるのだろう?これほど愛おしいのに。
自分の立場はよく分かっている。
それでも。
離したくないのだ。
だから、俺はレイリアを必ず幸せにする者にしか渡さない。
そう、心に決めている。
それでも、簡単には渡すつもりはない。俺の思う条件をクリア出来なければ、絶対に手離す気はない。
レイリアの敵を排除する為に俺は力をつける。
魔法も知識も…権力も全てレイリアを護る為に必要なのだから。
それでも、王家ともなると流石に排除するのは難しい。
民を蔑ろにするような王家だったならば、滅す事も躊躇わないが今の王は賢王と名高い。治安維持も隣国との関係も良好だ。
次代の王子は───アルバート殿下は、キースが並び立てばなんとかなるか?ガレスもいるし。
セドリック殿下はまだ、駄目だな。
学園で補佐する側近は王宮入りをする。アルバート殿下の為にガレスも王宮で生活している。慣例の為これも阻止出来ない。
王子の側にいたら、何かと巻き込まれてしまうのでないかと不安でならない。
レイリアが婚約者に選ばれなかったのは良かったが、側近にさせられた。
陛下と父上の間で取り決められたのだから諦めるしかない。
だが、レイリアを護るのは、俺の役目だ。
魔力香を追いかける。
レイリアは庭の奥に結界を張っているようだ。
一瞬羽が見えた。
天使か?
ああ、綺麗だ。
レイリアが魔法をどんどん繰り出して行く。
──久しぶりに笑顔が見える。
音声は、聞こえない。
一度空を見上げて、涙を流した。
何が、悲しいんだ?
何故、泣くんだ?
駄目だ。
これ以上、黙って見ているのは無理だ。
レイリアの結界に触れて…分解して行く。
泣き止んだ後は、夢中で魔法を試しているから、まだ俺に気がついていない。
中々、強固な結界だ。
いつの間にこんなことが出来るようになったのだろうか?
よくやく、全体を壊さずに人1人通り抜けるスペースを確保して結界の中に踏み込む。
レイリアの可愛い声が聞こえた。
だが、内容は全く可愛いものでは無かったのだ。
「うーん。体力作りのランニングに、腕の筋力も付けないとなぁ。魔法が使えない時の剣技に、隣国の言語も習わないと、冒険は難しいよね。卒業までに頑張らないと。」
冒険だと?
何故そんな話になっているんだ!
「頑張って、何処に行く気だ?」
びくりとした、レイリアが振り返る。
「──に、兄様?」
動揺しているのが分かる。
「療養中に何をしているのかな?レイリア?」
そんな、危険な所に俺が一人で行かせると思っているのか?
レイリアを抱き寄せて…
「一度部屋に戻ろう。」
話し合いが必要だな。
驚き固まっていたレイリアを縦抱きにして、邸に戻ることにしたのだ。
51
お気に入りに追加
1,815
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう
蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。
王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。
味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。
しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。
「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」
あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。
ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。
だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!!
私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です!
さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ!
って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!?
※本作は小説家になろうにも掲載しています
二部更新開始しました。不定期更新です
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる