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第1章

11.大切な弟

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部屋に様子を見に行ったら、レイリアの気配がしない。
結界が張っている?
ベッドにいるのか?

なんだこれは?
「どう言う事だ?」

「レイリア様は寝てらっしゃるのですよ。お静かに。」
従者はそう言ったが、ただの枕だ。

「これは、枕だぞ?」

「何をばかな…」
従者の顔が青くなる。

「そ、んな。いや、だって。
レイリア様にしか見えなかったのに!!」

「俺が、枕だと言うまではレイリアに見えていたのか?」 

「は、はい!」


認識阻害?
何かの術式?魔法でもかけていたのか?


どこに行ったんだ?
まさか、セドリック殿下に連れ去られたのか?

あの、クソガキ。

レイリアの魔力を探す。
邸内にいる。
だが──隠しているだろう魔力は
俺には、分かる。
俺や父上にしか掴めない位の僅かな…残り香の様なレイリアの魔力香。

良かった。
殿下が来ている訳じゃないな。

「レイリアの魔力香。こんなに緻密だったか?」

予定より早く小さく産まれた弟は、身体が弱かった。

その愛らしさに、負けた。
天使が我が家にやってきたのだ。
俺が一生護らなければと、誓ったのだ。

この世界は、女が少ない。遥か昔、創造神の怒りをかった為に生まれ難くなった希少種だ。
この世界を愛していた女神がこのままでは世界が滅びてしまうと嘆いた。

ならばと、憐れんだ女神がお互いを思いやり揺るぎない愛情を認められた夫夫のみに与えたのが、子を宿すための力を【恩恵】と言った。

それにより、王国民が減らずにこの国を支えている。
男同士でも真に愛し合っている事を神殿で認められたら子が成せるのだ。

だが兄弟では叶わない。
なぜ、血の繋がりがあるのだろう?これほど愛おしいのに。
自分の立場はよく分かっている。

それでも。
離したくないのだ。

だから、俺はレイリアを幸せにする者にしか渡さない。
そう、心に決めている。


それでも、簡単には渡すつもりはない。俺の思う条件をクリア出来なければ、絶対に手離す気はない。


レイリアの敵を排除する為に俺は力をつける。

魔法も知識も…権力も全てレイリアを護る為に必要なのだから。

それでも、王家ともなると流石に排除するのは難しい。

民を蔑ろにするような王家だったならば、滅す事も躊躇わないが今の王は賢王と名高い。治安維持も隣国との関係も良好だ。
次代の王子は───アルバート殿下は、キースが並び立てばなんとかなるか?ガレスもいるし。

セドリック殿下はまだ、駄目だな。

学園で補佐する側近は王宮入りをする。アルバート殿下の為にガレスも王宮で生活している。慣例の為これも阻止出来ない。

王子の側にいたら、何かと巻き込まれてしまうのでないかと不安でならない。
レイリアが婚約者に選ばれなかったのは良かったが、側近に
陛下と父上の間で取り決められたのだから諦めるしかない。

だが、レイリアを護るのは、俺の役目だ。



魔力香を追いかける。
レイリアは庭の奥に結界を張っているようだ。


一瞬羽が見えた。

天使か?
ああ、綺麗だ。

レイリアが魔法をどんどん繰り出して行く。

──久しぶりに笑顔が見える。



音声は、聞こえない。


一度空を見上げて、涙を流した。
何が、悲しいんだ?
何故、泣くんだ?



駄目だ。
これ以上、黙って見ているのは無理だ。


レイリアの結界に触れて…分解して行く。

泣き止んだ後は、夢中で魔法を試しているから、まだ俺に気がついていない。

中々、強固な結界だ。
いつの間にこんなことが出来るようになったのだろうか?

よくやく、全体を壊さずに人1人通り抜けるスペースを確保して結界の中に踏み込む。


レイリアの可愛い声が聞こえた。
だが、内容は全く可愛いものでは無かったのだ。

「うーん。体力作りのランニングに、腕の筋力も付けないとなぁ。魔法が使えない時の剣技に、隣国の言語も習わないと、冒険は難しいよね。卒業までに頑張らないと。」


冒険だと?
何故そんな話になっているんだ!

「頑張って、何処に行く気だ?」


びくりとした、レイリアが振り返る。

「──に、兄様?」

動揺しているのが分かる。

「療養中に何をしているのかな?レイリア?」


そんな、危険な所に俺が一人で行かせると思っているのか?

レイリアを抱き寄せて…
「一度部屋に戻ろう。」

話し合いが必要だな。

驚き固まっていたレイリアを縦抱きにして、邸に戻ることにしたのだ。







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