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第1章
8.兄弟
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兄様が迎えに来てくれた。
ちょっと、ホッとしたんだ。
セドリック殿下の顔色はあまり良くなかったから。
多分、寝不足なんだと思う。
目の下には薄らとクマが見える。ずっと、俺の面倒を見てくれてたのが、分かってしまう。
その、優しさをアルバート殿下や皆に見せたら良いのに。
小さい頃。お父様が言っていた。
『心が傷ついた事がある人はね…その傷を隠して見えないようにするんだよ。
触れられたくない。
知られたくない。
さらに傷を抉られたくない。
苦しくて、どうしようもなくて。
考えたくなくて、忘れたふりを平気なふりをして──記憶に蓋をしてしまう。
自分を護る為にも心を閉ざしてしまう事があるんだ。』
寂しそうに笑う、お父様を見て思わず聞いてしまう。
『──だれか。きずついちゃったの?』
セドリック殿下が、人嫌いなのは…昔、何かあったからだよね?
なんて、考えながら馬車の窓から外を眺めていた。
タウンハウスまで、馬車は俺を気遣ってかゆっくりと進んでいる。
「レオン兄様…もっと急いでも大丈夫ですよ。クッションのおかげで振動もほとんど気にならないですし。」
王家の馬車よりはランクが落ちるけど、広いし乗り心地も悪くない。
膝に乗せられそうになったのを何度も断って、クッションやらブランケットで包み込まれる形で出発したのだ。
相変わらずの過保護。
にこにこと笑っていると、兄様も優しく笑ってくれる。
かっこいいな。
俺も、お父様と兄様に似て背が高かったら良かったのにな。
じっと見つめていたら、しばらくして…その笑顔がなくなって、俺の事を伺う様にじっと見つめ返して来た。
「レイリア。王宮は──辛くないか?」
セドリック殿下が人嫌いで、他人どころか実兄のアルバート殿下とも挨拶程度なのは割と有名な話。
アルバート殿下と違い陰湿な性格で、従者に罵声を浴びせるとか冷遇するとかなんとか…噂におヒレがつきまくって──氷の貴公子だの絶対零度の王子様なんて呼ばれている。冷んやり系の2つ名ばかりだ。
結構ベタベタ系なんだけどなぁ。
最近は、特に俺のこと猫とかペット扱いじゃないか?懐かない猫を逃がさないように必死になって世話している感じ。俺に構わずに他を見て欲しいから、側近として距離を置こうとしているんだけど…ね。
セドリック殿下は、他人を嫌う何かが過去にあって、それを俺は知らない。知ってはいけない気がする。それを本当に癒せる人が現れてくれたら良いのにな。
「兄様。──全然、問題ありません。」
痛々しい物を見るみたいな視線に戸惑う。
「兄様、セドリック殿下から酷いことされたり、言われたりとか全くありませんから。殿下も学園で友人が出来れば、変わりますよ。」
安心させるように、にこにこしてみる。
なんで、眉間に皺が…。
信用ないのかな?
「今回倒れたのは、セドリック殿下は関係ありません。」
「それは、そうだろう。変なのに絡まれたな。
俺は、レイリアが心配なんだ。王宮で…色々な事に巻き込まれてしまうんじゃないかと。
よりによって、セドリック殿下に気に入られるとか…」
さらに眉間に皺が。いやもう、溝の様に深い。
「それは、兄様達と一緒に王宮で会ってたからでしょう?
誰かを側近にするなら身分を考えても俺で妥協しただけですよ。同級生の方が3年間側に付けるので便利なだけだし。キースは既にアルバート殿下の婚約者になってました。
最近では、隣国の王女や王子からも婚約の打診があるのでしょう?卒業後は、側近は年上の騎士団の方々から選ばれますよ。俺は、学園の間だけですから。」
「ふ。なるほど──そうか。とりあえず今は…大丈夫そうだな。とにかく、酷いことされる前に逃げるんだぞ。」
心配しすぎ。でも、それなら。
「なら、兄様。魔法の訓練をしたいです。自己防衛の為なら良いですよね?少しでもレベルをあげたいです。」
「それは付き合うが、病み上がりの今は駄目だ。
まあそれなら、訓練の為に毎週休日はタウンハウスに来れば良い。休日前から迎えも行こう。」
「はい。でも、殿下の許可をもらいますね。」
また、顔が…嫌そうになる。
「許可が必要か?週末に家に戻っても構わないはずだ。」
そうなんだけど。
部屋に1人にすると、心配になるんだよね。
なんだろう?──俺より大きくて強い人なのに、時々、可愛く思っちゃうなんて、兄様には言えない。
同い年なのに。お世話をしたくなる。兄という立場は、(前世では姉がいたけれど…)弟をこんな風に心配してしまうものかもと、俺がセドリック殿下を心配するのは、こう言うことなのかもと、つい笑ってしまった。
ちょっと、ホッとしたんだ。
セドリック殿下の顔色はあまり良くなかったから。
多分、寝不足なんだと思う。
目の下には薄らとクマが見える。ずっと、俺の面倒を見てくれてたのが、分かってしまう。
その、優しさをアルバート殿下や皆に見せたら良いのに。
小さい頃。お父様が言っていた。
『心が傷ついた事がある人はね…その傷を隠して見えないようにするんだよ。
触れられたくない。
知られたくない。
さらに傷を抉られたくない。
苦しくて、どうしようもなくて。
考えたくなくて、忘れたふりを平気なふりをして──記憶に蓋をしてしまう。
自分を護る為にも心を閉ざしてしまう事があるんだ。』
寂しそうに笑う、お父様を見て思わず聞いてしまう。
『──だれか。きずついちゃったの?』
セドリック殿下が、人嫌いなのは…昔、何かあったからだよね?
なんて、考えながら馬車の窓から外を眺めていた。
タウンハウスまで、馬車は俺を気遣ってかゆっくりと進んでいる。
「レオン兄様…もっと急いでも大丈夫ですよ。クッションのおかげで振動もほとんど気にならないですし。」
王家の馬車よりはランクが落ちるけど、広いし乗り心地も悪くない。
膝に乗せられそうになったのを何度も断って、クッションやらブランケットで包み込まれる形で出発したのだ。
相変わらずの過保護。
にこにこと笑っていると、兄様も優しく笑ってくれる。
かっこいいな。
俺も、お父様と兄様に似て背が高かったら良かったのにな。
じっと見つめていたら、しばらくして…その笑顔がなくなって、俺の事を伺う様にじっと見つめ返して来た。
「レイリア。王宮は──辛くないか?」
セドリック殿下が人嫌いで、他人どころか実兄のアルバート殿下とも挨拶程度なのは割と有名な話。
アルバート殿下と違い陰湿な性格で、従者に罵声を浴びせるとか冷遇するとかなんとか…噂におヒレがつきまくって──氷の貴公子だの絶対零度の王子様なんて呼ばれている。冷んやり系の2つ名ばかりだ。
結構ベタベタ系なんだけどなぁ。
最近は、特に俺のこと猫とかペット扱いじゃないか?懐かない猫を逃がさないように必死になって世話している感じ。俺に構わずに他を見て欲しいから、側近として距離を置こうとしているんだけど…ね。
セドリック殿下は、他人を嫌う何かが過去にあって、それを俺は知らない。知ってはいけない気がする。それを本当に癒せる人が現れてくれたら良いのにな。
「兄様。──全然、問題ありません。」
痛々しい物を見るみたいな視線に戸惑う。
「兄様、セドリック殿下から酷いことされたり、言われたりとか全くありませんから。殿下も学園で友人が出来れば、変わりますよ。」
安心させるように、にこにこしてみる。
なんで、眉間に皺が…。
信用ないのかな?
「今回倒れたのは、セドリック殿下は関係ありません。」
「それは、そうだろう。変なのに絡まれたな。
俺は、レイリアが心配なんだ。王宮で…色々な事に巻き込まれてしまうんじゃないかと。
よりによって、セドリック殿下に気に入られるとか…」
さらに眉間に皺が。いやもう、溝の様に深い。
「それは、兄様達と一緒に王宮で会ってたからでしょう?
誰かを側近にするなら身分を考えても俺で妥協しただけですよ。同級生の方が3年間側に付けるので便利なだけだし。キースは既にアルバート殿下の婚約者になってました。
最近では、隣国の王女や王子からも婚約の打診があるのでしょう?卒業後は、側近は年上の騎士団の方々から選ばれますよ。俺は、学園の間だけですから。」
「ふ。なるほど──そうか。とりあえず今は…大丈夫そうだな。とにかく、酷いことされる前に逃げるんだぞ。」
心配しすぎ。でも、それなら。
「なら、兄様。魔法の訓練をしたいです。自己防衛の為なら良いですよね?少しでもレベルをあげたいです。」
「それは付き合うが、病み上がりの今は駄目だ。
まあそれなら、訓練の為に毎週休日はタウンハウスに来れば良い。休日前から迎えも行こう。」
「はい。でも、殿下の許可をもらいますね。」
また、顔が…嫌そうになる。
「許可が必要か?週末に家に戻っても構わないはずだ。」
そうなんだけど。
部屋に1人にすると、心配になるんだよね。
なんだろう?──俺より大きくて強い人なのに、時々、可愛く思っちゃうなんて、兄様には言えない。
同い年なのに。お世話をしたくなる。兄という立場は、(前世では姉がいたけれど…)弟をこんな風に心配してしまうものかもと、俺がセドリック殿下を心配するのは、こう言うことなのかもと、つい笑ってしまった。
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