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【五ノ章】納涼祭
短編 クロトのメシ《中編》
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「ははぁ、なるほどね。ワガママ娘の要望を叶える迷宮料理がお望み、と」
「お前も話すと分かるだろうが、結構しっかりしたお嬢さんだぞ」
「確か料理長の知り合いのお子さんなんでしたっけ? 冒険者から貴族になったっていう……そんなことあるんだなぁ」
冒険者ギルドで募集を掛けていた厨房スタッフの一員として働き、忙しくなるお昼時を前に食材の買い足しから帰ってきて。
眉根を寄せる料理長から相談を受けた。なんだか面白いことになってるらしい。
「飢饉に陥っても継続的な食糧供給が出来るように……ってことなら、魔物食材と迷宮野菜だけで作った方が納得してもらえるかな? でも、ヤバい外見の食材しかないんですよね?」
「見た通りの物しかねぇよ。どう足掻いてもゲテモノから外れねぇよ」
「うーん、確かに……」
保存庫から取り出した魔物食材の山を見て唸る。
『ありとあらゆる魔物によって凄まじい魔境と化しておるな。ここまで来たら迷宮野菜のみで作る他、手段はないのでは?』
『ヘルシー志向ならいいけど満足感が無いよ。それに生食だとえぐみや苦み、酸味が強い野菜が多いから手を加えるのは必須だ。ソーントマトなんかはその筆頭だね』
『棘のような突起を持つ大玉トマトか。熱を加えると甘味が勝るのだったな?』
『うん。他にも面白い特徴を持つ迷宮野菜があるんだけど、やっぱり野菜より肉の方が売れるからね。在庫は十分にあって…………ってか、待てよ?』
レオとの会話を中断して料理長の方へ振り返る。
「すみません。すごい今更なんですけど、もしかして俺も作る感じですか?」
「というより、俺とお前で二品ほど用意したい。一般的にギルドで出す迷宮料理を俺が担当して、お前はウケが良さそうな料理を作ってくれ」
「大雑把な注文~! めっちゃ重要な部分なのに俺でいいのぉ!?」
料理長の考えとしては冒険者が探索中に栄養補給する際の迷宮料理、というコンセプトであえてゲテモノを。
俺は年頃の女子が楽しめて満足できるボリューミーな一品を用意してほしい、とのことだった。
どうやら二品のギャップを見比べて、現実的な観点を持たせたいらしい。
「むしろお前が作る賄いの完成度を見るに適任だと思う。……通常の食材から魔物食材に変わった程度だ。余り物だけで満足できるモン作れるお前ならやれる」
「なんか気のせいじゃなければ、責任を全部俺に押し付けようとしてません?」
「……さあ、さっそく調理に取り掛かるぞ!」
「ねえ、なんで無視したの? ちょっと?」
腕まくりして魔物食材の山を物色し始めた料理長の背を見やり、ため息をこぼす。
任せられた以上、やるしかないか……とはいえ、何がいいかな? 飢饉対策がどうのこうのは置いとくとして、初めて食べるとなれば取っつきやすさは大事。
さほど妙とも思わず、本当にこれが魔物食材なの? と疑問に思うくらいの…………とりあえずスープから手をつけるか。
『確かカエルの脚っぽいのはスワンプトードだったか。体内全体に毒腺を持つけど毒抜きしてるから食用可能で、鶏肉みたいな食感がするんだ』
『まさかとは思うが、そのまま丸焼きにするのか?』
『見た目エグすぎるでしょ。骨を外して、筋を叩いて、一口サイズに切り分けるよ』
手ごろなサイズの鍋に火をかけて、油を投入。スワンプトードの肉を投下し、少しでも沼の臭いや生臭さを消す為に刻んだワイルドガーリックも入れる。
念の為メロウハーブを乗せて、蒸留酒を軽く回し入れて弱火に。フタを閉めてじっくり焦げ目と風味を付けていく。
そしてクライオニオン、ラフポテト、アンガーキャロットという迷宮野菜を用意。どれも熱を通さないと本来の旨味を引き出せないので、皮を剥いて短冊切りに。
『さて、スワンプトードの肉は……イイ感じだ、味見もして……うん、柔らかく香ばしく、匂いも悪くない。味が上書きされる前にメロウハーブは取り除こう』
『アレがこうなるとは思いもせんな……』
『そうだね。あとは根菜を先に入れて水を入れよう。クライオニオンは出来上がり前に入れて、透き通るくらいまで火を通したら完成だ』
調味料で味を調えるか……? いや、ご所望は迷宮産の食材で作った料理だ。メロウハーブや食材本来のダシを引き出して、使わないようにしよう。
『さて、次はメインか。悩みどころだねぇ……』
『豚肉や牛肉の代替品となる魔物食材が一切見当たらないのが厳しいな。どれも可食部位が少なく、主役として目立つ部分が見つからん』
『かろうじてケイブリザードの尻尾にコンフュバットの翼ぐらいかなぁ。でも尻尾は火を通すと硬くなって縮んでジャーキーみたいになるし、翼は骨や翼膜にごわついた毛が付いたままだし…………そういや、さっきパンを買ってきたんだよな』
買い出しの木箱を覗き込み、全粒粉の丸パンを発見。
お付きの護衛と待女がいるって話だったし、三つ取り出して触感を確かめる。
『ふむ、ギッシリと身が詰まったような感触。それでいて軽く、小麦の香ばしさが漂い、扱いに困る肉と野菜がある──決めた。ハンバーガーにしよう』
『適合者。差し出がましいようだが、ハンバーガーこそパテという肉が大事となるのではないか? 尻尾と翼では難しいだろう』
『つくねにすればいい。翼の毛や皮を剥いでまっさらな状態にして、尻尾の鱗を剥がして骨を取り除くんだ』
包丁で切れ込みを入れて、事前にお湯を茹でていた鍋に翼を数枚ぶち込む。
次いで二の腕ほどある大きさの尻尾に付いた鱗をポロポロと削ぎ落として、中心にある尾椎から筋肉質な尻尾肉を切り出す。
まな板の上でボヨンと弾み、驚異の弾力性を見せつける尻尾肉を押さえて、端から刺身を切るように包丁を入れる。
そして横に縦に碁盤の目のように。小さくなっていく尻尾肉を、さらに粗いミンチ状にしていく。そうして出来上がった物をボウルに移す。
ぶち込んだ翼の様子を確認すれば、イイ感じに皮がめくれ始めていた。鍋の中身をザルにあげて、冷水で冷ましながら一息に皮を剥く。
ピンク色の素肌越しに柔らかい軟骨の感触。汚れを念入りに落としてから、まな板に並べた翼を包丁で叩いていく。
『アイヌ料理だったかな、こういう感じで肉や魚を骨ごと細かく刻んで食べる文化があるの。中学校の調理実習で教えてもらった気がするよ』
『中学……おお、この記憶か、なるほど、先人の食への探求が適合者の時代に受け継がれているのだな』
『マジですごいよね。だって未だにフグの卵巣が持つ猛毒が、なんで解毒されるかの仕組みが分からないのに。当時の人はどうして食べようと思って、しかも調理法を見つけるのか』
『その熱量を理解できる日は来るのだろうか……?』
『う、うーん、どうだろう……』
世の中には本当になんでコレを食べようとしたの……? って思うような食材があるからなぁ。しかも、この世界でもわざわざ麻痺毒に掛かりながら、解毒ポーションを飲みつつ珍味を食べる狂人もいるし。
まあ、いま作ってる物も限りなくドン引きされかねない代物なんですけどね。
『っと、こんなもんでいいかな。これもボウルに入れちゃって、細かくちぎった臭み消しのメロウハーブと塩を少々。粘り気が出るまで混ぜたら成形して……魔物肉の特製つくねパテの出来上がりだ』
『おお、奇怪な食材どもがこうもまともな形に変貌するとは……!』
『あとは熱したフライパンに油を引いたら、つくねパテを並べて焼いていくよ』
肉の焼ける匂いとジューシーな肉汁の弾ける音が食欲を刺激してくる。我ながら良い出来になりそうじゃあないか?
片面にある程度の焦げ目をつけたら、ひっくり返して魔導コンロを弱火にしてフタをする。火が通るまでの間にメイズレタスを水にさらして、輪切りのソーントマトをオーブンで炙っておく。
『ソースはどうしよっかな……みじん切りのクライオニオンを肉汁と絡めて、ビネガーを合わせれば和風ドレッシングっぽくなるか? 塩と同じで、迷宮に持ち込んでもおかしくない調味料だし、許してもらえるでしょ』
『汝はよくもまあ続々とアイデアが浮かぶな……』
『経験だよ、経験。こう見えて昔はメシマズだったからね。直す為にも必死で取り組んださ』
フライパンのフタを開けて、つくねパテに串を刺す。ぶわっと溢れる透き通るような旨味と火の通りを確認して皿に移動。
先ほど考えついたソースの材料を投入。強火で水分を飛ばし焦げないように木べらでかき混ぜつつ、メイズレタスの水を切り、バンズとなる丸パンを横半分に切る。
オーブンから取り出したソーントマト、メイズレタス、つくねパテの順番で乗せて。
十分に水気を飛ばしたソースを垂らして、バンズを被せ、最後に崩れないように銀製の串を刺す。
「特製つくねバーガー完成ってところかな。……そういや料理長は何してるんだ?」
順当に人数分のつくねバーガーを作りあげ、ディッシュプレートに乗せながら。
片手間に迷宮食材のスープに仕上げのクライオニオンを投下しつつ、一向に音沙汰が無い料理長に視線を向ける。
「ふふッ、ふははッ、あひゃひゃ! もう知ったこっちゃねぇや! 見た目が悪くても味で納得させればいいだろぉ! うっひひひひゃひゃ!」
なんか離れた所で奇声を上げながら、それでも手際よく包丁で食材をカットし、大量の迷宮料理を作成していた。
……疲れてるのかな。あまり触れてあげない方がよさそうだ。
「すみません。自分が先に料理を持っていくので、気を確かに持つよう料理長に伝言を頼んでもいいですか?」
「ええ……あんなのに近づきたくないんだけど……いやでも、放置したらもっと面倒くさくなりそうだな。わかった、伝えとくよ」
「よろしくお願いします」
近場で作業していた厨房スタッフに頭を下げ、完成したスープを程よい大きさの食器に入れて。
三人分の手拭きと銀製のスプーンをトレイに載せた俺は、カウンターで待つ場違いな雰囲気を漂わせる女の子の元へ向かった。
「お前も話すと分かるだろうが、結構しっかりしたお嬢さんだぞ」
「確か料理長の知り合いのお子さんなんでしたっけ? 冒険者から貴族になったっていう……そんなことあるんだなぁ」
冒険者ギルドで募集を掛けていた厨房スタッフの一員として働き、忙しくなるお昼時を前に食材の買い足しから帰ってきて。
眉根を寄せる料理長から相談を受けた。なんだか面白いことになってるらしい。
「飢饉に陥っても継続的な食糧供給が出来るように……ってことなら、魔物食材と迷宮野菜だけで作った方が納得してもらえるかな? でも、ヤバい外見の食材しかないんですよね?」
「見た通りの物しかねぇよ。どう足掻いてもゲテモノから外れねぇよ」
「うーん、確かに……」
保存庫から取り出した魔物食材の山を見て唸る。
『ありとあらゆる魔物によって凄まじい魔境と化しておるな。ここまで来たら迷宮野菜のみで作る他、手段はないのでは?』
『ヘルシー志向ならいいけど満足感が無いよ。それに生食だとえぐみや苦み、酸味が強い野菜が多いから手を加えるのは必須だ。ソーントマトなんかはその筆頭だね』
『棘のような突起を持つ大玉トマトか。熱を加えると甘味が勝るのだったな?』
『うん。他にも面白い特徴を持つ迷宮野菜があるんだけど、やっぱり野菜より肉の方が売れるからね。在庫は十分にあって…………ってか、待てよ?』
レオとの会話を中断して料理長の方へ振り返る。
「すみません。すごい今更なんですけど、もしかして俺も作る感じですか?」
「というより、俺とお前で二品ほど用意したい。一般的にギルドで出す迷宮料理を俺が担当して、お前はウケが良さそうな料理を作ってくれ」
「大雑把な注文~! めっちゃ重要な部分なのに俺でいいのぉ!?」
料理長の考えとしては冒険者が探索中に栄養補給する際の迷宮料理、というコンセプトであえてゲテモノを。
俺は年頃の女子が楽しめて満足できるボリューミーな一品を用意してほしい、とのことだった。
どうやら二品のギャップを見比べて、現実的な観点を持たせたいらしい。
「むしろお前が作る賄いの完成度を見るに適任だと思う。……通常の食材から魔物食材に変わった程度だ。余り物だけで満足できるモン作れるお前ならやれる」
「なんか気のせいじゃなければ、責任を全部俺に押し付けようとしてません?」
「……さあ、さっそく調理に取り掛かるぞ!」
「ねえ、なんで無視したの? ちょっと?」
腕まくりして魔物食材の山を物色し始めた料理長の背を見やり、ため息をこぼす。
任せられた以上、やるしかないか……とはいえ、何がいいかな? 飢饉対策がどうのこうのは置いとくとして、初めて食べるとなれば取っつきやすさは大事。
さほど妙とも思わず、本当にこれが魔物食材なの? と疑問に思うくらいの…………とりあえずスープから手をつけるか。
『確かカエルの脚っぽいのはスワンプトードだったか。体内全体に毒腺を持つけど毒抜きしてるから食用可能で、鶏肉みたいな食感がするんだ』
『まさかとは思うが、そのまま丸焼きにするのか?』
『見た目エグすぎるでしょ。骨を外して、筋を叩いて、一口サイズに切り分けるよ』
手ごろなサイズの鍋に火をかけて、油を投入。スワンプトードの肉を投下し、少しでも沼の臭いや生臭さを消す為に刻んだワイルドガーリックも入れる。
念の為メロウハーブを乗せて、蒸留酒を軽く回し入れて弱火に。フタを閉めてじっくり焦げ目と風味を付けていく。
そしてクライオニオン、ラフポテト、アンガーキャロットという迷宮野菜を用意。どれも熱を通さないと本来の旨味を引き出せないので、皮を剥いて短冊切りに。
『さて、スワンプトードの肉は……イイ感じだ、味見もして……うん、柔らかく香ばしく、匂いも悪くない。味が上書きされる前にメロウハーブは取り除こう』
『アレがこうなるとは思いもせんな……』
『そうだね。あとは根菜を先に入れて水を入れよう。クライオニオンは出来上がり前に入れて、透き通るくらいまで火を通したら完成だ』
調味料で味を調えるか……? いや、ご所望は迷宮産の食材で作った料理だ。メロウハーブや食材本来のダシを引き出して、使わないようにしよう。
『さて、次はメインか。悩みどころだねぇ……』
『豚肉や牛肉の代替品となる魔物食材が一切見当たらないのが厳しいな。どれも可食部位が少なく、主役として目立つ部分が見つからん』
『かろうじてケイブリザードの尻尾にコンフュバットの翼ぐらいかなぁ。でも尻尾は火を通すと硬くなって縮んでジャーキーみたいになるし、翼は骨や翼膜にごわついた毛が付いたままだし…………そういや、さっきパンを買ってきたんだよな』
買い出しの木箱を覗き込み、全粒粉の丸パンを発見。
お付きの護衛と待女がいるって話だったし、三つ取り出して触感を確かめる。
『ふむ、ギッシリと身が詰まったような感触。それでいて軽く、小麦の香ばしさが漂い、扱いに困る肉と野菜がある──決めた。ハンバーガーにしよう』
『適合者。差し出がましいようだが、ハンバーガーこそパテという肉が大事となるのではないか? 尻尾と翼では難しいだろう』
『つくねにすればいい。翼の毛や皮を剥いでまっさらな状態にして、尻尾の鱗を剥がして骨を取り除くんだ』
包丁で切れ込みを入れて、事前にお湯を茹でていた鍋に翼を数枚ぶち込む。
次いで二の腕ほどある大きさの尻尾に付いた鱗をポロポロと削ぎ落として、中心にある尾椎から筋肉質な尻尾肉を切り出す。
まな板の上でボヨンと弾み、驚異の弾力性を見せつける尻尾肉を押さえて、端から刺身を切るように包丁を入れる。
そして横に縦に碁盤の目のように。小さくなっていく尻尾肉を、さらに粗いミンチ状にしていく。そうして出来上がった物をボウルに移す。
ぶち込んだ翼の様子を確認すれば、イイ感じに皮がめくれ始めていた。鍋の中身をザルにあげて、冷水で冷ましながら一息に皮を剥く。
ピンク色の素肌越しに柔らかい軟骨の感触。汚れを念入りに落としてから、まな板に並べた翼を包丁で叩いていく。
『アイヌ料理だったかな、こういう感じで肉や魚を骨ごと細かく刻んで食べる文化があるの。中学校の調理実習で教えてもらった気がするよ』
『中学……おお、この記憶か、なるほど、先人の食への探求が適合者の時代に受け継がれているのだな』
『マジですごいよね。だって未だにフグの卵巣が持つ猛毒が、なんで解毒されるかの仕組みが分からないのに。当時の人はどうして食べようと思って、しかも調理法を見つけるのか』
『その熱量を理解できる日は来るのだろうか……?』
『う、うーん、どうだろう……』
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まあ、いま作ってる物も限りなくドン引きされかねない代物なんですけどね。
『っと、こんなもんでいいかな。これもボウルに入れちゃって、細かくちぎった臭み消しのメロウハーブと塩を少々。粘り気が出るまで混ぜたら成形して……魔物肉の特製つくねパテの出来上がりだ』
『おお、奇怪な食材どもがこうもまともな形に変貌するとは……!』
『あとは熱したフライパンに油を引いたら、つくねパテを並べて焼いていくよ』
肉の焼ける匂いとジューシーな肉汁の弾ける音が食欲を刺激してくる。我ながら良い出来になりそうじゃあないか?
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『汝はよくもまあ続々とアイデアが浮かぶな……』
『経験だよ、経験。こう見えて昔はメシマズだったからね。直す為にも必死で取り組んださ』
フライパンのフタを開けて、つくねパテに串を刺す。ぶわっと溢れる透き通るような旨味と火の通りを確認して皿に移動。
先ほど考えついたソースの材料を投入。強火で水分を飛ばし焦げないように木べらでかき混ぜつつ、メイズレタスの水を切り、バンズとなる丸パンを横半分に切る。
オーブンから取り出したソーントマト、メイズレタス、つくねパテの順番で乗せて。
十分に水気を飛ばしたソースを垂らして、バンズを被せ、最後に崩れないように銀製の串を刺す。
「特製つくねバーガー完成ってところかな。……そういや料理長は何してるんだ?」
順当に人数分のつくねバーガーを作りあげ、ディッシュプレートに乗せながら。
片手間に迷宮食材のスープに仕上げのクライオニオンを投下しつつ、一向に音沙汰が無い料理長に視線を向ける。
「ふふッ、ふははッ、あひゃひゃ! もう知ったこっちゃねぇや! 見た目が悪くても味で納得させればいいだろぉ! うっひひひひゃひゃ!」
なんか離れた所で奇声を上げながら、それでも手際よく包丁で食材をカットし、大量の迷宮料理を作成していた。
……疲れてるのかな。あまり触れてあげない方がよさそうだ。
「すみません。自分が先に料理を持っていくので、気を確かに持つよう料理長に伝言を頼んでもいいですか?」
「ええ……あんなのに近づきたくないんだけど……いやでも、放置したらもっと面倒くさくなりそうだな。わかった、伝えとくよ」
「よろしくお願いします」
近場で作業していた厨房スタッフに頭を下げ、完成したスープを程よい大きさの食器に入れて。
三人分の手拭きと銀製のスプーンをトレイに載せた俺は、カウンターで待つ場違いな雰囲気を漂わせる女の子の元へ向かった。
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